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さあ、次の進化は? レノファ山口vsいわきFC@維新S 2023年7月15日

けっこうハラハラの試合でした。

ここまで5試合連続クリーンシートと守備が安定してきている山口。5試合で11得点をとっていたいわきと矛盾対決みたいなことまで言われて、何か自分の知らない世界線にでも来てしまったかのような試合前の盛り上がりでした。

ただ、割としっかり現実というか自分たちの立ち位置的なものを再認識させてくれたのが、いわきの監督田村さんのアライバルインタビュー。

「監督さんが変わって守備の修正がされているが、僕の中では山口はいつでも攻撃的なチーム」

とおっしゃっていました。

この試合スコアレスドローとなり、6試合連続で無失点。否が応でも記録となっている7試合連続無失点を意識するようになると思います。

参照元Digital Data Book

現に、監督インタビューは守備における質問がかなり多くなっています。(第26節 いわき | レノファ山口FC

無失点でいれば勝ち点1は必ずとれる。とても大事。しかし、得点を取らなければ勝ち点3は取れない。守備に目が行きがちではありますが。

今後は無失点記録は気にはなりますが、どうやって得点を取っていくのか。渡部社長のエスナイデル監督就任時におっしゃっていた

『コンパクトな守備の構築と複数得点の期待ができるという点で(エスナイデル監督を)選定いたしました。』

次は<(複数)得点をとる>というものにフォーカスするフェーズに入ったのかなと思わされる一戦だったかなと思います。

前置き長くなりましたが、今回は下記について考えていきたいと思います。

 

1)いわきのシステム変更から変えられなかった流れ。

2)『ボールを奪い直したら、なるべくそのあとは〜』と伝えている。

3)田中⇒小林の交代について考える。

【得点者】
山口          いわき 

なし          なし

 

1)いわきのシステム変更から変えられなかった流れ。

では試合の経過を追っていきます。

レノファいつもの通り4-3-3。怪我の河野に代わり久しぶりに皆川がCFへ。ヘナンは長崎戦欠場でしたが、怪我とかではなかったようで元気に先発フル出場。前はRSBへ、高橋はRWGへ入りました。

対するいわきは監督交代もあり、フォーメーション4-1-4-1となっておりました。序盤試合を動かしていたのはレノファ。

いわきの4-1-4-1にあわせてそれぞれ「1」の部分を意識したような形。

いわきの並びの関係もあり、今節は神垣が落ちてビルドアップに参加する形ではなく、むしろ底の位置にいることでいわきを宮本・山下らを引いているような位置取りでした。そして、前半目立ったのが前に来るいわきに対して、GK寺門のRSB前やLSB沼田へ相手の頭上を通すようなパスを通していたことが挙げられます。

前節からセカンドキーパーに関が入っており、彼が復帰すれば仙台戦のようにファーストキーパーになるかと思いましたが、変わらず寺門が起用されています。

関は何度もスーパーセーブでレノファに勝点をもたらしてくれましたが、エスナイデルさんが寺門を買っているのはこのSBへの飛ばすパスなど含めてキックの精度で選出をしているのかなと感じます。もちろん6試合無失点中の試合でも5試合を寺門が門番を務めているので、単純なキックだけでなくシュートストップなどにも信頼をおいていると思います。後半のCKの目測誤りなどは伸び代でしょう。マリノスさん借りパクさせてください。

 

いわきCF18吉沢が詰めてもCB2人もそこまでプレッシャーはかかっていないので彼ら自身でボールをさばけることもあり、いわきの次の「1」であるアンカー脇で待つ五十嵐と矢島へボールが届けられていく展開でした。

4分にヘナンが相手ロングボールをヘディングで五十嵐へ。そこから矢島→高橋へ展開。

6分には自陣深いところから沼田→田中とつなぎ、いわきがプレスに来たところを矢島がいわき33下田の背中を取って田中からのパスを納めます。皆川につられたCB陣を横目に五十嵐がいわきの裏をとって決定機。ここはドリブルを多少ミスしてしまい、もったいなかったですが、狙った形が出ていたと思います。

そして9分の寺門からRSB前へのパスを皮切りに14分には2回右に左に蹴り分け、沼田→五十嵐→矢島→高橋→前がクロスという相手のプレスを回避して見せました。

このあたりからいわきはあまりプレスに行きすぎないようにやり方を変更。4-4-2気味にし始めました。ただ、プレスに行かなければ今度はレノファは規制がかかっていないので別のコースも見つけ始め20分にはこの試合初めて?皆川がポストプレーを成功させ、矢島へボールを落とし、そこから高橋を走らせていわきのゴールへ迫るシーンを作りました。

ただここで飲水タイム。別名作戦タイムですかね。このあたりからいわきはちょっと形を変えてきました。

28分の所である程度形として見えていましたが、24山下が場所の微調整役に。ダブルボランチのように33下田と並んだり、時には20永井、6宮本らと並ぶようにレノファの選手を捕まえるようにしたりと、マイナーチェンジを施してきました。4-2-3-1の並びに。

そしてこのあたりから多少レノファにバタつきがでてきます。ボールをキープしてても急ぎすぎてしまいボールを相手に渡してしまったりと精度を欠くプレーが増えてきます。

 

このような攻守が変わる局面が増えることをいわきはお得意としてます。フィジカルに長けているいわきとしてはこのようなトランジション勝負に持ち込むことで彼らの土俵に持っていけるわけです。

いわきは特にボール支配率をあげたい、というチームではないので試合のどこかではこのような時間はあるにせよ、この夏場のコンディション下で後半ほぼすべてこのテンションで試合がすすんでしまったことはレノファにとっては誤算でした。

特に後半はエスナイデル監督が認めていたように疲れもあり、より一層ボールの保持が大変な状況になってしまい、ロングボールというかクリアで一旦終わらせるような形になり、仙台戦でレノファが見せた姿と逆のものが出てきてしまいました。

 

 

2)『ボールを奪い直したら、なるべくそのあとは〜』と伝えている。

ちょっと試合から話を外します。

『ボールを奪い直したら、なるべくそのあとはボールを失わないようにしましょう』と伝えている。

もうさすがに説明不要かなと思いますが、エスナイデル語録ですね。

試合中にもツイートしましたが、結構この言葉がしっくりくる試合であったかなと思います。

試合後インタビューでも沼田が

ボールを奪ったあとに、今まではすごくボールを大事にしていたけど、今日はその最初のパスがズレることが多かった。本当にシンプルなパスミス、シンプルなトラップミス、そういうのがちょっとチームとして重なってしまった試合だった

(引用元:【公式】山口vsいわきの試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2023年7月15日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)

と残している通り、前半は総じてミスがらみで相手へ流れを渡してしまっていたように思えます。

 

とても示唆的だったのが山形戦のエスナイデル監督の試合前コメント

-「もう少し落ち着いたプレー」を求めているということだが、ボールが落ち着かないのは縦に急ぎすぎているからなのか?

自分たちがボールを奪ったときに早く失ってしまうことが多いという印象です。
ボールをロストしてしまうとまた走らないといけない。そこが繰り返されると、体力がなくなってしまう。選手に要求しているのは、ボールを奪い直したら、なるべくそのあとはボールを失わないようにしましょうということです。奪い直した時に連動できれば、生産的なプレーができると思っています。

と、あるように、要求していることが達成できなければ、この試合のような現象になることを先々週の時点で仰っていました。

うまくいかなかった要因について監督の考えが選手にも行き届いていることも感じるので、これはこれで良いことかなと思います。

 

3)田中⇒小林の交代について考える。

で、試合に話をもどして今節で対応が難しかったところの1つにいわきの交代策があったと思います。チームのトップスコアラーがベンチにいるということで、後半から調子を上げてくるようなところがあったように思えます。

そして後半からいわきは有田をワントップにしトップスコアラーである岩淵を投入。プレスの圧を更にあげてきました。前半レノファが狙ったのと同様にアンカーの神垣の横への侵入など策を講じてきました。

それに対してレノファは確かにゴールを決められててもおかしくないような場面は作られてはいましたが、佐藤謙介を投入してからの4-4-2の形を引いてからは割りと押し返せていたと思います。後半キーとなったのは小林。

 

千葉の時はよく知らないですが、今現在のレギュレーションは5人交代ということもあり、どの試合もまず早い段階で前線の選手を交代させることをエスナイデル監督はやられます。狙いとして、前線の選手をフレッシュにすることで前から行けるようにしたい、チームにそういうメッセージを送りたい、というのがあるのかなと僕は解釈しています。

 

守備が良くなっていることもあり、わかりやすく先行逃げ切りのようなチームになっているレノファ。

今節のいわきや藤枝戦も多少ありましたが、バシッと嵌められた時に打開策が今後は必要になってきます。

この打開策についてある程度マンパワーで何とかしたい。というのがあったと思います。その交代が11田中から28小林だったと思います。

今回の小林の交代はハーフタイムでどのようなやりとりがあったかはわかりませんが、小林の位置で起点を作りたいというのがあったのかなと思います。

 

・チャンスメークして得点に絡むプレーを増やそうと思って試合に入りました。

・サイドで使われていますが、仕掛けてクロス、アシスト、得点というところは求められていると思います。

・もっと仕掛けろとは言われました。

と小林自身が残しているように、後半の試合展開はともかく、後半を迎えるにあたって狙いとしては小林を使いたかったことがわかると思います。

この4-4-2への変更後小林周辺で起こったことは、神垣が裏へ抜ける動きなどを加えた。吉岡が近い位置でのプレーをした。佐藤謙介がボレーなど織り交ぜつつボールを散らす作業をしていたことが挙げられます。

それまでは矢島や五十嵐の頭の上を超えるようなボールばかりになり、彼ら2人は走ることしか後半はできませんでした。ただ、大槻と吉岡が並ぶことで多少いわきのうしろからのボールへの制限ができるようになり、レノファが自陣にずっとおし込まれるような展開が少なくなっていきました。

 

85分のあわやPKのシーンももともとは佐藤謙介が左にワンタッチでふったところから、神垣のランニングが交えてのものでした。

それまでの形であれば、神垣がふって矢島が裏へ抜け戻したところに田中がクロス、という場面はこれまでの試合ではありましたが、この試合ではこの形がほぼ出せず。ようやくでた場面が後半40分。苦戦を物語っていたかなと思います。

 

では今後も嵌められてしまったときはどうするのか。

名塚さんの時は詰まったときに、吉岡へ裏抜けるようなパスを送るというのがあったかと思います。72分には前が吉岡を走らせ、73分には寺門がロングボールを高橋に送るも、このキックに対してもっと奥へ蹴るようなジェスチャーエスナイデルさんからでていました。

藤枝の須藤監督の談話にもありましたが、相手陣の深い位置でのスローインは、マイボール相手ボール関係なく押し込んだ状態からのプレー再開になるので、レノファとしてはそれこそ自分たちのゴールから遠い位置でのプレーになるのでリスクも減りますし、チャンスも増えます。なのでエスナイデル監督もこのような形を狙ったのかもしれません。

 

先程マンパワーという言葉を使いましたが、終盤に小林や吉岡といったボールを運べる、相手をドリブルで抜ける選手であったり、高橋のようにフィジカルで問題を解決できる選手をこのような深い位置でプレーさせることで、陣地の挽回などを狙っていくのかなと思います。

ただ、エスナイデル監督が強く指示を出していたこともあり、もう少し違った手段を考えてくるのかなと思います。

あくまで前提は相手陣の高い位置でボールを奪い得点をする。相手陣でプレーすることによって失点リスクを減らす。このことがエスナイデル監督の目指すところであるので、同じようなフィジカルを重視したサッカーの秋田が次戦というのはなかなか粋なめぐり合わせではないかなと思います。

 

天皇杯は敗退してしまったので、ミッドウィークに試合がないのはリカバリーをする上では不幸中の幸いでしょうか。新外国人選手の獲得も発表されました。CFではなくLWGで使うのかな〜くらいで考えていますが、さあどうなるでしょうか。

週末を楽しみに待ちたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(文中敬称略)