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再スタートはきれた。ファジアーノ岡山vsレノファ山口@シティライトS 2023年4月22日

大敗明けの今節。ちゃんと監督・コーチ・選手ら顔上がってましたね。

今日やっているサッカーは最低限のサッカーで、どの選手が出てもこのサッカーができないと意味がないですので、今日のサッカーを最低限のラインにして、もっともっと上を目指すために突き詰めてやっていきたいと思います。」(引用元:第11節 ファジアーノ岡山 | レノファ山口FC

で、【今シーズンの最低限】が出ましたね。アライバルインタビューのところから名塚監督の口から『前から取りに行く』『相手コートでボール保持』と改めて宣言をしていました。そのような姿勢がこの試合出ていたかと思います。

結果は勝ち点1ではありましたが、自分たちの姿勢を打ち出した上での追いついての引き分け。次に繋げることは出来たのではないかと思います。

では今日はこの3点です。

1)ワントップ河野孝汰

2)右サイドと左サイドの役割

3)32:10からの60秒



得点者
岡山            山口

11分 チアゴ・アウベス   17分 オウンゴール

 

1)ワントップ河野孝汰

この日のレノファの形はボール保持は4-3-3。久しぶりにこの形に戻してきました。名塚監督の試合前の決意が現れたように、原点回帰の4-3-3と言ったところでしょうか。

対する岡山は4-4-2。最前線のチアゴ・アウベスが今季初スタメン。坂本は怪我とのことでしたが、ムークやハン・イグォンなど今まで前線をつとめてきた選手ではなく、得点力は抜群のチアゴを起用。DFラインもバイスと柳の並びを変え、高木ではなく鈴木をLSBに起用してきました。

この柳とバイスのポジションチェンジの意図がどこにあったかは正直僕には読みきれませんでしたが、岡山が狙った形として『右サイドのバイス』からのロングボールがあったと思います。同サイドへのロングボールだけではなく、対角のLSH佐野を狙ったボールも多かったです。身長が低いRSB石川、RCB前のところでチアゴや櫻川に競らせ、その裏への抜け出しを佐野へ狙わせるなど一発のロングボールで局面を打開することがあったと思います。

 

輪笠 風があることをチームで共有した中、前に強力な2トップがいるという部分と、相手もわりと前からプレスに来るというスカウティングの中でロングボールも有効になるという話があったので、そこは本当に意思統一して攻められたのかなと思います。
櫻川 今日は相手が前がかりに攻撃してくるチームだったので、前に残って2対2というか、同数でカウンターを狙っていました。

 引用元:【公式】岡山vs山口の見どころ(明治安田生命J2リーグ:2023年4月22日):Jリーグ.jp

 

とあるように、明確にこのツートップの得点力とレノファのラインを高くする(ただプレスは安定してない)という事前情報の元、風上であった前半に右サイドバイスからの配球で得点を奪うことを意識していたと思います。

レノファとしてはこのロングボールに対して、後ろで跳ね返すことを選ぶのであれば、RSB前、RCB生駒を選択したでしょう。ただ、後ろからつなぐこと・前から奪いにくことを選択した名塚監督は上記の11人を選びました。

この試合の入りとしてまず42秒のところから。FKからの流れでしたが、大分戦のように池上がバイスへプレスをし、守備のスイッチをいれます。RSB河野はショートパスを受けるような動きではなくロングボールのセカンドボールへ備えるように前線へ上がりましたので、RCBバイスはLCB柳へ。柳には五十嵐が出ることで、GK1堀田へ戻させて彼に蹴らせることに成功。吉満までボールが流れ、ボールを回収することに成功します。

続く4:45には前線へのフィードが流れるも、五十嵐がGK堀田へ寄せ、バイスが出たボールがずれたところへ河野がプレス。岡山RSB河野にボールが出たところで、LWG小林がカットしそのまま河野とのワンツーからクロスまで行きます。大分戦や清水戦と違い、ユニットでボールしてからのプレスを試みていることがわかる序盤でした。

中盤に入っても27分の場面でも池上がさぼらずプレスをかけるシーンもあり、体力切れの試合終盤まで、ある程度徹底をされていました。

ロングボールを蹴られてしまうので、どうしてもボール奪還位置が自陣深めになってしまいますが、欲を言えばもう少し押し込んだところでのカウンタープレスで相手陣深くでボールの再奪回ができると、より名塚監督の理想の形になるのかなと思います。

引用元:sporteria.jp

 

ボール保持の局面で序盤から目立っていたのがこの日はCFに入った河野孝汰。

”自分のポジションのところに相手の屈強なセンターバックがいる中で、同じ土俵に立たず、自分の良さはどういうところかを考えていました。打点の高いボールを引き出しても、それは相手の強みですので、シャドーだったりウイングだったりが動いて空いたスペースを見て、自分が良いタイミングで落ち、足元で引き出して起点になることは試合前から思っていました。それはサイドバックにも伝えていました。何回か起点になってスピードアップするシーンがあったのは良かったのかなと思います。

そういうところはシャドーのポジションをやっていたからこそ分かるものもありました。すごくやりやすかったです。”(引用元:レノファ公式)

と、語るように。何度もヘナンや沼田からのボールを落ちて引き出していました。

河野の談話にあるように、まずここでスイッチを入れるのも池上。池上にはCH6輪笠が付いてきます。五十嵐はその後方で同サイドの裏を伺うように位置どることで片方のCH27河井をピン留め。河野はこの輪笠と河井が出てこれないところに顔を出します。バイスや柳も潰しにかかりますが、河野がおちる距離が10mくらいは落ちていると思いますので、足元に入ったところでのチェックは出来ず、ファウルが精一杯という状況が河野が交代する76分まで続きました。(26:10、31:30が最たる例ですが、池上が河野落ちてきてるよな、という具合に前方をチェックしており、呼応するように河野がよい落ち方をしてます)

河野や池上・五十嵐がボールをおさめることができれば、岡山の武器の一つである前線からのプレスを無効化できます。岡山も形を崩してボールを取りに来ているので、河野の落としたボールを前や五十嵐がロングパスやドリブルで侵入を試みていました。

河野孝汰の動きとしてこのビルドアップの出口になるプレー以外にもペナルティエリア内でのプレーもある程度出せていたと思います。

得点シーンのポストプレーについてもそうですが、目立ったのは前半終盤。41:38には柳の位置にいましたが、矢島が前を向いたところでバイスの裏を取りエリア内でタッチ。

43:20はやはりバイスの裏を狙う動きをすることで、バイスを動かして沼田のシュートコースを創出。

そして彼がキャンプから練習していたプレー、46:10。吉岡からパスを受けて柳をワンタッチで交わしてシュートを狙いますが、輪笠のカバーにあい、シュートへ持ち込めず。彼の悔しがり方がこのワンプレーへの気持ちの入り方がわかると思います。

【CAMP REPORT.2】本格的に練習スタート!五十嵐太陽選手と河野孝汰選手の同学年コンビに期待!! - YouTube

別のブログでも取り上げましたが、生駒の後ろでターンからのシュートを練習してました。柳は置き去りには出来ていましたが、やはりもう少し足につかないとエリア内では難しいですね。ほんと期待しかない選手です。

 

2)右サイドと左サイドの役割

そして後半。岡山が前半序盤の成功体験があったためか、プレスをもう一度強めに仕掛けてきます。

しかし、ここは既に前半の途中から対策済み。矢島がCBの間に落ちて後ろを3枚にして岡山の2CFを向かいうちます。(サリーダ・ラボルピアーナ)

この日のレノファの両CB前・ヘナンは持ち運ぶことが出来ますので。後ろを3枚にすることで岡山の2CBの脇で一人CBのどちらかが余るので、ここから展開すること・ファーストラインを突破することが可能でした。

LSH22佐野が人数を合わせるためにRCB15前のところにジャンプをしても、RSB7石川が佐野が出たためフリーになるので、右サイドで幅を取り受けることや49分のように中に位置どるなど揺さぶりをかけます。前半同様に池上・五十嵐・河野で輪笠と河井のところを使うなど引き続きセカンドラインの突破はうまくいっていました。

 

ところが選手交代を機に、自分たちでトーンダウンをしてしまったように思えます。

66分の後退で吉岡、小林の両翼に変えて梅木・松橋が入ります。松橋はここまで両サイドのウイングとして出場しているのでわかるのですが、CFタイプの梅木をRWGで起用します。CF河野がうまくいっていることもあり、ここを変えたくなかったのかなとおもいますが、であれば大学でもLSHをやっていた野寄や神垣を入れて池上をRWGで使うなど方法があったと思いますが、梅木をここで使います。

この試合のレノファの右サイドと左サイドの役割はざっくりですが、下記のようなものであったと思います。

右サイド:

・前などロングフィードで吉岡を走らせ43鈴木の裏を狙い奥行きをとる。

・押し込んだ状態から、矢島・池上・五十嵐・石川・吉岡などある程度密集を作っての局面打開

 

左サイド:

・ディフェンシブサードではビルドアップの起点に。

・右サイドに寄せたところで左サイドへ展開し、アイソレーションした小林への解放。そこからの崩し。

 

といったものが挙げられると思います。

こう見るとタスク的に松橋はどちらのサイドでもプレーは出来ますが、梅木のプレーを考えると右サイドのほうがあっていそうです。

現に67:20では矢島から対角のロングボールをライン際で収めるプレーが早速出ました。また76分の五十嵐の決定機でも梅木はエリア内でパスを受けられる位置取りをしており、左でチャンスを作ったところで、沼田からのクロスを大外梅木という狙いを持っていたのかもしれません。

ただ、両ウイングが奥行きを作っていたこともあり、この梅木と松橋の交代で多少岡山のブロックを間延びさせるようなプレーが減ってしまい、岡山にボールを奪回されやすくなり、ボールを握られるような展開を生む一因になってしまったように思えます。

梅木が入る少し前のプレーで高さでやられかけたシーンもあったので、このあたりの高さ対策を狙ったものとも考えられます。終盤のセットプレーのところで梅木と皆川で高さが担保されていたのは岡山の狙いに対して心強いものではありました。

しかし、名塚監督のいつもの言葉を鑑みると、リードをしているならこの対策は考えられますが、この守備的な意味合いでのこの展開での起用は正直【ない】と個人的には考えます。今後の起用のされ方に注目はしてみたいなと思います。もしかしたら、左サイドを突破して右サイドで仕留めるというのが【例の新しい形】なのかもしれません(しつこい)。

 

3)32:10からの60秒

結果論ではありますが、この試合、J2では規格外のツートップの得点力に対してどこまで守れて、どこまでこの2人の守備で空けるスペースを突けるかの我慢比べてであったと思います。

 

今節のレノファとしてはビルドアップで一旦輪笠・河井のラインを超えられればOK。自陣でのビルドアップ時、矢島は岡山の両CF交互に監視をされますが、ミドルサードに入り岡山のセカンドラインがリトリートすることで、CFがアンカーの矢島に突く意識が薄いので、ハーフウェイライン付近でほぼフリー。岡山のCFの2人の守備の貢献度がそこまで高くないため、矢島へのチェックは甘くなります。解説の桂さんが終始指摘をされていたとおりです。

何度もここで矢島は前を向くことができ、ここでタクトを振れます。アンカーポジションとはいえ前線へ出ていったとしても、沼田や石川が中央へポジションを移動させリスクヘッジ。1得点目はこのような展開からのゴールでした。ただ、ひとたび失い方が悪ければ岡山のハンターがレノファへ牙をむきます。その我慢比べの末がこの1-1ドローという決着だったと思います。

この構図がまるまる詰まっていたのが前半32:10からの60秒です。岡山RSB16河野のシュートが外れ、ゴールキックから再開の場面。

 

吉満とヘナンのパス交換。やはり池上は河野の位置を確認しつつ、ボールを受けようと輪笠を引き連れ降りてきます。そしてヘナンが同サイドの縦パスではなく、中央部のあいたスペースへ。河野は柳を引き連れこのスペースへおち、ワンタッチでRCB前へ。

RCB前からRSB石川へ切るパス。吉岡→池上→石川につながり、ここでフリーの矢島が顔だします。前、河野も絡み、岡山が出てきたところを奥行きを使って再度押し込みます。

戻したボールを池上→吉岡→五十嵐とつなぎますが、ここで岡山RSH14田中が狙いすましたように五十嵐からボールを奪取。チアゴへつなぎ、チアゴもダイレクトで裏抜けをした櫻川へ。ヘナンと矢島がなんとか戻り2人で対応しシュートは吉満の正面に。事なきを得ました。

 

レノファとしては河野を使って前進が出来た。細かく繋いでゴールに迫ろうとした。しかし、岡山は奪った後のチアゴ、櫻川をしっかり準備させていた。

奪われ方が悪ければカウンターを食らう。こうなった時の場合に押し込みながらも人数は残していたレノファ。岡山も惜しい場面がありつつも仕留められなかった。

両陣営がやはり狙いは出せども、精度が伴わなかった。このような展開が90分続いてしまったなとい思います。

 

ではレノファはどうすればよかったのか。やはりゴールに矢印を向けないといけなかったと思います。この試合のゴール期待値は1.71対0.64。

sporteria.jp

個人的な体感としてはここまで差はなかったように思えますが、岡山の前線の2人は確かにゴールへ向かっていました。ただ闇雲にシュートを打てばよいというわけではありません。前半にあった五十嵐の打ったシュートのディフレクションがカウンターにつなげられてしまったシーンのように、無謀なシュートはカウンターのもとになります。

上記の32分のシーンのように柳を自陣まで引っ張り出してのカウンターのような形でボールを運べたのであれば、やり直すことは大切ですが、思い切ってペナルティエリアへ早い段階でボールを送り込むのは手段の1つかと思います。

現に32:29のところでは河野がスピードを上げてエリアへ侵入を試みており、GKとDFの間へのボールやニアサイドでバイスと勝負させるようなボールを送り込むだけで、相手へ与える怖さは変わります。五十嵐・小林もエリア付近まであがることはできていました。

この試合ゴールに向かったのは17分の得点シーンと67分のスローインの流れからの五十嵐の決定機だけであったと思います。大分戦、清水戦で書いたことと重複はしますがやはりまずは矢印を相手のゴールに向ける。ボール回しがうまくてもゴールから遠いところでは相手は特に気にしません。

17分のようにエリア内でのプレーが今後の試合で増えていってほしいなと思います。

 

さあ、ついに渡邉前監督との対戦ですね。好調ヴェルディを破っていますし、順位は下でも全く油断は出来ません。

ただ、目指すのは勝ち3のみ。次こそは勝利を期待したいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。