レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

「勝ちます」に込められた悔しさ、難しさを考える レノファ山口vsファジアーノ岡山@維新S 2023年10月22日

pride of 中四国】今節は隣県の岡山さんとの試合ということもあり、今季最多の6500人を超える観客だったとのこと。

僭越ながら僕自身も公式のイベントとしてトークイベントもさせていただくなど、とても珍しい体験をさせていただきました。この場をもって関係者の皆様には感謝いたします。ありがとうございました!

 

さて試合は2-2の引き分け。勝ち点1を最後の最後でもぎ取りました。ただ、内容はというとだいぶ厳しいものだったと思います。

今回のブログを書くにあたって、前提としてエスナイデル監督と池上の言葉をまず確認します。

 

エスナイデル監督

フィジカル的に戦ってしまうと相手が有利ですので、なるべくそうならないように、ボールを持った時にもっとつなぎ、なるべく相手に渡さずに持つことが大事です。

池上

−中盤でボールを持てなかった要因はどう考えているか?受ける時は意外とフリーだったということはありますが、相手は結構空けてからプレッシャーに来ている感じがあり、出し手も受け手もそこを感じていたところがありました。前半が終わってから監督からも、もっと真ん中でたくさん受けてリズムを作ってほしいという話はありました。(引用元:レノファ公式

 

エスナイデル監督の別の談話で「逆転されてからしか狙いが出せなかった」とも残しており、ほぼ岡山ペースだったことを認めています。

レノファニスタでも前貴之が「しっかりした保持から相手を揺さぶる」という監督の狙いについて言及があり、池上にもハーフタイムに上記の指示があったようで、レノファはつないで岡山のプレスをかわす狙いがあったことがわかります。プレビュー記事にも書かせていただきましたが、岡山のペースに併せてサッカーをしてしまうと、フィジカル的に優位に立つ岡山のペースになってしまいます。

そのため自分たちの保持の時間を増やすことで、岡山のペースに付き合わないことを模索したのではないかと思います。

正直スタジアムでの観戦時も、DAZNでの見直し時でも今節はその方法を岡山相手に敢えて選ばずにロングボールに打開策を求めていたように見えました。ただ、実際は狙いとして繋ぐことは持っていたと。。。

となると、それだけ岡山さんのプレスに対して屈してしまったという見方のほうがこの試合を読み解くのは適切と思います。そして池上のヒーローインタビューで悔しそうな顔で「(次節)勝ちます」と残した言葉も、得点後のセレブレーションを放棄したような仕草も、この試合の難しさ、次節同じ轍を踏まないという決意などが表れていたように思います。

 

この試合は確かに岡山の試合ではありました。しかし、うまくいかないながらに岡山の泣き所である<先制点>を取り、一定以上の出力を岡山に出させることを強いた。逆転は許したものの、最後の最後で岡山の綻びを突いてFKをもぎ取り、10番がこれをねじ込むところまではレノファは持っていきました。

木山監督の「しっかり勝つのは簡単ではない」という言葉を出せるほど、レノファはしぶとく残留争いをしていく意地を見せてくれたと個人的には感じています。

では、前振りが長くなりましたが今節は下記について振り返っていきたいと思います。

 

【得点者】

山口         岡山

28分  梅木     61分 ムーク

90+7分 池上       84分 坂本

 

レノファ山口

・3-4-1-2のツートップを採用。

・出場停止のヘナンのLCBには前を移動させ、平瀬をRCBに起用。

 

ファジアーノ岡山

・チアゴアウベスの相棒は前節に続きムーク

・IHは田部井に代わり復帰の田中、LWBも高橋ではなく高木を起用

 

  1. ハイプレスをかける岡山とミドルゾーンで構えることもしていたレノファ
  2. 定まらなかったプレスに出て行った後のスペース。
  3. ルカオに壊された最終ライン
  4. 4-1-4-1への変更と最後の足掻き

 

・ハイプレスをかける岡山とミドルゾーンで構えることもしていたレノファ

プレビュー記事に出させていただきましたが、レノファと岡山は志向するサッカーは似ていることを挙げさせていただきました。

基本は【相手陣でプレーをする】こと。上述した通り岡山のほうにフィジカル的優位はあるので、あまりそのハイテンションのサッカーにせてしまうのは危険ということも書かせていただきました。

岡山はやはり予想通りのハイプレス。レノファが後ろを2枚ぎみにすればツートップ、3枚ぎみにすれば主にIH田中がLCB前のところへ上がるといった形。ダブルボランチのコースを消して外循環を促すような形をとってきました。

これに対して、繰り返しになりますが、レノファは本来であればつなぐ意図は持っていたようですが、実際にはロングボールを選択していました。

 

確かに9:30あたりでボムヨンのボール保持に対して、チアゴ・ムークのツートップがアンカーの位置を取っていた成岡を消しながらも平瀬・前をけん制しているシーン。

池上はこの「2」の脇を取るように降りてきたり(ここは仙波が対応)、成岡が背後の輪笠を確認しながらも足元へのボールを要求していましたが、ボムヨンが選んだのはロングキックでした。もちろん成岡は不満を表していました。

 

また、21分左サイドのスローインの流れから。成岡が素早くボムヨンへつなぐことで、スライドが間に合わず矢島が「2」の脇を取りました。平瀬を前線へ上げてその平瀬へ。高橋とのワンツーで右サイドの深い位置まで行くことができました。

おそらく狙いとしてはこういうものだったのだと思います。

レノファの最終ラインが3枚と相手ツートップに対して数的優位を取れますが、岡山はマンマークではなくある程度守備時も中間ポジションを取っており、IHを1人上げ気味にしマークに当てるなどしていました。

レノファの最終ライン3枚&ダブルボランチ+矢島の6人に対して、岡山はツートップ&中盤3枚で抑えてしまっており、この数的優位を生かすことができませんでした。

そのため、おそらく次の策として用意していたロングボールを多用することになったのだと思います。矢島はこの辺りの後ろの状況を早いうちに読んでいたのか、ロングボール対応のポジションをササっと取っていました。

 

で、その中身ですが、3-4-1-2の形は梅木ージュニーニョで組んでいたこともあり、付け焼き刃感はなくある程度は効果は出ていたかと思います。

変更点はあえて皆川は真ん中に鎮座させる形。ジュニーニョと梅木はどちらも走れるため、背後に走ることやお互いの距離感で補完し合うように流動的な動きをしていましたが、今節はあえて皆川を柳のところに配置。梅木はある程度柳から離したところで競らせるなど微調整をしていました。

岡山のCB柳はロングボール対しては特に前に出て迎撃、落ちてポストプレーをする相手に対してもついていき、ポイントをつぶしに行きます。かなり積極的な守備をします。

そこに敢えて皆川をわかりやすく置くことで柳が皆川を放すことはできないので、梅木は多少空き気味になるうえ、岡山RCB本山やRWB末吉らミスマッチを作れるところでロングボールを呼び込んでいたのかなと思います。

また、ロングボールをを使う際はこの梅木や皆川の動きに併せてトップ下の矢島や量WBも落下点までの距離を詰めてセカンドボールをしっかりと意識しておりました。時にはそのままフリックで裏を狙うような動きもしておりました。

こういう動きなどもしっかり前半はやれていたので、レノファは短くつなぐというよりもロングボールの準備をしていたように見えました。プレスに出てくる岡山に対してその裏を使う。これはどのチームもやっていることでありましたし、それを実践したと後半開始直後の野寄の抜け出しも、幸運もありましたが、この出てくる岡山の裏を取った形でした。

 

本来はもう少しパスでいなすことを考えていたかと思いますが、二の手で用意をしていたロングボールであったり前線の体を張るようなもので、先制点のきっかけのスローインをとったり、皆川の巧みなポストプレーからの梅木のシュートなど本来の目的ではないものの点を取ることができたのは運もそうですが、多少蓄積したものがあったのかなと思いました。

 

・定まらなかったプレスに出て行った後のスペース。

また、今節のレノファはミドルゾーンで構えることと、ハイプレスをかけるところを使い分けていました。

先制点のシーンのようなゴールキックから岡山がつないできそうな場合はハイプレスを用意していましたが、そのほかのシーンでは即時奪回が難しいと判断すれば、相手にボールを渡しているようにも見えました。

多少怖い形ではありましたが、岡山のタテへ早い攻撃に対しても、言ってしまえば想定内の対応になるので、ボムヨンがぎりぎりのところでクリアをする。平瀬や前が裏の対応をするなど、ムークにあわやというシーンは作られはしましたが、これはこれで想定内であったのではないかと、DAZNで振り返って思いました。

しかし、厳しかったのが、エスナイデル監督の代名詞と言われているハイプレスにした時に誰かが空けた場所を埋められなかったところ。正直ここが今節のホントに難しいところだったと思います。

 

後半にもあるのですが、わかりやすいところで言うと前半40分。

レノファのクリアボールに対して、柳⇒堀田⇒鈴木とつないでここに池上がプレス。ここでエスナイデル監督も寄せるように手でジェスチャーを送っています。

しかし、後ろがミドルゾーンで構えることを選んでいるため間延びをしてしまっておりました。池上が空け、成岡の脇にムークが落ちることで鈴木からボールを引き出されてアタッキングサードへの侵入を許してしまいました。

また、22分のようにこの場面では野寄ですが、岡山が保持したボールに対してチェイスに行ったところでそこで交わされてしまうシーンなども散見されました。上記のハイプレス同様にリスクを冒して前に出て行っているため、そこで交わされてしまえば相手にスペースを与えてしまいます。

 

あまりセットして守ることが苦手なレノファはハイプレスで相手陣でプレーをすることでこの苦手なところをぼかしていましたが、残念ながらこの試合ではプレスに行った方が相手にスペースを与えるような結果となってしまっていました。

そしてこのような状態で登場してしまったのがルカオでした。

 

ルカオに壊された最終ライン

そして後半開始直後に投入されたルカオ。これもプレビューに書きましたが間違いなくレノファが苦手なタイプの選手。それがもろに発揮されてしまいました。

上述したように、前からプレスに行く方があまりよくなかったので、もうミドルゾーンで構えての展開が続くかなと思っていましたが、ルカオ投入で話が変わりました。

ルカオがサイドに流れるようにボールを納めたり、ゴリゴリとドリブルでゲインすることであったり、身長を活かしたポストプレーなどにてこずるレノファ。

そして立て続けに2項目で触れたプレスのまずさとルカオで決定機を2つ作られてしまいます。

まず55分のPKのシーン。岡山の44IH仙波が落ちたところに矢島がつき、LCB43鈴木に池上がプレス。多少岡山が詰まった感が出ましたが、ルカオが上記のムーク同様に成岡の脇をとらえました。

鈴木からそこへパスが通り、落ちる動きにマークにつくことができず、チアゴアウベスの裏へのスルーパスを許してしまいました。

 

また、同点を許してしまった60分はやはり柳に対して河野がプレスをかけましたが、RCB15本山に成岡がつくのが遅れ、IH14田中へパスだされてしまいました。

成岡が出て行ったところが空いていますので、田中はLCB15前の守備に対して中央に向けてターンをしてそのチェイスを外します。そして成岡がもしそこに入ればこのターンはなかったかもしれませんし、ルカオへのパスコースも防げていたかもしれません。

 

プレス後のスペースも問題ではありましたが、やはりルカオ自身のフィジカルにも屈してしまいました。58分のポストプレーもでしたが、まずレノファの選手がルカオに対して飛び込めない。その分ルカオには十分な時間を与えてしまい、失点を喫してしまいました。

2失点目についても前がヘナンだったとしてもどうだったかなというレベル。この時間レノファは並びを4-1-4-1に変更して割と岡山のWBを空けてでも中を締めていましたが、クリアボールからでしたがあっけなく彼のフィジカルで中を割られてしまい、レノファにとってはただの悪夢のような存在となっていました。

 

 

4-1-4-1への変更と最後の足掻き

ただ、冒頭で書いた通りこの84分の失点までに岡山にはだいぶ出力を出させていたと思います。84分以降岡山はそれまでのテンション通り、来ることはできませんでした。逆転したこともありましたが、やはりどこかでペースを落とさないといけなかったと思います。

上述した通り82分に大槻と五十嵐を入れることで4-1-4-1に並びを変えていました。岡山は相手の4バックのSBに対してはIHが出てきます。ここを動かすことでレノファのSHはその岡山のIHが出てきたところを位置取ることでそこをビルドアップの逃げ道にしたり、フレッシュな大槻を入れることで相手にファウルをもらうなど数少ないながらに糸口を探っていきました。

 

得点前のシーンはCF坂本が「欲が出た」と試合後インタビューでコメントしていた通り、単純に岡山側のミスではあったと思います。

ただ、レノファとしては上記のように五十嵐が何回かここでボールを受けていた流れからこの試合数少ないサイドチェンジからの展開。ボールを再度奪い返してから、最後は成岡や河野が絡み、前にチャレンジしてくる柳から大槻がファウルを獲得をしました。

今節はうまくいかない時間のほうが圧倒的に長かったです。自分たちが狙っていた形は出せずに、相手に固めていたものをこじ開けもされてしまいました。

ただ、なんとか最後多少なりとも形を出せた。そして勝ち点1を取った。数少ない収穫という形で残り3節に生かしてもらいたいと思います。

この数節中央を固められて外循環にされることで、攻撃が停滞をしぎみになっています。この2週間で準備したものは岡山相手にあまり出すことはできませんでした。ただ、最後の10分で見せた姿、結果はまた活きてくる場所があるのではないかと思います。

残り3節。大宮を気にするのではなく、勝ち点で並ぶ栃木・熊本よりも上を行く。池上のヒーローインタビューの最後の「勝ちます」というのは単に残留するという意味ではなく、自分たちがどこまで順位的にも内容的にも上に行けるかという決意の表れのように思えました。

下を気にするのではなく僕も上を見て当面の近い相手を出し抜いていくことを期待して応援していきたいと思います。

今回の記事で池上らが前に出たところがエラーになってしまったというようなことを書いていました。実際この試合はそこを突かれたのが痛かったのは確かだったと思います。ただ、やはり池上が前に出るということはそれだけリスクを冒してでもボールを取りに行くという前向きな姿勢であったと思います。

それはやはりこの試合への池上の思いが込められたプレーであったと思います。勝ち点3は得られませんでしたが、僕自身は池上の見せてくれたプレー・姿勢にはゴールの時と同じような大きな拍手を送りたいと思いました。

10番ありがとう。あと3節宜しくお願い致します。

 

 

参照元

FAGIGATE

レノファ公式

Jリーグ公式

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(※文中敬称略)