
FIFA World Cup 2026のグループリーグ全72試合をそれぞれの書き手によりアーカイブ化するというJAPAN ANALYZING FESTIVAL '26(Windtoshさん主催)の企画に参加してます。
今回の記事は準々決勝ノルウェー対イングランドの試合になります。
まず、今大会僕はグループⅠのセネガル対イラクの記事を担当いたしました。同グループであるノルウェーについては決勝トーナメントでは日本とあたる可能性があったこともあり、気にしてみているチームの一つでありました。
そして準々決勝の記事のおかわり企画としてこの試合の担当の1人としてご指名いただき、ノルウェー目線で書くことになると思いますが、この試合について考えていきたいと思います。イングランドはそれに比べるとあまり見ていないので、ご了承いただければ。

【得点者】
ノルウェー 36分 シェルデルップ
イングランド 47分 93分 ベリンガム
まず、この試合ノルウェーとしては先制に成功をし、突き放す機会、同点後も勝ち越す機会などもあり、勝ち筋は少なくなかったと思います。ただ、やはり連戦であったり、気候であったり、チーム内にウイルス性の病気が蔓延している、といったニュースもあるなど満身創痍でこの1戦を迎えていたようです。もちろん、対するイングランドもノルウェーよりもこの6戦合計1500キロ以上の移動をしていることや、ベスト16はメキシコで標高2000m以上、10人で耐え続ける1戦を終えてからのこの準々決勝なので、どちらも厳しいコンディションであったと思います。それでも試合の中で出場選手のコンディションであったり、ベンチから出てくる選手の質など、総合力でイングランドに上回られてしまった。流石イングランドというようにも見えました。
特にノルウェーとしてはCFハーランドが、湿度など試合コンディションで難しかったようで、後半の途中から膝に手をつくシーンがあったり、この試合のタッチ数21となかなか試合に絡めなかったことなど、チームとして狙いたい形が出せていなかったことがあったように思えました。
長くなりましたが、試合の内容を見ていきたいと思います。
まず、前半のハイドレーションブレイク前までは多少イングランドペースであったと思います。
立ち上がりこそ、ハイプレスをするように前から出ていったノルウェーでしたが、その後は4-5-1でミドルブロックというかローブロックを組み、イングランドの攻撃に相対していました。
イングランドもノルウェーが前から来ないこともあり、ミドルサードまではある程度簡単に進入することが出来ていました。まず開始10分までにイングランドの左サイドから徐々に進入していき、RWGのマドゥエケにサイドチェンジを通したのが3回あり、ここからの崩しを狙っていたのかなと思います。これに対してノルウェーはLSBウォルフだけでなく、LWGシェルデルップがしっかりと2対1での守備を作れており、前半はここからの進入をほぼシャットアウトしていました。
多少隙を与えてしまっていたのが、逆サイドであったかと思います。RWGセルロートの本職がCFということやイングランドのLSBオライリーの上がりを気にしてなのか、シェルデルップに比べると守備が緩かったように見えました。そのため、イングランドLWGゴードンに対して、ノルウェーRSBリエルソンは1対1の守備をする機会が増えました。
リエルソンは負傷交代する60分までに12個のターンオーバーがあったようで、いかに彼のところから攻め込まれていたか、また彼がしっかりそれを食い止めていたかがわかります。(※だからこそ負傷気味だった彼の足がもたなかったのかなと。)

また、ボール保持時についても、4-2-4のような形でのイングランドのプレスに苦労しました。「2」の一角であるアンダーソンがウーデゴールに対してマンマークのような形でつくことでなかなか運ぶ筋道を見つけられませんでした。ハーランドやセルロートへのロングボールも中盤と彼らの距離感が離れており、セカンドボールを収めることができずにイングランドボールになってしまっていました。
時間が経つにつれてノルウェーは危ない場面こそ作られなかったものの、なかなかボールを奪っても押し込まれてしまっているところから、ボールを相手陣に運ぶことが出来ずハイドレーションブレイクを迎えました。
そして、このハイドレーションブレイク明けノルウェーが多少ビルドアップを変えました(29:50あたり)。ビルドアップ時に1度はウーデゴールが最終ラインに落ちるものの、その後はあえて高い位置をとりました。そうすることでアンダーソンを前線のプレス隊からの距離を遠ざけるようにピン留め。そして8べルゲが落ちて3バックの形をとります。その1シーン前にもLCB17ヘッゲムがドリブルで持ち上がるシーンがあり、RCB3アイエルもにおわすようにボールを持ち、ベリンガムとゴードンを誘い出します。これらの動きに合わせて6ベルグがベリンガムとゴードンの裏を取りボールを引き出しました。
イングランドのもう一人のライスがここに出る選択肢もあったかと思いますが、LWGシェルデルップがインサイドにポジションを取り、ライスの脇に入ることでライスの周りにベルグとともに数的優位の状況を作っていました。シェルデルップがいることでライスはベルグのところまででることができませんでした。これで相手陣への進入が出来ました。そしてそのままファイナルサードへ。会場のバイキングローも盛り上がっていきました。

この一連の流れからか、イングランドのボランチの2人はある程度中央を使われないように引いて受けるノルウェーのIHに対して、迎撃に出ていくことは選ばないように見えました。ここからノルウェーは相手陣やファイナルサードへの進入がしやすくなっていきました。
また、ボール非保持時もウーデゴールを1列上げた4‐4‐2に変更しミドルブロックで構えるのではなく、プレスをかけに行きました。32分には相手陣で嵌め込み、ストーンズのところであわやというところまで追い込みました。
そしてその直後イングランドのCFケインへGKピックフォードからボールが渡ったところで6ベルグがすかさずプレスバックでボールを奪い、最後はシェルデルップがドリブルで仕掛けペナルティエリアに入ったところからシュートかクロスかはわからないですが、鋭いボールがゴールに吸い込まれました。ノルウェーが自分たちで流れを引き寄せその流れをそのままゴールにつなげました。
ボールを保持することで流れを持ってくるノルウェーの流れが準々決勝という大舞台でも発揮されました。こうなるとノルウェーの自慢の攻撃陣がより勢いに乗り、38分はFKからハーランドへのボールに対して、その裏に抜けたボールへ反応したセルロートのエリア内でのシュート。43分のボールを奪ったところからカウンターのような形で速攻でセルロートとハーランドで2vs1となっていたシーンなどを作り出しました。
結果としては後半のファウルになった得点シーン含めてやはりここで2点目を取りたかった、というのがあると思います。ファウルを取られてしまったことや1失点目はカメラのコードに当たった疑惑があるなど多少不運なことはあったかもしれません。
ただ、ノルウェーはここまでの戦いから、繋ぐビルドアップやハーランドらへのロングボールなどある程度引き出しはあるチーム。一方で守備は毎試合失点はしてしまっていました。そこまで盤石な戦いをしているわけではなく、ある程度中盤から前線のタレント力であったり、相手陣である程度時間を長くすることで勝ち進んで来たように見えました。そのため、やはり複数得点は必要であり、ブラジル戦やコートジボワール戦のように最終盤でも得点をするというしたたかさも伴わなければならなかったと思います。そしてそのしたたかさの中心にいたのはハーランドであったと思います。
スコアラーでありチームの柱の一人であるハーランド。彼が後半の途中あたりから試合の中で影を潜めてしまう事態に陥り、ノルウェーとしては厳しくなってしまったように思います。はじめに書いたようにノルウェーのチーム事情であったり、湿度の問題をコメントで出していたようですし、この試合のコンディションも彼にはあまりよくない形で作用してしまったようです。冷房がついているスタジアムではなぜか準々決勝以降試合が開催されないようで、7月のデーゲーム、1994年ワールドカップでも不満の声が上がったようですが、なぜか同じ轍を踏んでしまったように思えます。
ピッチ内での出来事に目を向けると、後半イングランドは3人目の交代でリースジェームスをボランチに入れて、ハーランドのこともあり、ノルウェーの優勢の状態から膠着状態になっていきました。その後もイングランドはLSBスペンス、ボランチのロジャースを入れ、後ろの人員やポジションをいじることで安定を図り、後半ボランチに落としたベリンガムを前線にあげる采配をトゥヘル監督は取ってきました。
イングランドもこの準々決勝までの道のりで移動や試合展開でノルウェー同様に消耗はしていたとは思いますが、このベリンガムを上げる采配であったり、交代で入ってきた選手の質のようなものはノルウェーよりも上であったように思います。
ノルウェーもブラジル戦で流れを呼び込んだウイングの2枚替えを行い、特にLWGヌサがコートジボワール戦のようにカットインからのシュートでゴールを脅かすシーンはあれど単発になる機会が多く、膠着状態はなかなか変わりませんでした。対するイングランドはサカのドリブルであったり、ロジャースのプレス、スペンスのダイナミックな攻撃参加、リースジェームスの対人守備など随所にノルウェーの良さを消すような働きが出ていたと思います。
選手層や選手の質などはやはりイングランドの方が格上なのは確かだからこそ、やはり追加点が交代選手らで盛り返される前に欲しかったなと。トーナメントに入り3戦目。今までのレギュレーションであれば準決勝です。お互いに消耗している状態での試合のなかで、前半のような塩試合のような展開から、後半に入ってもオープンになることなく両チームがなんとか自分たちの色を出そう、相手の色を出させないようにしようと締まった試合になっていたと思います。だからこそどんどんピッチ内の選手が消耗していき、代わりに入ってくる選手の質が最後の最後で勝負を決める一因になったように思えます。もちろん2点目を決めたベリンガムはスタメンを張り続けてまだあのパフォーマンスが出せる怪物であったことは忘れてはなりませんが。
最後に話はそれるのですが、僕はこのノルウェーのチームを見てて、いいな、と思うシーンが良い攻撃に対して拍手を送っているところです。普段よく見るのはサムズアップをして、パスの出し手、受け手のコミュニケーションをしているところがあるでしょう。
ノルウェーはそういうロングボールのほか、うまく繋いだビルドアップに対してもそういうような振る舞いをする選手が何人かいました。多くはキャプテンのウーデゴールであったかなと思いますが、完全に僕の感覚の話ですが、サムズアップよりもこの拍手のほうがなんか「良かったよ!」というのが伝わるな、ということや、見ていてどこかチームとしてあたたかいな、という印象を受けます。
ただ、そんな姿をずっと見せていたウーデゴールは、最終盤に思うようにビルドアップの時に動けていないチームメイトへ叱咤をしていました。また、ソルバッケン監督は指示としてはつないでのビルドアップをしていたが、その体力が残っておらず蹴ってしまう選手たちにいら立ってしまうシーンがカメラに抜かれていました。すべてがキレイな姿ばかりではないのは承知していますが、そんな彼らのもどかしい思いからの姿がより一層最後の最後までノルウェーは力を出し切り、もう残っていなかったんだろうな、と試合を見返して思ってしまいました。
個人的には敗退はしてしまいましたが、そんな力を出し切ったノルウェーには心から拍手を送っていました。本当にお疲れさまでした。
バイキングローなども話題になりましたし、チームとしてもインパクトを残し、試合内外で個人的にはとても気持ちの良いチーム(国)と感じました。こういう国に出会えること、サッカーに出会えること「ワールドカップってすげえな」
と相変わらず言葉が足りない感想でこの試合のブログも締めたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
(※文中敬称略)










