中断期間が明けての最初の試合。
第3回1万人プロジェクトとして大きく打ち出しての大分戦。まだ、勝ったことのない相手ではありましたが、複数得点&無失点で勝利をおさめることができました。
課題であったビルドアップは正直大分の出方によって変えたと言うよりも『変わった』に近いようにも思えましたが、特徴的なシーンも見られました。
ということで今節は下記についてです。
※新しい形はこれだ!という記事ではないです。
1)かけ続けた『3』へのストレス
2)前から来る相手への課題提出は半分
3)新戦力を加えてのそれぞれの立ち位置
【得点者】
山口 大分
38分 河野 なし
80分 ヘナン
1)かけ続けた『3』へのストレス
今節の対戦相手である大分は前回アウェイでの対戦時は4-4-2のようなフォメーションでしたが、そこから多少やり方を変えて3-4-2-1(5-3-2)のフォメーションを今は採用しています。
前回対戦時の清水戦でも同じ形を採用し、基本は後ろからゴールキーパーを交えてのビルドアップ、ボール非保持はミドルゾーンで構えての守備をしていました。
清水はDFからの持ち上がりであったりそこからのサイドチェンジ。また大分のビルドアップをひっかけてのショートカウンターでチャンスを作っていました。個人的にはそれをひっかけてのショートカウンターが理想だな~と思っていました。(結構ひっかけてしましたが、残念ながら得点はできませんでしたね)
大分は今節の試合後インタビューで長沢選手などがもっと単純に裏へ蹴るボールがあってセカンドボールを狙う方があってもよいという発言をしておりましたが、(FW93長沢駿「そういう緩いところがああいう場面で出てくる」 | 大分トリニータ公式サイト)
まさに清水戦もそのようなシーンが散見されていました。
また上述したようにミドルブロックを組むので、割とハーフウェイラインまではノーストレスで清水は進んでいたので、レノファとしてはこういう展開なら楽かなと思いましたが、ハイプレスに苦戦をしている現状ハイプレスにくるかなと思っていました。
ただ、立ち上がりを見る限り、多少前から来るかな?割とアバウトにボール蹴るかなという数プレー以外は、大きくはやり方は変わっていない印象でした。
立ち上がり多少大分に押し込まれる時間をしのいでからはほぼレノファペース。
上述したようにレノファが苦戦をしているハイプレスからのセカンドボールの回収がうまくできていないところをついてくるかと思いましたが、大分はミドルゾーンまで引いてくれることである程度レノファは持ち上がることができる状態で試合を進める事ができました。もしかしたらレノファのロングボールや裏へのボールを警戒していたのかもしれません。
この試合の前半だけで言えばこの大分がミドルブロックで構えてくれたこともあり、レノファとしては大分の中盤3人に対して、いかにストレスを与えるか、言い換えればこの3人のところに色々な選手が入れ替わりポジションを取ることで注意をひく・相手を動かすことで前進をしていくことができました。後述しますが中央を見せることで先制点のようにサイドを突くこともできたように思えました。
まず大分の中盤3人のところに注目すると、RSB前が一列上がって大分LIH18野嶽の周辺にポジションを取ります。また反対サイドのRIH26保田のところには色々変わってましたが、田邉、相田がポジションを取りました。ちょうどこの二人で大分の中盤3人を挟むようなイメージ。そして田邉か相田のどちらかは最終ラインにおちて3人を構成し、最終ライン3人+ダブルボランチ2人のような形を作ります。ただ、今までも新保を前にあげて最終ライン3人とダブルボランチ2人で同じように3+2を作っていましたので、人は違えどそこまで大きく形は変わっていません。
ここで変わっていたのがLSH野寄の位置。今までLSHが河野であった場合、移籍をしてしまっていた梅木に近い位置を取るように多少高い位置を取っていました。河野も時々RSBを吊るために落ちてくることもありましたが、野寄はむしろこの動きをメインに行います。
大分の中盤に対して、5中川の後ろからボールを受けに行き、中川がどこまでついてくるかを確認するかのようにボールを受けに降りていきます。そして野寄の動きに合わせて田邉・相田が位置を変えていきます(5分50秒あたり)
そして6分25秒あたりでは野寄がはじめボールを受けに中川と保田の間を動くことで注目を集めておき、新保が降りたところで、野寄は裏への動きを見せることで中川と保田がポジションを下げます。保田がさがることで田邉がフリーになり、中川が下がることで生まれたスペースに河野が降りてきて、田邉とワンツー。ボールが板倉に渡ったところで、今度は吉岡がおちることでLWB16茂を引き出します。それを見た前貴之が一気に野嶽から距離とり、茂の裏をとって酒井のシュートへつなげました。
この試合で前貴之をボランチ位置に上げることでここから彼が各所へボールを配球するということが目的ではなく、あくまで立ち位置をそこにとることで相手をけん制することであったり、機を見て上がることが目的であったように思えます。(それとボールを奪われた時のリスクヘッジ)
このパスのチャート図を見ればわかる通り、彼への矢印、彼からの矢印両方が多くなくボールにかかわっているかというとそこまでかかわっていないのがわかります。
また、下記のボールタッチ位置とヒートマップでもボランチとしてふるまったような図になっていないのがわかります。(後半はそんな振る舞いをしていなかったのもあると思いますが)
漠然とサイドバックの選手がボランチ位置に上がってくるからそこを経由するのか?という心理的なものは大分に与えることがあったかもしれませんが、実情としてはそういう風にふるまってはおらず配球は主に田邉や相田、ヘナンらが担っておりました。
で、この相手の「3」の脇を突く方法についても「誰を経由させて」だったり「誰のところから」という決まり事があったというよりも、レノファの選手がそれぞれボールを受けにポジションを移動することで相手が空けたところを突くというような形であったと思います。
例えば9分のところは野寄と前で相手のIHの脇を取りながら、相田と田邉がポジションを取り直していました。その裏で酒井と河野は相手の最終ラインとMFの間の中間ポジションを取っていました。数分前のプレーでは河野が中川の裏からボールを受けていましたが、ここはLCB藤原が深くまでついてきたので一気に裏抜け。安藤とのDFラインもそろっておらず、ヘナンは見逃さずロングボールを出し決定機を演出しました。
また、先制点の呼び水のように感じたのが、30分のシーン。
やはり野寄と前で大分のIH脇をとって、田邉が最終ライン。そして相田は今度は新保が上がったLSBの空いたところにポジションを取ります。
ここでは野寄がIH保田のところにいるので、保田が相田のマークをRWB吉田に任せます。ただ、吉田も新保が上がっているのでここにつかないといけないので、相田はフリー。
ヘナンにボールが出たところで保田はヘナンのところへでたので、ヘナンはすかさず相田へパスを出します。ここでRWB吉田は相田に出て行きます。保田にヘナンに行けとチームとして指示が出ていたのでしょう。呼応して吉田が相田へ寄せていきました。
ただ、ここで大分が誤算だったのが、保田が出て行ったので野寄には中川が付きたかったところですが、ここに顔を出したのがCF51酒井でした。
酒井が中川、吉田、ペレイラの中間ポジションに入ってきたところで、中川は野寄ではなく酒井を優先。野寄が今度はフリーになり、相田⇒野寄⇒新保とボールがわたりました。また、ペレイラも野寄のところへ出ていったため、酒井が左の奥を取ることができました。
解説の中島さんがペレイラが吉田が出ていったところで新保のところ出ていくのが遅れた、とおっしゃっていましたが、おそらくペレイラや安藤らCB陣もそこまで大きく自分の持ち場を放棄して出ていくことはしにくかったのかなと思います。
そして37分先制点のところですね。ここでは新保が最終ラインに入り、前・田邉・酒井で大分の「3」をけん制し、相田がやはり30分同様に浮いた状態に。
やはり同様に吉田が相田のところへ出てきますが、30分のところと違っていたのは、新保がいた位置にいたのは野寄であり、相田と野寄が選んだプレーがペレイラの背後でした。多少位置は違いますが、30分が頭によぎったのかボールへ寄せることを選んだペレイラを出し抜くことができ、野寄が裏へ抜け出すことに成功。河野のゴールを演出しました。
大分の「3」をけん制することで中盤での大分のボール奪取であったり、そもそもの守備範囲を制限することができました。また、中盤で多くのパスコースを作れていたこともあり、大分のツートップの長沢と高橋のプレスやサイドの誘導などもほぼ無効化させることもできていました。5‐3‐2の大分の守備ブロックのうち、「3‐2」をしっかり攻略したことで、前半の先制点や優位な試合運びをすることができました。
では前貴之をあげてこの並びをすることが必要であったのか?単に前貴之を最終ラインにしてダブルボランチにIHを挟むようなプレーを求めるというやり方でもよかったのではないか?こういうことが考えられるかと思います。
個人的な印象ですが、それぞれの選手がポジションを多少流動的にとることで相手のマークを絞らせなかった、というのがあるように思えます。また、前節は最終ラインに池上や相田が降りてくるものの、前後分断し前線と最終ラインをつなぐ選手がいなくなってしまい、ボールが回りませんでしたが、今回のような立ち位置を意識づけることで、前後分断であったり、つないでくる?と相手が思えば裏へのロングボールなどもできるなど、前節の反省点があったように思えました。
2)前から来る相手への課題提出は半分
で、後半です。大分がいくつか後半45分の間に動いてきました。
まずミドルブロックで構えていたところを多少前から行くように変更。またWBもサイドで幅をとるレノファの選手には積極的に出てくるようになりました。
また、64分には野村と鮎川を投入し、野村と中川を並べることでボール保持の局面を強くし、ハイプレスである程度レノファ陣でボールを回すことができるようになりました。その直前には保田が中川の位置に降りてダブルボランチのようになったところで、ビルドアップで前進を許してしまっていたので、多少この辺りからレノファとしても暑さもあったでしょうハイプレスではなくミドルゾーンで構えることを選ぶようになっていきました。
そして最終盤はヘナンの追加点もあり、志垣さんが最近よくやる「5‐4‐1」での逃げ切りを選択し無事勝利を収めることができました。
ただ、やはりまだ前から相手がプレスにくる場合、どこから運んでいくのかというのが定まり切れてないように思えます。ミドルサードに進めば前貴之を一列上げるようなことはしていましたが、ファーストサードではここで彼をボランチに位置に上げて、そこをビルドアップの逃げ道にするようなことはありませんでした。
第1項目で触れた形はあくまで大分対策なのかミドルサードでの一例だったのかなという気がしており、新しい形にチャレンジ、というのは個人的にはまだ見えてこないというか、違うものを指しているのではないかと感じます。
話を戻して、大分のハイプレスに対しては57分で選手を交代させており、スタメンの選手たちで解決ができたか?というと多少疑問符。
若月が降りてきて三角形を作ってSHを押し出すようなやり方を見せたり、今年の前半戦で見せたような相手の背後を狙うやり方も出すようになりました。そして相手陣でプレスをかけてフィニッシュまで狙うというのが効果的なようにも見えました。
まだここは栃木戦以降注視したいと思います。
3)新戦力を加えてのそれぞれの立ち位置
その中でひときわ個性を出していたのが奥山であったと思います。ヘナンの追加点を呼ぶコーナーキックを取ったところもそうでしたが、単独で突破することやワンツーで裏へ抜け出すことなど、スピードを生かして単独突破を狙う一芸を披露してくれました。
やはり背が高いとか足が速いというのはそれだけで大した才能だなと思ってしまうのですが、この日の暑さでの疲労を考えると途中からこのような選手が出てくると流れが変わるなと感じます。
これまでであれば右サイドの交代はベンチにも入っていた末永が最近出るようになっていましたが、相手が点を取らないといけないため出ざるを得ない展開では奥山のスピードが行きますし、今節を見る限り新しいオプションができたと感じます。
また、この新戦力の加入やこの中断期間で伸びた選手によってベンチメンバーからもはじき出された選手もいます。この選手たちの巻き返しなどがあればよりチームとして切磋琢磨することにもなるので、今後が楽しみでもあります。
8月は天皇杯もあり厳しい日程のところで鳥栖・長崎との強敵との対戦が控えています。それまでにハイプレスへの克服であったり、波に乗れることを期待していきたいと思います。8月最終戦は岡山にきっちり3節にもらった宿題を返さないといけないですしね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
(※文中敬称略)
さて、あとがきは次の日に行われたトレーニングマッチ。
どうもけがで欠場?って思っていた選手たちが出場をしていたようで、次の日のトレーニングにもあれ?あの人たちほんとに普通にトレーニングしてるじゃん。という。
それだけベンチ入りの競争が激しくなってきたんだなと。
そしてなんクロで天皇杯の啓人選手の動きに光が見えた、と言いましたが、五十嵐君ハットトリックでしたね。トレーニングの映像見ても結構キレてない?と思っていたので、大分戦ベンチ外は個人的に残念過ぎたのですが、TMでこんな結果を出してくれると嬉しいものです。
また、今節の野寄君のような割と自由にスペースを見ながら動いたり、孝汰や酒井さんのような中間ポジションをとるようなプレーなら五十嵐君得意だよ!ってちょっと思いましたね。
高橋君は仕方ないとして、ジョージもベンチ外で推しメン全員欠場?!って思いましたがまだまだ8月は始まったばかりですし、めげずに推しメンを特に応援していこうって話でございました。
皆さんも推しはいかがでしたか?
今回は以上です。