レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

『これを最低限にver.2024』 レノファ山口VSザスパ群馬@維新 2024年4月14日

今季初の晴天の中でのホームゲーム。観客こそ昨年のホーム群馬戦を下回ってしまったようですが、内容はとても気持ちの上がる内容・結果であったと思います。

ついに生まれたキャプテン河野のゴール。2節からゴールがなかった梅木、今年のチームになかなか馴染めていなかった五十嵐にもゴールが生まれた上での無失点での勝利と会心の結果であったと思います。

点を取れないことを嘆くようなブログを書いてたので、では今回は得点のところを!とはならず今節は下記について考えていきたいと思います。

 

1)群馬の攻撃への修正

2)ボランチのスタッツ

3)『些細なことなんてないんだよ』

 

【得点者】

山口            群馬

4分  河野

55分  河野

66分  梅木

93分  五十嵐

 

 

1)群馬の攻撃への修正

今節の対戦相手はザスパ群馬、昨季の躍進を基盤に大槻監督も継続してオフには精力的に補強した印象でしたが、今シーズンは降格圏に低迷と難しいシーズンの序盤となっているようで、浮上のためには勝ち点がほしいところ。

対するレノファもホームでは群馬には負けなし。ホームでは1勝1分2敗と結果がなかなかついてきておらず、しっかりと勝ち点3を積み重ねることがマストという位置づけの試合。お互い負けられない、勝ち点を落とせないという姿勢が序盤から見えたように思えます。

 

前節の栃木戦ではCKが12本ありましたが得点につながらずスコアレスドローとなっていたレノファ。しかし、この試合では1本目から結果が出ます。いつものように河野をGK前に一人立たせ、このコーナーキックでは4人がニアサイドへ飛び込ませます。新保の鋭いボールに対してストーンに入った10佐藤のクリアが甘くなりファーポストを直撃。GK前に立っていた河野の目の前にボールがきて、しっかりそれをプッシュし早々に試合を動かすことに成功しました。

栃木戦では『あとは得点のみ』というシチュエーションでしたが、この試合ではすぐにその足かせが取れたことで、相手のプランも崩れたでしょうし、レノファとしても精神的に楽に試合を動かせるようになったと思います。何より開幕からゴールを取れてなかった河野が決めたことでチームに勢いや安定が出たように思えます。


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今節のレノファの4局面を簡単に。

・(攻)レノファボール保持時に前からプレスにくる群馬にたいしてつなぐのではなくタテに早くボールを動かす。相手陣に早くボールを送り込む。

・(攻⇒守)相手陣では即時奪還を狙う。保持はされた場合はミドルゾーンで構えるように陣形を組み

・(守)主にはミドルゾーンで4‐4‐2のコンパクトな陣形を組んで対応。相手の最終ラインの3バックに対してはSHの河野や野寄が1列上がるようにして4‐3‐3のような形に時にはして対応

・(守⇒攻)ボールを落ち着かせる場面とタテに蹴るのが半々くらい?いつもはボールを落ち着かせる方が多かったように思いますが、割と簡単に前線の選手にやっていた印象

 

このようなレノファに対しての群馬についてまずフォーメーションから。

昨季群馬は4‐4‐2ベースのフォーメーションを敷き、ボール保持時は後ろを3バックに可変させ左肩上がりのようにしておりました。今シーズン序盤も同じような形をとっておりましたが、第5節の横浜FC戦より『はじめからそうしてしまおう』理論ですかね、3-4-2-1をベースにしました。

 

今節は早々にレノファが試合を動かしたからなのか、もともとのプランとして群馬に持たせてタテに早くして仕留めることを想定していたためかはわかりませんが、群馬のボール保持の時間が長い展開に。

レノファとしては『守』の時間が多くなりますが、横浜FC戦にようなミドルゾーンで構え、時にはハイプレスなど防戦一方ではなく、どちらかと言えばボールを持たせるような展開に

 

群馬のキーになったのは和田と田頭のハーフスペースにポジションを取っていた2人であったと思います。

前半はRSH佐藤は右サイドのラインを踏むくらいサイドに張っており、RWB田頭がボランチよりも多少高い位置で、中央部からハーフレーンにポジションを取ります。反対に左サイドはLWB川上が幅をとり、LSH和田はインサイドに入ります。

群馬から見て右サイドの田頭はWBの位置からボランチエリアに入るように河野の動きに合わせてポジションを移しておりました。その一方で左サイドの和田はほぼシャドウの位置そのままに、レノファの野寄、池上、前、ボムヨンの4人の中間ポジションを巧みにとっておりました。LCB36中塩やLCH6天笠がボールを持った際に、和田がここにいることで、特に野寄に対して野寄が川上につくのか和田につくのか?といった具合にマークにつきずらい動きをしておりました。

 

志垣監督の下記コメントであったように

そこから20分は想定していたよりも相手が和田(昌士)選手を使ってきて、そこの部分でズレができていました。20分以降は修正して、前からプレスも掛けることができ、我々の時間も作ることができたと思います。引用元:レノファ公式

おそらくもう少しLWB川上であったり、RSH佐藤を使うなど大外の選手を使って攻めてくることをレノファは想定していたのかなと思いますが、和田や田頭などインサイドの選手を経由することで序盤は群馬に多少ファイナルサードへの侵入を許してしまっていました。

 

また大槻監督も狙いとして下記のようにインタビューを残されていらっしゃっていました。

山口さんは4-4のブロックを組んだところから追い込んでサイドでボールが変わってきた時に河野選手であったり、野寄選手がスイッチを入れるという守備なので、そのスイッチを入れたところに逆にウチが入り込むスペースが出来るのでそこを前半から動かして狙おうとしていました。ただ、入り込んだ後のクオリティであったり選択肢を作るところが一手足りなかったので、そこを作りましょうといった話をしました。そこに関しては表現してくれた部分もあったのですが、その時間を続けることが出来なかったのが残念でした。引用元:ザスパ公式

と話している通り、群馬はビルドアップ時にレノファのSHの裏を狙っていたことを明かしており、それをケアするよう動いた志垣監督。ここが2点目が入るまでの試合の焦点であったように思います。

 

そこ(ボランチ)を逃がすと逆サイドに展開されて相手の攻撃の幅が広がってしまうので、その部分は意識して守備をしていました。引用元:レノファ公式

と梅木が試合後コメントで残しているように、群馬の最終ラインの3人とボランチ2人に対して、レノファのCF梅木、若月はダブルボランチへのパスコースを消すような位置取りをしました。

そして群馬の『3』に対して、レノファは横浜FC戦同様に4‐3‐3のようにするためにSHの河野や野寄が1列上がって対応します。群馬はまさにその彼らが出て行ったスペースを狙ってきていました。

 

そこでレノファはボムヨンの負傷中にこの和田のマークについて調整します。

和田が浮く場面として大きく2つあったと思います。

1つは群馬のビルドアップ時に野寄がRCB中塩へプレスを掛けにいったところ。野寄がでていったところに和田が落ちて、そこでボールを受けます。この群馬陣内でのビルドアップ時の和田の動きに対してレノファはボムヨンを付けます。和田が下りて行けばボムヨンもそれについていくなど、相手陣でポジションを落とすことでフリーになる和田に対してはっきりマークにつくことで、起点をつくらせないようにします。

また、2つ目はレノファ陣で中間ポジションをとる和田に対して。

ここの場面では池上や野寄が和田がいるハーフスペースを意識したようなポジションを取り、群馬に外循環を促します。そうすることで大外の川上に対しては野寄であったり、RSB前が時に対応するなど、インサイドの和田を経由させないことで和田及び川上につく選手をはっきりさせることで守備時の混乱を抑えていきました。

後半に入り野寄に替わり吉岡が入った場合も、インサイドは吉岡・アウトサイドは前と言ったように、ハーフレーンに立つ和田への対応をよりはっきりさせたように感じました。志垣監督は交代の理由として気温の上昇の影響について触れておりましたが、おそらくこのような守備タスクを任せることについて吉岡のほうができると感じ、交代の決断に至ったかなと思います。

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話を前半にもどして、、、

レノファが修正をしたとしても、22分にようにRSB24酒井へ河野、若月が二人で出て行ったしまったところで、田頭に河野の裏を使われ、CH22高橋を捕まえていないので、ここからボールを運ばれてしまいました。

反対に24分は河野が酒井にでていき、CFは高橋を抑えているのもあり、田頭に対しては池上がしっかり捕まえており、ここでインターセプト。と中盤のイニシアティブを握る駆け引きが繰り広げられました。

 

2)ボランチのスタッツ

この鍔迫り合いのような展開でレノファが押し切られなかった要因としてダブルボランチでスタメンで出場した池上と相田の活躍があったと思います。

大槻監督が上で述べていたように、レノファのサイドハーフの裏を突かれても危ない場面を多く作られることはありませんでした。

何度も書いて恐縮なのですが、まずレノファの守備局面で必要なこととしてコンパクトな4‐4‐2のブロックの守備。この試合では上述した和田を相手陣で捕まえるときにボムヨンが自分のポジションを離れる場面はりましたが、自陣ではボムヨン・ヘナン・池上・相田が著しくポジションを空けることなく、しっかり中を固めた状態で群馬の攻撃への対応ができていたと思います。そのため、前半の群馬のゴール期待値は0.1未満であり、試合を通して0.57に抑えることができたと思います。(以後いくつかSPORTERIAさんよりデータ拝借します)

後半佐藤がインサイドや中に入ってくる動きというのは、大槻監督のいう入り込んだところでの選択肢を増やすことやクオリティをあげることであったと思いますが、大事なところをしっかり締めることで試合を通して対応できていたと思います。

 

 

そこでダブルボランチのスタッツについていくつか挙げていきます。この試合良い意味でボランチの分業がされていたように思えます。

まず相田のこの試合のヒートマップから。

 

この試合相田は他の試合に比べてアタッキングサードに出て行く機会がかなり少なかったと思います。出て行くときもプレスに対して呼応するくらいで、攻撃への参加よりも主に上述したようなハーフスペースへの侵入してくる選手への対応をしていたように見えました。

下記がこれまでの相田のヒートマップの一覧になりますが、他の試合よりもアタッキングサードでのボールタッチ数が少ないことが分かるかと思います。

それだけ、まず群馬が狙ってくる前に出たレノファのSH裏のケアであったり、佐藤・川上など突破力のあるサイドアタッカーに対して、SB+1人となるようなフォローを行うなど守備の局面での活躍が目立っていたと思います。

下記footballlabさんのデータですが、ページ中段の下あたりにあるこの試合の攻撃CBP(チャンスビルディングポイント)が低く、奪取Pが他の試合に比べて高いことがわかります。CBPの定義についてはこちら

他の試合ではクロスを上げるシーンであったり、シュートを打つ場面はありましたが、この試合ではシュートの他クロスやラストパスも0と、守備に比重が置かれていたと思います。


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次に池上。

この試合池上は主にボールを左右に散らすというよりもまずプレスに来る群馬に対してボールを保持して出方を見ているように思えました。プレスに来なければまず前を向いて様子をうかがう。彼がボール保持をして前を向くことで、群馬はプレスに行くのではなくリトリートを選択する場面もあるなど、あえてボールを動かさないことで相手を後退させ、レノファの前進を導くような働きもしていました。
また、パスの選択はまず「タテ」。彼がタテにつけることもあれば、パスの受けた選手の次のパスの矢印を前向けさせるようなパスを送っていたように思えます。

パスの方向を見れば一目瞭然ですが、前方へのパスが突出しておりました。
相田が守備のタスクを多く担う一方で、池上はプレスに来る群馬をいなす役割をし、チームの矢印を前に向ける役割を担っていたように思えます。形は違えど2点目、3点目ともに起点としては彼の前へのボールからでした。

特に2点目については秀逸であったと思います。後半に入り群馬はRSH佐藤が逆サイドにも顔を出すようになり、よりレノファの「4‐4」の間を意識したようなプレーを増やし、チームとして出力を上げてレノファゴールへ迫ってきていました。

そんな時間帯に、相手のミスを見逃さなかった若月がワンタッチで池上へつけ、池上は再度若月へ浮き球でボールを届けました。

この場面は若月がボールを池上につけるくらいですでに反対サイドの河野はスプリントを始めていました。また、池上が若月にタテへのパスを出したところで吉岡も自身の矢印を前に向けました。

ここで安易にクリアだったり、ボールを保持して時間を作るプレーをしていればこの得点は生まれなかったでしょう。群馬がミスがらみなこともあり、守備陣形が整っていないのをしっかり見ていた選手たちが、矢印を相手ゴールへ向けたことで、偶然はあったものの隙をしっかりついた得点になったのだと考えます。


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3)『些細なことなんてないんだよ』

この試合のレノファはしたたかに試合を進められたと思います。ボール保持率は38%対62%と大きく差は開けられているものの、ほぼ多くの時間は相手にボールを持たせているような時間であったと思います。

4-4-2のミドルゾーンブロックから、4-3-3への可変。そこを群馬が付いてきても後ろの微調整で修正。後半開始から吉岡の起用で右サイドを再調整。

後半15分過ぎにあたりに前線のプレス強度が落ちてきたところですかさず若月⇒山本で強度を持ち直させ、交代直後に3点目をあげこの試合を決めてみせました。

大槻監督は試合後インタビューで『些細なことなんてないんだよと言った』とおっしゃっていました。

結果論ではありますがまず群馬は2失点目のスローインのミスは前半28分に一度やってしまっており、後半勢いをもって攻撃を仕掛けていた矢先、再び同じミスをしてしまったところで生まれたものでした。大槻監督は「もったいないことをした」「自分たちで手放してしまった」というような言葉を使われていました。

2失点目、3失点目の群馬のネガティブトランジションは、レノファのポジティブトランジションに比べると見劣りのするものであったかなと思います。決して手を抜いているようには見えませんでしたが、一歩目の速さであったり、球際の強度のようなところで、上回ったのがレノファだったように思えます。


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4失点目についてもジュニーニョ、五十嵐がネガティブトランジションでボールを即時奪還し、五十嵐がボールを持ち運んだところから生まれた一連の流れから生まれたセットプレーでの点でした。ボールを失ったところでも切り替えは遅く、試合最終盤で3点差、ある程度気持ちが切れてしまっていたようにも見えました。

 

視点をレノファに戻すと、この群馬のミスであったりアクシデンタルなボールの動きに対してもレノファの選手は強度と精度を落とすことなくプレーできていました。

当たり前のことを当たり前にやる。サッカーに限らず実生活や仕事でも「わかっているけど結局できない」ということは、そこそこあるかと思います。この試合ではこの集中力であったり、志垣監督がよくボードに書いているアラートをきらさないプレーの結果がこの試合の結果になったのかなと思います。

 

前線の選手は数字を残してなんぼですから、献身的にプレーすることはもちろんですが、ゴールに絡め、勝点3を取れる選手になっていってほしい。彼らだけではなく、今日メンバー外になった選手も悪くて外しているわけではなく、18人を選ぶにもスタッフで活発な議論ができるくらい迷います。(引用元:レノファ公式)

とあるように練習から切磋琢磨、ひいてはそれが志垣監督やコーチ陣が求めている強度ということと想像できます。まずこの強度を出せたメンバーが18人の試合のメンバーに入ることができているのかと思います。

このチーム内競争を勝ち取るボーダーラインが、相手チームを上回るラインにもなっており、言ってみればこれが今年のレノファの最低限、スタートライン。このラインを超えているからこそ、相手を上回るプレーをしてくれるし、僕らも「今年のレノファは違うぞ!」と実感するようにもなっているんだなと、教えてもらったような一戦でありました。

 

これで第2タームは勝ち点7となりました。残り2戦でどこまで勝ち点を伸ばせるでしょうか。なんクロでも話してましたが、いい状態で1万人プロジェクト第2弾を迎えたいですね。

もしろん3連勝で第2タームを終えることが一番ですし、それを期待できる内容であったと思います。次節水戸戦は僕は東京PVから声を届けたいと思います。勝ちましょう!!

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(※文中敬称略)

[お写真:トリバンさんよりいただきました @jtki2004]

 

 

さて、今節のトピックスはやはり河野・五十嵐のアベックゴールでしょうか。アベックゴールってなんやねん、って話ではあるんですが、
なかなかゴールを決めれなかった河野孝汰に、ちょっとくすぶってそうだった五十嵐君。

4点目を取ったときの五十嵐君の顔であったりベンチ前で出迎えた孝汰の喜びようなどチームとしても何かまた一つ上にあがって行けそうな雰囲気になったように思えました。

梅木にもゴールが生まれるなど取るべき人が取る、こういうフェーズにシーズン中盤にかけてなっていくのは、例年のようにこのあたりからずるずると順位を下げがちなレノファには好材料に思えます。

ただ、好事魔多しということばもありますし4-0で勝とうがまだ15位までは勝ち点3差ですので、油断せずに水戸・鹿児島を乗り切ってもらいたいですね。


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