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LWBの起用に見る苦悩と結果 レノファ山口vsヴァンフォーレ甲府@維新 2023年8月26日

レノファのyoutube公式に上がっていたInside matchの試合後の選手たちの様子に前、河野両選手が「すみません!」という姿。

それぞれ前は1失点目、2失点目ともに三平に競り負け、マークを外され、と失点に絡んでしまい、河野は得点を決めたもののその後2本の決定機をものにできませんでした。

ただ、それでも前はチームのために体を張って守り、ボール保持に貢献し、河野も最後まで甲府のゴールを脅かし続けました。

試合内容も悪くなかっただけに、最終盤の劇的な展開は2人の気持ちもレノファの停滞しぎみの雰囲気含めて、明るく照らすものになったように思います。

もちろんただ1勝をしただけですし、エスナイデル監督がいうように必要以上に苦しんでしまった試合でもあったかと思います。

では、この試合下記について考えていきたいと思います。

 

1)佐藤謙介をあける形のビルドアップと前線を繋ぐ矢島

2)3人の選手が起用されたLWB

 

【得点者】

山口          甲府

5分   河野       31分 中村

54分 池上       62分 三平

90分 五十嵐

 

1)佐藤謙介をあける形のビルドアップと前線を繋ぐ矢島

今節もレノファは5‐3‐2。中盤の3の部分はアンカーに佐藤謙介、IHに矢島と池上が入りました。またWBには右に吉岡、左に沼田が入りました。まだ高橋が戻っていないようですし、神垣が今節ベンチ外になりましたが、徐々にけが人やコロナ明けの選手たちが戻り、ようやくエスナイデルレノファでスカッドがそろい、ここからスタメンが固まっていくのかなという印象を受けました。

対する甲府は4-2-3-1のフォーメーションで、ワントップにクリスティアーノ、トップ下に三平を置きました。

 

まずはレノファの保持時の並び。

甲府はトップ下の三平がまずアンカー佐藤を見つつ、クリスティアーノが誘導したボールに対して出ていく形でした。甲府のダブルボランチはIH(矢島、池上)を見て、SHはWB(吉岡、沼田)を見つつもサイドのCB(平瀬、ボムヨン)のところへ付きにきます。

例えば13:35のところ。15前がボールを保持をしたところから。

この時点では三平は佐藤についていますが、前が多少持ち運ぶ様子を見せたところで三平はここについていきます。三平が出てきたこともあり、前は平瀬へ。平瀬→関と繋いで落ちてきた沼田へ関がミドルパス

沼田へ鳥海や松田が付きに来ますが、佐藤謙介のところはフリー。三平が前や平瀬のところへ出ていったところで、甲府はここを外しておりレノファとしては一番展開が上手い選手をフリーにさせることをこの試合割と成功していました。

名塚さんの時にはシステムを可変させるために最終ラインへ落ちるなど佐藤謙介の位置を動かすことを選択していましたが、この試合通じて彼はほぼアンカーポジションを逸脱することなくプレーをしていたように思えます。

攻撃でタクトを揮ったと思えば、三平やクリスティアーノへのパスをスライディングでカットする姿など中央部を締める守備も見られました。もともと運動量が多くない佐藤謙介を必要以上に動かすよりも、最大限の力を発揮してもらうために、周りやボールを動かすことで、中央の大事な位置で君臨してもらうのが最適解のように思えます。

話を戻します。

レノファの中盤3人に対して甲府はダブルボランチの中村・林田にトップ下の三平で対応していたので、システムのかみ合わせ的に三平が佐藤を離したら佐藤は空いてきます。

また、ミドルゾーンでのことですが、15:30のように三平が佐藤のコースを切っているところで矢島が佐藤の脇のところまでおりてきます。甲府ボランチが付ききれないところへ来ることでフリーに。そのままの流れでボールを下がって受けそうな素振りを見せ、スルスルと前線へ上がっていき沼田からのアーリークロスを頭で合わせた場面がありました。

中盤の佐藤、矢島、池上は甲府の中盤に対してどこが空いているのかを見つつショートパスを繋ぐように見せ、相手を引き出しておいて、DF陣は彼らを飛ばしてロングボールを使って前線へボールを送るという選択がうまくできていたと思います。

その中心にいたのが矢島。15分のように降りてくることもありましたが、どちらかというと今節はDFラインや中盤と前線のCF2人を繋ぐような役割。先程の佐藤謙介の脇を使うこともあれば、相手ボランチの脇や裏でボールを受けてジュニーニョや河野へ繋ぐ役割。

また、1得点目のようにCFが競ったボールを受けて、サイドへ展開するシーンも散見され、19分にも裏抜けを狙ったかと思えば、ボランチの裏でボールを引き出すなどチームの潤滑油として機能していました。ボールタッチ数はチーム2位。佐藤謙介との関わり、河野との関わりの矢印を見ると前後をつないでいたことがわかります。

sporteria.jp

話が重複し気味になりますが、やはりそれはまず三平らが入れる守備のプレスのスイッチに対して、レノファの後ろの選手たちが繋ぐのかロングボールを蹴るのかをしっかり選択でき、前線の選手もその展開をプレー選択を汲み取ることで裏抜けであったり、競ったボールのセカンドボールを狙うなど、チームでのプレーの意思疎通が以前の試合に比べてできていたと思います。

 

ただ、そういうことができても簡単に勝たせてくれないのが上位チーム。

レノファのボール非保持のところを振り返ってみます。

前半、甲府のストロングになっていたのがRSBの松田だったと思います。10分あたりから甲府の左サイドでキープし、松田が上がるスペースと時間を作ってからの展開。

松田がボールを受けるとレノファがスライドをしますが、ここに寄せることが間に合わない。また、沼田が松田に付く場合、佐藤がRSH鳥飼を捕まえることになり、その裏を2度ほど三平に使われ、11分のような決定機を迎えてしまいました。

この甲府の形についてはレノファは微調整。16分は矢島がここをカバーし、おそらく17分に2度甲府が出したいけど出せないような仕草を見せていたので、ここは解説の中島さんがおっしゃっていたCB前が佐藤謙介の裏に位置どった三平に対してCBの位置を捨てマークに付いたと思われます。

ただ、やはり上位チーム。ACLを睨んで補強をしたこともあり、地力は確かな甲府

1失点目2失点目ともにCB前と三平のミスマッチではないですが、割と勝率の高い組み合わせの場所を狙ってきました。

1失点目は大外に三平がポジションを取り、そこへピンポイントで合わせられ、三平の落としも完璧。前としてはもっと体を寄せて少しでもボールをずらせたら良かったのですが、あそこにあのスピードでボールを落とされてしまえば失点は免れません。

2失点目についても前がうまく押し下げられてしまったところで、下がりながらのヘディングで決められてしまうのは多少理不尽さがあったかなと思います。生駒がこのとき投入されてましたが、甲府もジェトゥーリオ(185cm)を投入しており、この前と三平のマンツーマンのマークは変更することができませんでした。

 

また、30分すぎからは多少プレスでサイドのCBのところに出たところで押し込まれるシーンも出てきてしまったほか、この試合終始苦しんだのがDFラインの裏への抜け出し。

前半はクリスティアーノが主にこの仕事を担っていましたが、後半は三平もこの裏抜けをしてきました。前半はアンカー周辺でボールを受けてクリスティアーノを使う側でありましたが、ここを抑えられ始めたのもあってか、後半は三平も裏抜け部隊へ。

オフサイドのようにも見えましたが、実際はレノファの最終ラインは多少揃っておらずあわやというシーンをいくつか作られてしまいました。

 

 

2)3人の選手が起用されたLWB

そしてこれをケアするためかエスナイデル監督が動きました。

CFジュニーニョを梅木に替え、LWB沼田に替えて生駒を投入。生駒がCB。前がLCB、ボムヨンがLWBへポジションを移しました。

交代の意図を考えると

・試合直後からポジションが多少ふわふわし気味のボムヨンの裏を取られている。

・沼田、ジュニーニョの推進力が落ち気味でここのテコ入れ。

があったかと思います。ボムヨンは積極性と裏腹に多少平瀬や前などRCBの選手に比べるとこの試合に限らず裏を取られるシーンが有りました。そのためか甲府クリスティアーノはほぼこちらのサイドを選んで裏抜けをしていました。

そこで、生駒を中央にし前をLCBにすることで裏抜けをケア。ボムヨンをLWBにして彼のキックを活かすことなどを考えたのかなと思います。

この形はいきなり結果に繋がりました。ボムヨンがあげたクロスを梅木が競り、GKがこぼしたところを池上が仕留めました。

しかし、上述したようにまたもセットプレーで同点に。この時間帯はボールの保持をすることもうまくいかず、生駒や前を使っても三平に裏を取られてしまっており、甲府に押し込まれてしまっている状況でした。

そこで64分にエスナイデルさんの指笛がなります。前とボムヨンにポジションの変更を指示します。

早速65分にボムヨン→佐藤→前とつながり相手陣内へ侵入すれば。次のプレーでもポジションを一列上げた前が一人はずしてペナエルティエリアへボールを送り込むシーンが出ました。

そして66分に甲府側にアクシデント。ベンチから「サンペー!」と篠田監督が連呼しておりました。この試合何度もレノファを驚かしていた三平の足がつっていたようです。クリスティアーノを替える予定を三平に急遽変更。

このあたりがこの試合の分岐点だったと思います。篠田監督が

ジェトゥリオも少し前に、相手の3バックに対してプレッシャーをかける位置が非常に深くなったことはよくなかったし、前の3人が横並びになる形、守備は私が求めている守備ではなかったので…どういう配置にすればよかったのかはこっちの問題かも知れないし、それでも決定機はそういった中でもあったのでゲームを引き寄せるだけのゴールは彼らに求めてピッチに立たせているので、そこはやってもらわないといけない。(引用元:https://www.ventforet.jp/games/53450

と仰っていたように、得点を求めた分そのトーレドオフとしてプレスについては意図した形は作れず。三平の交代が痛かったようで、この甲府の交代を機に、ほぼアンカー番がいなくなった状態になったこともあり、佐藤謙介タイムに突入。ここから一気にレノファの時間になっていきました。

後方からの組み立ても相手を動かして、というよりももともと甲府佐藤謙介を空けてくれるような状態に。また、LWBの位置に移った15前が持ち前のセンスを発揮。左サイドで幅を取ってボールの納めどころになったと思えば、右サイドからのクロスに惜しいシュートを放つなど圧倒していきます。

ゴール期待値を見てみてもこの時間帯から一気にチャンスの場面が増えていったかがわかると思います。

 

そして甲府にさらなるアクシデント。カウンターでレノファゴールを脅かしたジェトゥーリオが脱臼で交代。アンカーに規制がかからず、前・吉岡の両WBを使われ、サイドに振られる時間も増えたためスライドが間に合っておらず、システムも3−4−3に変更などバタついていました。

そして、上記のジェトゥーリオのカウンターの場面など危ないシーンはあれど、徳島戦の序盤のような緩慢な守備対応はなく、決勝点となった場面も時計を1分半巻き戻せば五十嵐のプレスバックから。

 

ボールを奪ってLWBの前のところからゲインさせ、

交代して入った武富がアンカーの成岡を見ているので、空いたボランチ脇を矢島が使う。

右サイドへ振ったをボールを失っても矢島、成岡で敵陣で奪回。

すかさずボムヨン経由でLWB前へ展開。

と、レノファがこの時間帯うまくできていた形でボールを運んでいきました。

 

そして仕上ですね。矢島が初めて聞いたような大きな声で「スルー!スルー!」と五十嵐君が言ったようですね。笑(第32節 ヴァンフォーレ甲府 | レノファ山口FC)

矢島のスルーで甲府ボランチ佐藤は置き去りに。追いすがる長谷川には背中でボールを隠しました。ここは38分に矢島が同じような長谷川に倒されて彼にイエローカードを出させていました。

確かにまだCB蓮川がいたので五十嵐にチャージしなかったという考えもありますが、個人的にはここで五十嵐を倒せばイエローカード2枚目で退場。次の試合も出れないとなると。。。そんな考えが長谷川に生まれてしまい、多少淡白な寄せになったのではないかなと思います。

あとは圧巻のキックフェイントだったと思います。前半のうちによくキックフェイントに引っかかるというのを見ていたとのことで、蓮川をフェイントで無力化させ、キーパーのマイケルウッドも体勢は崩れていないものの多少ステップをファーにしており、ここでニアを打ち抜きました。とても見事でした。

大分戦のようなこともおこらず無事試合終了。上位チームから勝ち点3を奪えました。

 

この試合、エスナイデル監督がおっしゃったように「勝ちには値したが、もう少し苦しまずに勝てた」側面はあったと思います。相手の好守はあれどやはり得点を取りたい時間にとれていれば、、、というのもあります。

また、やはり守備については裏を取られ続けてしまったことや、セットプレーでの失点(個の力が強く出たシーンでしたが)もあり、最終ラインを何度か試合中にポジションをいじらなければならなかったことは、まだまだチームの伸び代にしていかなければならない点です。

ただ、この試合その修正を行っていく中で、沼田・ボムヨン・前と彼らのパスからゴールが生まれるという展開になりました。

53分に沼田が交代してボムヨンが入り、54分に得点し、61分に失点。

直前に裏を取られて被決定機があったからなのか、なぜなのか。すかさず64分にボムヨンと前の位置を交代。

正直まだ測りかねているところがありますが、このボムヨンと前の交代、皆さんはどう思いますか?

・前をLWBあげることで攻めての一手だった。

・もう一度ボムヨンを後ろにして高さは確保したかった

・その他(あと何があるだろ・・・) 

 

そのあとの展開を考えると攻めの一手だったかなと思います。明らかにLWB前にボールを預けるシーンが増えました。

58分のジェトゥーリオの投入から甲府の前線は前掛かりになり、レノファはこれを受けてしまう形になりました。

しかし、前をLWBの位置、ジェトゥーリオのところに配置することで、甲府が空けてしまっているところから、持ち運びたかった。それはボムヨンよりも前のほうが適任だった。

ボムヨンの裏を取られるのは怖いが、甲府の攻撃的な姿勢とトレードオフだった守備の形のズレやプレスの甘さに対して、レノファも前でもボムヨンでも裏はとられてしまっていたので、甲府のズレを突ける前をLWBに置くことで起点を作ることができた。

交代自体が三平がピッチを去ってからではなく、その以前から手を打っていたというのも理由の一つになります。

なので、このように考えるのが良いのかな~と僕は思いました。いかがでしょうか。

 

 

LWBですが、ボムヨンは時間が短く評価が難しいですが、今まで起用されてきた田中のほか、相変わらずアシストで結果を出す沼田、ボールの納めどころとして機能させた前とオプションが増えたことは好材料と思います。沼田がファーストチョイスでしょうかね。

今節のようにまだまだ課題のある最終ラインとの兼ね合いとは思いますが、徐々に固まりつつあるレノファのスカッド。残留に向けて1戦1戦戦っていきましょう!

維新劇場はほどほどで、しっかりと勝つ試合を見せてほしいと思います。

水戸戦も維新ですし当然連勝ですね!僕は東京PVから勝利を期待する予定です。勝ちましょう!

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

※文中敬称略