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求めてきた形と結果 ジュビロ磐田vsレノファ山口@ヤマハS 2025年4月29日

ようやくの勝ち点3。待ちに待った勝ち点3。勝つって本当に難しい。昨年の7連敗もありましたが、今年も早くも痛感する日々でしたが、ようやくトンネルを抜けることができました。

試合内容についても磐田の状況などはあったかと思いますが、なんとかなんとか守り抜いて虎の子の1点を…という内容ではなく、それこそ「能動的なアクション」「組織的な守備」「素早い攻撃」を体現したうえでの勝ちであったと思います。

では、試合を振り返ってみましょう。

の前にちょっとだけご案内を。

https://x.com/cross_reno/status/1917911977562898564

こちら、ジュビロサポーターのけーすけ(@N_box_2001_1st)さんと行った試合振り返りのスペース。こちらでも振り返りもやってますので、よろしければ。

 

1)ツートップの起用の意図と中2日での試合

2)試合を重ねるということ

3)次のフェーズはボールを持たされた時か

 

【得点者】

磐田         山口

なし         66分 山本桜

 

1)ツートップの起用の意図と中2日での試合

まずこの試合押さえておきたいのがツートップの起用法。

開幕戦の有田を筆頭にカップ戦含め、古川・山本駿など180㎝を超える選手を起用し、ロングボールで競り合ったところのセカンドボールを抑えてゲインする方法を1つのビルドアップとして採用しているのがレノファ。これは2024年で言えば梅木であったり酒井などが起用されていたのと同じかと思います。

この試合では奥山と山本桜と高さではなくアジリティで勝負するタイプをツートップに配置しました。2024シーズンは最終盤若月と末永が組んでいることなどもありましたが、最も鮮烈な印象として残っているのは天皇杯ベスト8の横浜FM戦の奥山、末永のツートップかと思います。

形は違えどこの試合も奥山末永でマリノスのビルドアップへの規制、SH田中、吉岡の縦横無尽のチームの貢献などがありました。はい。印象は似てませんでしょうか。

 

磐田戦見ていきましょう。まず今節前半のハイライトはここに集約するかと思います。

磐田のビルドアップ対レノファのハイプレス

形としては磐田の4-2-1-3に対してレノファは4‐4(ダイヤモンド型)‐2でプレス。磐田の2CB+2CHに対してはツートップの2人を当てて、SHの2人は磐田のボランチを見つつSBへ出ていく位置取り。ボランチは田邉と三沢が縦関係となり、田邉が磐田のダブルボランチを見つつ、SHが出ていったところをケアします。去年の相田システムでは相田がボールを刈り取るようなシーンが多かったですが、田邉はどちらかというとそこにいることで磐田のボランチへボールを出させないように誘導。野寄や末永が磐田のSBへ出たところで一気に距離を詰めここでボールをとる、またはここから縦に送られるボールに対して後ろの選手が対応する形になります。

結果としてこのやり方がはまりました。まずSBのところへプレスをかけることで磐田のパスミスを誘発。また、縦へのパスが、倍井(クルークス)・川井・ペイショットにパスがでても、岡庭(亀川)・三澤・板倉で対応。前半の平均ボール奪取位置は60mを超え相手陣で時間を進められていました。

 

また、この深い位置でボールを取ることで獲得できていったのがクロス数や30mライン進入やペナルティエリア進入です。(下記FOOTBALLLABさんより引用)

右側がレノファのスタッツで赤字が磐田よりも上回っていた部分で端の薄い字は今年の平均。大きく数字を伸ばせている項目が多く、高い位置でボールを取れば相手ゴールは近くなるので、30mラインやPAへの進入は増えます。また、人数をかけていることもあり、エリア内に人を送り込むことも容易になるのでクロスの機会も増え、それはチャンスにもつながります。

そして今節新たに攻撃の形として見られていたのがミドルシュートのシーン。磐田の守備の原則もあるかもしれませんが、このクロスからの攻撃をクリアされても、レノファの選手が押し込んでいることもあり、磐田の2列目の選手が最終ラインに吸収されるような形になり、バイタルエリアが空き気味に。この試合実際前半に三澤に2本、田邉に1本、亀川に1本この位置からのシュートチャンスが生まれていました。

クロスにいくところでも相手のSBの裏のスペースをまず意識し、相手の深いところをとることでクロスでのチャンス創出、相手の守備陣形の押し込みなどを実現し上記のようなシーンを作ることができました。

レノファの攻撃(攻撃の局面)⇒ボールを失ってもプレス(攻撃⇒守備の局面)⇒ボール再奪還しサイド攻撃と守備や守備→攻撃の局面の時間を少なくし、相手陣内で主に攻撃とネガティブトランジションの局面で試合を進められるような形となり、前半の押し込む形を作れました。

これにはまず上述したツートップの採用に意図があったと思います。機動性に優れた二人を使うことで、プレスのファーストディフェンスとしてサイドを制限する役割をし、そこに2列目がしっかり連動すること。ボールを奪えば積極的にSB裏のスペースへ走ることでここで起点を作りCKやスローインなど獲得し高い位置でのプレーの再スタートができました。

思い返せば天皇杯マリノス戦でも奥山と末永のツートップはマリノスの最終ラインやGKへ積極的にプレスをかけることでレノファの時間を作っていきました。この日はマリノス戦よりもサイドにしっかり誘導するプレスなど全体的に押し上げてしっかり相手陣内で多くの選手がプレーできたため、5分以上の試合の進行ができたと思います。

 

このやり方については色々意見はあるかと思いますが個人的には中2日の試合事情があったと思います。やはり相手は2戦ともホームで試合をし中3日での試合。レノファは移動込みで中2日での試合と日程にはかなりの差がありました。

もともと志垣レノファがハイプレスを有効に使って試合を進めることは珍しい話ではありませんが、磐田のビルドアップに対してミドルサードも引いてしまったり、ビルドアップで上回られてしまった場合、必然と受動的に走らされることが増え疲れもたまってきてしまいます。

ミドルプレスにするという選択肢もあったかもしれませんが、それだと相手のゴールに迫る回数が減る可能性が高い。かといってハイプレスに行って交わされて、磐田のチャンスメーカーのクルークスへ縦に速くつなげられてしまったら、それだけ全体でダッシュで戻り全員がスタミナを奪われます。これはかなりのリスクになります。そのためこの試合では自分たちのハイプレスをやり切ることがキーだったと思います。

三澤・亀川・野寄・奥山・板倉など怪我明けの2人は多少話は違いますが、前節の疲れがあまりない選手たちがしっかりと要所を締め、極力消耗が大きい自陣への撤退をすることなくプランを遂行していったと思います。

クルークスへボールが渡る回数を減らす。レノファの右サイドへの誘導も左サイドの高い位置にいるクルークスに最も遠い位置でのサッカー。こういうのがあったかと思います。そしてレノファの狙いは奏功し、今期でクルークスのボールタッチ数は最も低い値となりました。下記リンク先で1~12節の形を比べてもらえればわかりますが、ボランチもビルドアップへなかなか関与できていないことがわかります。


引用元:SPORTERIA 2025磐田のパスソナーネットワーク

 

2)試合を重ねるということ

前半は34分の多少ゆるんでリスタートのところから盛り返されてはしまいましたが、ほぼ狙い通り。あとは得点という形で終えられたレノファ。後半も狙う場所は同じ。相手のSB裏でまず起点を作ること。

開幕節から相手の背後を狙うことはしてましたが、なかなか連動できていなかったり、しっかりと攻撃を完結できずにボールを失ってしまいカウンターを食らって失点というのが流れであったかと思います。

スタメンの半分以上、主力の半分以上が変わった今季。そういうところがコンビネーションの熟成というのかもしれませんが、徐々にチームとして試合の中で合わせることができていっているように感じます。

得点シーンについても一度跳ね返されたところを田邉が相手の矢印を折るように、磐田のSB裏へボールを送り込み、山本桜がこれを収めます。もう一度やり直して再度磐田がラインを上げたところで今度は田邉はサイドを変えて磐田の矢印をまたずらしていきます。それに合わせて奥山や亀川は相手のスライド幅を大きくするために左サイドで幅をとり、成岡がしっかりフォロー。あいての4‐4ブロックが間延びしたところに、成岡⇒野寄⇒奥山で左サイドのポケットへ進入し、山本桜が仕留めました。

この試合で狭いところからSB裏を取るシーンが何度かりましたし、CBとSBの間を取ることは割とよく見るシーンですが、成功率はかなり厳しく、ボールロストやカウンターの温床になっているイメージではありましたが、このシーンでは本当にきれいに崩すことができました。

強風は2次的なものではありましたが、ロングボールで背の高い選手を使ってのげいんではなく、アジリティでスペースを素早く突いていくこの日の試合のプランが結実した場面であったと思います。

 

また、この試合では交代選手も今治戦に比べて大きくチームの勢いを保たせてくれたように思います。なかなか交代選手からブーストさせることができなかったこともありましたが、得点に絡んだ成岡はもちろん、試合の締め方が下手だったレノファにしっかりと高い位置でマイボールのスローインをもたらした横山など交代で入った選手がそれぞれの仕事をしていたように思います。

この試合は試合が動いてからの20分間、まるで後半40分のようなオープンな展開となってしまい、どちらのチームもゴール前までボールが行くような展開になってしまっていました。そういうところで守備の意識が強くなってしまった鳥栖戦や、こじ開けられてしまった愛媛・富山・今治のときよりもチームとして攻めるところと守るところの徹底をしつつ時計の針を進められていたように思います。途中から入った選手が空気のような形で試合に絡めていない試合もいくつかありましたし、そういう意味では磐田戦は多くの選手がしっかりチームに貢献してくれたように思います。

 

もちろん、最終盤マルスマンのスーパーセーブの場面ではリカルドグラサへの寄せが甘く簡単に背後へのボールを蹴らせてしまったところなどは、鳥栖戦で痛い目に遭ったところに似ています。

すべての攻撃を遮断することはできませんが、一度食らってしまっているまずかったシーンや自分たち起因のものは減らすことができるので、今後順位を上げていく上ではこういうところをなくしていけるとよいのかなと思います。

 

3)次のフェーズはボールを持たされた時か

さて、無事勝利はしたもののまだ降格圏。勝ったのも札幌・磐田とレノファがハイプレスなどしっかり行い、背後もちゃんと狙って、という勝ち方でした。ある程度自分たちが組みやすい相手ともいえるかなと思います。ルヴァンカップの鹿島の時もやはり勝ち方は似たような感じだったかと思います。

もちろん大分や愛媛のようになんで引き分けに…という惜しい試合はあれど秋田や開幕戦の甲府のようにある程度ハイプレスを無効化されるようなボールを出されたり、レノファが主に最終ラインでボールを持たされるような試合になった場合、どうなるか。自分たちの色はどう出すだろうか?

求めてきた形での勝ち点3は取れた。これを成功体験に勝ち点を積むことができれば順位も上がってくるかなと思います。ただ、そこから上に行くときはもう一つ何かを持たないといけないのかもしれない、そういうときは上のような多少レノファの苦手な展開でどんな振る舞いができるんだろうか。その時が最も見どころな試合になるのかなと感じました。

 

さて、今日は仙台戦です!中2日、中3日。Jリーグはエンターテインメント。GWは稼ぎ時!と言ってしまえばそれまでですが、選手や監督・コーチはきっとつらいんだろうなと…ただ、流れが良いときに試合を重ねるのはよいかもしれません。まだまだ降格圏、でもまだ12節。上がろうと思えば今からでも間に合います。ようやく2025レノファが動き始めたと思いたいなと。ここから勝っていくことを期待しています。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

※文中敬称略