レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

それぞれのスタートライン。肝心なのはここから進むこと。レノファ山口vs大宮アルディージャ@維新S 2023年2月18日

2023年度シーズンが始まりました!

降格するもチームの核を残すことに成功したチーム、大量補強に成功したチーム。今シーズンはJ1のチームとの入れ替え戦はなく、3~6位のチームはプレーオフさえ勝ち抜けば昇格が決まります。例年以上に昇格枠の争いは激化しそうです。そのプレーオフに向けて目標を「トップ6」に設定した我らがレノファ山口。初戦は雨の中での1-0勝利!新加入組も多く出場し今シーズンはどういったチームになりそうなのか、期待や不安、興味に疑問と色々な感情がでたのではないでしょうか。開幕戦はそういうものですね。では、今節下記の3つについて考えていきたいと思います。

1)相手が前から来るなら。

2)新里の出てきたところを狙え。

3)良いプレーの連続と継続が課題。

 

得点者

レノファ山口】        【大宮アルディージャ】 

72分 矢島           なし

 

1)前から来るならその裏へ

この日レノファの並びは昨年度初期と同じ4ー3ー3。佐藤謙介をアンカーにIHには新戦力の矢島と五十嵐が入りました。CFには皆川、LWGに小林と攻撃的なポジションに新戦力の多くがベンチを含めてメンバー入りをしていた印象でした。

意外だったのは前、池上のベンチ外。youtubeに上がっている【inside match】には池上はいるものの、前の姿が見当たらない。両者ともに怪我なのか前のみ怪我なのかはわかりませんが、少ないながら驚きがありました。皆川の試合後インタビューにもある通り、数人の人選が変わったのだと思います。(Jリーグ公式より【公式】山口vs大宮の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2023年2月18日):Jリーグ.jp

対する大宮は4-4-2の布陣。解説の中島さんがおっしゃっていたように、相馬監督が率いていた時の町田のようなコンパクトな4-4-2の形をとっていました。

ツートップが佐藤を挟むように監視しボール保持をしたレノファのCBに片方がアタック。GK含めてCBへ両CFがプレスに行く際は8CH栗本が佐藤へつき、7CH小島が矢島と五十嵐を見るような形。矢島が落ちれば小島がついてきて、栗本は佐藤と五十嵐を見ていました。両サイドは大宮のSHとSBはそれぞれレノファのSBとSHを捕まえることで今季の大宮の志向する形を出してきました。15分過ぎくらいまではこれに面を喰らってしまったのか、レノファはボールを保持することができず防戦の展開に。時系列は多少後になりますが、20:50の沼田から小林に出たところでつぶされショートカウンターを受けたシーンが最たる例であったのかなと思います。

 

少しずつ流れが変わり始めたのが、16分~17分のあたり。3つの場面が挙げられるかと思います。

a)16:20 右サイドから左サイドバックの沼田へボールがわたり、多少プレスが遅れ気味になっていたところを、大宮のブロックの外からライン間に落ちた皆川へ楔のパス。

b)16:50 ヘナンのインターセプトから五十嵐がターンで栗本をかわし、イエローカードを出させる。

c)17:30 GK関がボールを保持していた場面。佐藤謙介がボールを受けに来るように落ちたところに栗本がつき、五十嵐と矢島はある程度距離感をもって位置するので、関は矢島がフリーなのを見逃さずミドルパス。大宮17LCB新里が矢島につきかけたところに皆川が裏抜け。矢島が皆川へ通して、小林、沼田とつないで最後は沼田のクロスからRSB高橋のヘディング。

 

ここで矢島と五十嵐の試合後インタビューから抜粋。(第1節 大宮アルディージャ | レノファ山口FC)

佐藤謙介選手との関係性で意識していることはあるか?

矢島  自分たちのビルドアップのときに、謙介くんがうまくポジションを取ったり、ポジションを変えたりしてくれています。自分が反応して動くことが一番大事で、そこから(五十嵐)太陽に当てる動きがもっともっと増えてくれば、もっと良くなると思っています。

 

ペナルティーエリアに入って行くシーンも多かった。どういうことを意識したか?

五十嵐  (矢島)慎也くんと(佐藤)謙介さんとのボランチの一角でしたが、慎也くんと謙介さんは落ちて受けられるので、自分は前で、よりゴールに近い位置でボールを受けることを意識して、ターンして前に展開することを意識していました。

 

とあるように、佐藤謙介の動きに合わせて佐藤→矢島→五十嵐といった中盤の3人の縦関係が見えてきます。矢島は13分のところの沼田と小林で左サイドを突破したところもそうでしたが、あえて落ちてもらいすぎないことを意識していたと思います。開幕前の雑感ブログで触れたダブルボランチのような形のほうが、と書きましたがこの試合ではそうはならず。この試合に関していうと雨というコンディションもあってか、前から来る相手に対しては丁寧につなぐというよりは相手の2列目を飛ばして、3列目とのライン間へボールを送ることや、大宮のハイラインの裏へのロングボールを選択したように思えます。個人的にはこれでOKと思いました。つなぐことが目的ではなく、ゴールに迫る・奪うことが目的なので、コンビネーションはこれからという段階ですし、より早く前線へ届けられるのなら今節はこれが好ましい形だったのかと思います。

現に、上記で挙げたaとcについては出てきた相手をいなすことができていましたし、bのように個での突破もできるなど大宮に対して、レノファこういうこともできるよ、と提示ができたと思います。

 

2)新里の出てきたところを狙え

そして今季もレノファの攻撃の軸となりそうなのが左サイド。前半戦の攻撃傾向については50%を超えていました。沼田と小林の関係性。矢島のかかわりや小林単独の突破など、去年とはまた違った形で攻撃陣を引っ張って行ってくれそうです。そしてここでキーになっていたと思うのが、小林と岡庭のマッチアップ。上述した20分の自陣で岡庭にボールを奪われた場面はあったものの、13分の矢島のワンタッチのパスで岡庭の背後をとるところや、ドリブルでの仕掛けをするところなど、概ね試合を通して小林に軍配が上がっていました。

するとそこをケアするために大宮RCB新里が自分の位置をずらしてきます。ハイラインを敷いているため、大宮のボランチの裏のスペース管理などもあるため、前に出てくる傾向もありました。例えば1分の皆川の裏抜けのところのラインのずれ、25分あたりからの五十嵐と矢島のポジションチェンジなど、レノファが新里の周りへ人を送り込もうとしていたことがうかがえます。

そして29分に生駒→ヘナンとサイドを変える中、沼田が五十嵐へインサイドへの位置取りを促し、ヘナン→沼田→五十嵐とつなぎ、五十嵐が体を入れて、いれかわるように前へ行ったところでファウル。おそらく異議でのイエローカードだったと思いますが、揺さぶりをかけていきます。

そしてゴールシーンについても相手に押し込まれたところから、皆川についた新里、小林についていた岡庭に対して、皆川のポストプレー→矢島がワンタッチで岡庭・新里の裏へスルーパス→小林がスピードを生かしてペナルティエリア侵入。反対サイドの吉岡もエリア内へ入ったところでのこぼれ球を矢島が仕留めたものでした。

後半に入ってから徐々に右サイドで形が作れてきました。左サイドで脅威を与えることで大宮が陣形をレノファの左サイドへ圧縮してきたところを、サイドチェンジで吉岡や高橋を使うといった去年からの試みの継続したものが出せるようになりました。

3)良いプレーの連続と継続

守備の場面にも多少触れておこうと思います。

レノファの基本陣形としては守備時は4-5-1、4-1-4-1のようにも見えるような形でハイラインというよりは、ミドルゾーンで大宮からボールを奪いたいという意図があったのかなと思います。

ワントップの皆川がコースを制限し、セカンドラインの5人でそれぞれのテリトリーに入ってきたボールホルダーに対してアタックをかけていきます。ボールホルダーに対してのファーストディフェンダーがはっきりして、プレスが連動する代わりに、出て行った選手のスペースもケアすることが求められます。

ちょっとまずかったシーンとしては10分のところ。大宮RCB新里へボールが渡ったところでLWG小林が新里へプレス。矢島は小林の位置も埋められるところ移動。大宮CH栗本小島にたいしては、佐藤・五十嵐が付きます。大宮が様子をうかがうようなパス交換をしたところで一気に彼らがプレスをかけて奪いかけますが、大宮LCB袴田のところへ吉岡が若干遅れ、そのまま中に絞っていた49LSH大津に通され48RSH柴山から決定機を作られてしまいました。(61分のシーンは狙い通りだったと思います)

また、オープンな展開になった最終盤については、大宮19アンジェロッティがアンカー脇を意識してボールを受けるようになったこともあり、セカンドラインが混乱したようなポジション取りになってしまいました。

上述のシーンのように自分たちの形は出せどもひっくり返されることや、形さえも取れなくなったときに、上位に来るチームはこのほころびは見逃してくれないでしょう。最終ラインが踏ん張ってくれたものの、ここは今後は要改善になってくるのかと思います。

また、一人一人のプレー精度も皆川がいうように上げていくことが必要になってきます。良いプレーを見せていた五十嵐についても、フロンターレサポーター兼任の身としてはよりレベルアップをしてほしいので、揚げ足をとるようなことをいうのですが、、、

前を向いてゴールに迫るところまではできていたと思います。ただ、ゴール前での精度については今後の伸びしろかと思います。最終盤にドリブルで仕掛けてそれを取られたところからのロングカウンターを受けてしまったところも、プレー選択としてどうだったのか。また67分のようなアンジェロッティに対して良いプレスバックを見せましたが、取り切るに至らず大宮の2次攻撃を受けてしまいました。彼の先輩の脇坂泰斗やフロンターレで求められる水準を考えるとこのようなプレー強度も上げていく必要があります。

と書いたものの、FKから相手がもたついたところを相手の背後をとり佐藤謙介からボールを引き出すところ、ボールを受けるのを怖がらず前を向く姿勢などリーグ戦初出場の選手としては、とても好印象であったのは間違いないです。

矢島も同様のプレーをしていましたが、IHがサイドに開いてSBかの縦パスをうけ、ウイングに落とす。ウイングから中央やもう一人のIHがさらに裏へ抜けるなど、サイドで3人以上の人間がワンタッチでの連携をし、裏をとっていく形も周りと連動できていたいと思います。(五十嵐くん1年間レノファをよろしくお願いします。)

 

上記のような個人の課題、連携の精度があがることや、去年から棚上げの右サイドのビルドアップをどのようにしてチームに組み込むかなど、よかったところ・改善をしていくところが洗い出せた開幕戦だったかなと思います。リアルタイムで見ていた時は交代策遅くないか?と思いましたが、見直していると何となくどこまで引っ張れるか(特に五十嵐、皆川)を名塚監督が見極めているようにも思えました。

そこで勝ち点3が取れたこと。これが最低限であるものの、まずはトップ6へ向けての立派な成果であったと思います。

 

さて、名塚監督の言っていた「新しいチャレンジ」はご本人がおっしゃったように、僕たちは見ることができませんでしたが、実況の方から「生駒選手によると押し込んでいるときの立ち位置」ということでした。どんな形なんでしょうか。その形で得点が生まれ、維新2連勝を期待したいと思います。

スタメン組の今節試合に絡めなかったメンバーの底上げなど1年間楽しみですね。

ここまで読んでいいただきありがとうございます。

(※文中敬称略)