力負け。シーズン終盤を迎えてのJ2リーグ第28節、この段階でなかなか難しい負け方をさせられてしまった、というのが率直な感想です。もちろん上位との対決が続く中こういうことも起こるでしょう。第31節に首位清水とのアウェイゲームもあるので、それがそうなる可能性もあります。
ただ、前節4位長崎をアウェイで下し、さあ、最終盤に向けて!という気概があるなか、似たサッカーを志向するチームにホームゲームで力負け。J2リーグ甘くない。そんな試合に思えました。
では、今回は下記について考えていきたいと思います。
1)岡山のプレスの狙いとレノファの解決策
2)前半のプランは及第点だったはずだが…
3)「渕!走れ!」
【得点者】
山口 岡山
なし 72分 ルカオ
77分 ルカオ
1)岡山のプレスの狙いとレノファの解決策
今節の対戦相手、岡山は中断挟んで1勝5分け。直近は5連続引き分けと得点も失点も少なく、勝ち点が伸ばせていない、しかし負けはしていない、というチームでした。
清水に敗戦後、仙台に勝利し、栃木・山形・千葉・徳島・大分と引き分けていました。プレビューでも書きましたが、これを勝てていないチームと取るか、負けていないチームと取ることで見方はだいぶ変わる、というのはプレビュー記事でも触れさせていただきました。
岡山側でレノファ戦に向けていくつかトピックスがあったように思えます。
・勝ちきれない試合が続いていたこともあり、強引でもいいから相手の厳しいところに人とボールを入れていくことをトレーニングで確認してきた(試合前インタビューより)
・新戦力が加わってから5試合目。また既存戦力の田部井、ルカオなど怪我人の復帰
があったように思います。
もう少し岡山の話を続けさせてもらいます。
この日の岡山でこの数節と違っていたのはプレスの強度に感じました(あくまで個人的意見)。
形はCF一美とRSH木村でアンカー然とする佐藤謙介を消しながら、レノファのCB平瀬・板倉につき、LSH岩渕は一列あげたりポジションをある程度自由に取るRSB前貴之にマンマークのような形を取ってきました。
この数節の傾向を見る限り、シャドーの2人が相手のCBにつき、アンカーに入る選手を一美が抑える形を取っていましたが、可変させる前貴之に対して、LWB末吉であったり、LCH田部井を一列あげてマークにつかせるよりも、岩渕をつけることで全体の形をわかりやすくしたように思えました。
また、岡山のダブルボランチの藤田・田部井はまず低い位置をとることで、相田・河野・野寄らがボランチエリアに入ってボールを収めようとする場所をまず埋めます。最終ラインとの距離も広くせず、ロングボールからセカンドボールを回収することを準備をさせ、裏抜けなどに対しては、阿部、田上、柳(育)で対応させていたように思えます。
ボランチの2人もただ引くわけではなく、シャドウがハイプレスのスイッチを入れる、または攻撃時にはファイナルサードも出て行き、セカンドボールを回収するなど色々なタスクをこなしていました。
例えば11:45のところ平瀬から前線へフィードする場面では余裕を持って蹴っているように一見見えましたが、実際はあまり出しどころが見つけにくかったのかもしれません。
上記図の通り、ボールを戻すコースは一美、木村が抑えており、近くの野寄には末吉が寄せており、前貴之にも藤田、相田には田部井が付いていました。そして岩渕が前のマークを藤谷にスイッチし、徐々に寄せてきていたので平瀬はリスクをおかすことなく酒井、若月に向けてロングボールを送り込みます。しかし、ここは柳(育)と田上が準備済み。阿部もフォローができており岡山の3CBは準備万端でありました。河野、新保へのサイドチェンジもおそらく柳(貴)が迎撃できていただでしょうし、酒井のファウルが主審より宣告された後の柳(育)の拍手が岡山全体の動きの狙いが適っていたことを表していたかなと思います。
そのような岡山のプレスに対してビルドアップで苦戦をするなか、徐々に自分たちの時間を作ることができていきます。
17分に酒井が左サイドで阿部に競り勝ち、若月が裏抜け(ここは田上がファウルで止める)
19分にはハイプレスを敢行。藤田から木村に出たボールを板倉がカットし、中間ポジションをとった河野へつなげ、河野は左サイドの相田へはたき、河野に寄った岡山のDF陣の裏を新保がとりクロスまで行きました。この試合で初のハイプレス成功。
23分は野寄から若月へのボールを柳(育)にカットされるも、つながれた先の末吉に前がカウンタープレス。末吉の半端になったパスを佐藤が再度右サイドに展開して、河野のフリックから酒井のシュートへつなげました。
ビルドアップがだめでも、ロングボールからの裏抜けであったり、ハイプレスやカウンタープレスと今年の狙いを出していくことで、多少の劣勢の中でもやり返すことができていました。
カウンタープレスについては志垣監督もハーフタイムで言及されており、このあたりは第3節アウェイ岡山の地ではまだ出せていなかった形かなと思うので、シーズンの中で同じ相手に対して新たな手段を出せていたのかなと感じます。
2)前半のプランは及第点だったはずだが…
3節前の栃木戦から3戦連続で前半の早い時間に失点をしているレノファとしては、まず失点をしないこと。また、この試合では2失点はしましたが、岡山がしばらくロースコアの試合が続いていたこともあり、まず前半は失点をしないことはこの試合のプランとしてあったと思います。
この数試合で散見されていたのがポケットを取られること。
今節でも左サイドで末吉がタテに力を出すことで、レノファの最終ラインを押し下げてそこで岩渕・田部井らが絡んでポケットを取りに来るシーンがありました。
今節は最近レノファやられてしまっている、ボールを取りにサイド複数人で出て行ったところのスペースを使われてしまう形を岡山も突いてきたように思います。
36分には押し込まれたところから、末吉→木村→田部井で左サイドからエリア内に侵入されたところも相田がスペースを埋めており対応。
38分はやはり田部井に侵入されますが、ここは佐藤謙介あたりはオフサイドのポジションと判断して追い過ぎないようにしていたようにも、プレー後の関のジェスチャーなどから受け取れました。
エリア内に侵入されど最近の改善点なども見られ、多少難しかったところはあれど前半を0でおりかえすことができ、プラン通り。さあ後半ギアを上げて、相手の隙をついて一刺しして勝ち点3をとろう、こんな流れを考えていたと思います。
ただ、まあ残念ながらそうはうまくいかず。
多少前半のイメージでは岡山が飛ばし気味に感じていました。上述したプレスもそうですし、セカンドボールを回収するところなど、中央の4人(藤田、田部井、岩渕、木村)などはかなり走っているように思えていました。また、勝てていないという状況を鑑みればアウェイとはいえ得点を奪いに来る→多少無理しててでもギアを上げて試合に入っていると考えていましたが、そんなことはなく。。。
後半の入りから木村がもう一段ギアをあげてプレスをかければ、全体もそれに合わせて高い位置をとってきました。
ここでレノファの攻撃の局面がより難しいものに。後半の立ち上がりこそオフサイドにはなりますが、板倉⇒野寄への大きなサイドチェンジがでるなど相手のプレスの矢印を外すような意図がみられました。しかし、徐々にプレスに引っかかる場面が増え、押し込まれる展開に。
押し込まれてしまうと、ロングボールも相手の裏へ出せなくなり、岡山に回収される場面がふえます。そうなると「攻⇒守」の局面でもセカンドボールを収めることができなくなり守備局面の時間が増えていきます。
また、51分のようにレノファでいうネガティブトランジション局面、岡山でいうポジティブトランジション局面のところで、田部井にボールを収められてから間髪おかずDFライン裏へボールを送り込まれ、なんとか関がクリアしたところをもう一度このボールを田部井に収められたところで、バイタルエリアに侵入した岩渕にパスを通されてしまいあわやという場面を作られてしまいました。
そしてこの辺りからセカンドボールを回収するのがほぼ藤田や田部井となっており岡山は最終ラインを好守に置いて高い位置をとれるようになっていきました。
田部井の復帰で藤田とのダブルボランチの役割が前節までよりも整理されたような印象があり、この試合藤田は両チーム最多のこぼれ球奪取数7を記録し、田部井もチャンスクリエイト4を記録。試合を通して気の利いた位置取りやプレーを随所に出されてしまっていました。
話をもどして、後半から岡山の3バックはある程度ビルドアップ時に幅をとり、レノファの「2」の脇からCBが持ち上がります。レノファSHが捕まえようとしますが、岡山のWBやCHなどパスコースが増えている状況でここを止めることができず、CB陣に前進を許しプレスがきかなくなっていきました。
「攻」「攻⇒守」また「守⇒攻」の4局面のうち3つを機能不全にさせられてしまったら、流石に「守」の時間が長くなってしまうのは当然のながれであり、同じようなサッカーを志向する両チーム。本来ならホームチームであるレノファが相手陣内で4局面を回したいところですが、後半の入りのプレスであったりセカンドボールの回収を機に、自陣に押し込まれるような展開となっていってしまいました。
3)「渕!走れ!」
この試合のハイライトであったかなと個人的に考えているのが、61分。
岡山がボールを岡山の左サイドに展開し柳(育)がボールを持ちあがるところで、木山さんの「渕!走れ!」です。このワンプレーで岩渕が前貴之の裏を取りに行くように裏へ走り、そこへ柳はパス。前はクリアをしますが、岩渕が走ったこと、そこで勝ち目がなさそうなボールに対してもくらいつき、触れはしないもののその献身性もあり、セカンドボールをCF一美が回収しました。
レノファの準備が整う前にやはりSB裏を岡山が狙い、セカンドボールを収めたタテに早い攻撃がよかった、ということを言いたいわけではなく、
確実にこの時間までもかなりスプリントを繰り返していた岩渕が監督の一声もあったでしょうが、このワンプレーにこれだけの体をはったこと。ほんの1歩ボールに食らいつく、サボらずチームのために走る、これをすることで試合の流れを相手に渡すことなく、攻め続けることができます。
レノファの選手がどうということではなく、岡山の選手のほうが木山監督がアライバルインタビューで言っていた「勝ち点3に飢えていた」ように思えます。
このあとレノファは流れを引き戻すため3人交代をしますが、70分にはやはり岡山の3バックがミドルサード付近でボールを回しているところに、柳(育)に山本がいくのか、奥山がいくのかがはっきりせず、直前のプレーで全体のラインを上げたものの、ここにプレスがかからないことでまたずるずるでさがることになってしまいました。志垣さんも物足りないようなジェスチャーをしていたのが印象的。
そしてその流れからのスローインでルカオにボールを収められてしまい、2人でつくものの反対サイドに展開をされ、全体的にスライドをするものの阿部、木村が柳(貴)のボール保持に対して、やはりポケットなどを狙うようなで動きをすることでレノファのプレッシャーを分散させたところに、ルカオが入り込み受け渡しをミスり、平瀬は岩渕にスクリーンプレーをされるような形になり、失点を喫しました。
しっかりポジショニングが取れていたかというとそうではなかった。準備や失ってはいけないエリアで失ってしまうということ、ラインを止めてはいけないところでラインを止めて背後に抜け出される。(引用元:レノファ公式)
と志垣監督がおっしゃっていたように、レノファの守備ブロックのミスがあったことは確かでしょう。
ただ、ここ数試合、試合の最終盤にギアが上がらなかったところにルカオというただの悪夢のような選手が前線でボールを収めることや人をかけてボールの出どころを増やすよう、フリーランニングをさぼらなかったところに屈してしまったかなと思います。
あまり感情論は好きではないのですが、見直していると木山監督のいう「どちらが勝ちに飢えて3ポイント取りたいと思っているか。それぐらい競った試合になると思う」といったアライバルインタビューが個人的にはとても響いた試合でした。
11000人以上が入った試合で勝ちたかった。ただ、甘くなかった。 岡山が強かった。
そんな試合であったかと思いますが、下を向く必要はないですし、向いている時間もありません。きっともう一度整理して頼もしい姿を徳島戦、維新の地で見せてくれることでしょう。
まだあと9節。J2は甘くないですが、このままずるずるいくわけにはいきませんよ!次勝ちましょう。
で、後書き。
ただ、この試合吉岡と小林はなんでいなかったんですかね。。ベンチ入りもしていなかったってことはケガなんですかね。
正直末吉や柳(育)のところで野寄の奮闘はありましたが、やはり吉岡の守備であったり切り替えの良さは欲しかった。岡山があれだけ強度を出してきたうえ、後半右サイドで押し込まれるシーンもあり、吉岡が入っていたら、また違った結果もあったかもしれません。
また、後半押し込まれたところで前線でボールを収めたり、チームの矢印を前に向けられる小林がいたら、、、などちょっとヘナンの出場停止含めてもう少し万全の状態で岡山に挑みたかったな、と。ちなみにこの試合のレノファの30mライン侵入回数は18と極端に低く、なかなか前線にボールを運べていなかったのが分かります。(PA侵入はそんなに悪くなかったですが)
(FOOTBALLLABさんより)
岡山がルカオや田部井のような復帰があるなか、鈴木や嵯峨がいない状況。長いリーグ戦なのでコンディション不良などもあったかと思います。少しベンチの差なども感じてしまったので、う~んもう一回リベンジマッチしたいですね。
それがいつになるのかどんな舞台になるのか。早ければ早いほどいい!プレーオフ行きたいですね。
今回は以上です。