レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

少しでも変わろうとしたから… レノファ山口vs町田ゼルビア@維新S 2023年11月5日

1日前に残留が決まりました。ホーム最終戦迎えるのはJ1への昇格と優勝が決まった【同期】の町田ゼルビア。今年最も強かったチームに対してレノファが見せた姿はとても勇敢であったと思います。

そして、そんなレノファに町田は『昇格するチームとは』というものを見せてくれたようにも思います。結局は得点0で町田に2点取られたいつものレノファ。。。もちろん負けましたので、「ふざけんな!」たぶん正解です。ただ今節は来年につながる内容で・・・「その来年いつ来るんだよ!」おっしゃるとおり、おそらく正解です。「そんなもんずっと来てねえよ!」まあ正解です。

しかし、やはりこういう惜しい試合、次につなげないといけない試合を経ないと上には行けないと個人的には考えています。

いきなりは変われない。

ただ、少しでも変わろうしたからこそ今季残留ができたのだと思います。そして変わろうとしているからこそ、あの前半があったんだと思います。

おそらく力負けした後半含めてレノファ山口はこういう風になりたいんだろうなと思った試合でした。最後にその理由も書かせていただいております。

彼らの変化を今季あと2試合追ってみたいと思いますので、お付き合いいただければと思います。

【得点者】
山口        町田

なし        54分 下田

          67分 M.デューク

 

  1. 4-「2」-4をねらう。
  2. 巧みだった町田の修正。閉じられたハーフスペース
  3. 来期を見据えて?

 

4-「2」-4をねらう。

今節レノファは基本のフォーメーションを3-4-2-1へ変更。対する町田は3バッグを使っていましたが、今節は4バックに変更してきました。

序盤から目立ったのが前節の仙台戦の前半のようにロングキックを使う(使わされる)のではなく、繋いで相手の空いた場所を使うサッカーでした。残留をしたことでリスクをあまり考えずにできるようになったためか、自分たちのやりたいサッカーを出していきます。

狙った場所は町田の非保持時に形成する4−2−4のような形のダブルボランチの「2」の部分でした。

もう少しいうと4−2−4の前線デューク・高橋、ダブルボランチの下田・稲葉の中間ポジション。鳥養さんがレノファニスタでスクウェアと表現していた場所です。

ダブルボランチの成岡と池上は多少縦関係になりつつここへの出入りを繰り返します。

町田はデュークが多少アンカー盤のような形を取り、相棒の高橋が割りとフレキシブルにプレスを掛けてきました。またサイドのCBに対しては町田両SH沼田とバスケスバイロンがそれぞれ平瀬、ヘナンに付く形でした。

ここでキーになっていたのがレノファのWBとシャドウ。まず町田のSHがレノファのCB、WBを両方見れないように、WBはCBからも斜めのボールを受けることができ、町田のSHがすぐに付けないような位置取りをします。そうすることでまず町田のSHがレノファのボランチを含む複数のポジションの選手を見れないようにしていきます。

そしてシャドウの河野と五十嵐。どちらかというと右サイドの河野は下田をピン留めするように下がりすぎず、反対に五十嵐はマーカーの稲葉を連れつつも池上、成岡とともにこのスクウェアのところで数的優位を作りました。

 

レノファのCBがボールを保持している際、後ろからつなぐためのコースを2、3個彼らが作っていました。そのためCBも寄せられても丁寧にボールをつないでいました。

また、このスクウェアに人を複数人送り込むシーンなどもあり、30:55のように相手のプレスがあっても、すぐにパスで回避できるようにもしており、まずここでリズムを作ることができました。

12分のところのように池上自身はこの中間ポジションに居続け、周りが動くことによって彼へのコースを作り、彼はあえて動くことなくここでボールを引き取るようなシーンもありました。

まずこのように町田のファーストディフェンスをいなすこと成功したレノファが次に使っていたのが、自陣でのハーフスペース。

 

レノファのサイドのCBからWBへパスが出てからいくつかのパターンが有りました。

◎町田のSHがレノファのWBを意識しすぎれば、シャドウやCFへの道がそのまま空くのでそこへ直接パスをつける。

◎町田のSBがレノファのWBに上がればその裏を梅木やシャドウの2人が流れる。

◎町田がサイド圧縮をしてきても、同じように人数をかけてフリーの選手を作り、そこからハーフスペースを使い、縦へ侵入するシーンがありました。

 21分の梅木の決定機は上述したように河野へ町田CH下田が付いたところを、その下田の背後を成岡が取ったところでのスルーパスでした。

◎最後のパターンとしてエスナイデルさんの「逆サイドは空いているよ」もお忘れなくといったところでしょうか。

 

わかりやすいのは4:50あたりからですが、相手のスローインをカットしたヘナンがすかさず定位置の池上へ。平瀬・吉岡とわたり再度平瀬へ。

町田がプレスを掛けますが、梅木が河野のかわりにハーフスペースで落ちて受けて吉岡へ捌き、吉岡は反対サイドの手を上げて待つ田中へサイドチェンジ。とそれぞれがパスコースを作る動きをしており、ボールホルダーへ色々な選択肢を与えていました。

 

もちろんこのようにつなぐビルドアップが機能していれば、3:15や例のイエローカードのシーンの32分のシーンのように相手の背後へのボールも意表を突いたものになっていました。

 

多少非保持の局面について。

河野を上げて4-4-2のようにして、町田が後ろを3枚のようにすれば主に河野がアンカー盤をし梅木がコースを制限。2列目はどちらかというと奪い切るというよりもパスコースを消すことを目的にしたような形。

19:55のようにボールを奪われてからのネガティブトランジションについても、ある程度相手がボールを落ち着けていれば、むやみに取りに行くことを選択せず、それぞれがパスコースを切ることで相手に下げさせるようなシーンもありました。

下手に行くことで裏を取られることも多かったレノファとしてはこのようなシーンは珍しいが良かったシーンとして挙げたいと思いました。

もちろん42分のハイプレスからの決定機があったこともポジティブな前半として捉えれる要素でありました。池上の右足にパスが付けれたらゴールでしたかね。梅木のシーン以上に仕留めたかったところでした。

 

巧みだった町田の修正。閉じられたハーフスペース

われわれは4バックでスタートしながら、状況を見て3バックに変えてかみ合わせを良くすることもオプションとして持っておこうと話していました。途中から3バックにしたことで狙いどころも明確になっていきましたし、そのほうがCBもやりやすいように見えました(引用元:Jリーグ公式

と町田の黒田監督がおっしゃるように、町田が非保持の形を変えました。4-2-4から3-4-2-1へ。

バスケスバイロン、太田をWBにし、彼らのスタート位置を低めにしてレノファのWBを下手に浮かせないように微調整をしました。

おそらく梅木の治療中にだいぶ集まって話をしていたので、ここから変わったのかなと思います。41:25のレノファのビルドアップのときにバイロンは田中を見て、ヘナンへはデュークが横からプレスを掛けてコースを制限していきました。

で、後半はここの顔ぶれを変更。

前線はデューク、2列目に高橋と荒木、3列目に下田と安井を並べました。

正直、このあたりの修正についてはレノファはある程度想定をしているように思えました。失点をするまでの5分強はやり方を変えられても、池上・五十嵐が町田の「2-3」の間で受けてゲインするシーンはありましたし、構造的に町田のアンカー下田の脇は狙い目ではありました。

ただ、2つの誤算。1つ目がレノファが中途半端にプレスを掛けにいったところでGKからデュークへロングボールが入り、荒木ヘ100点満点の落としをされてしまい、前線へ人数を割いたレノファの最終ラインは相手と同数になってしまっておりました。

デュークと競ったボムヨンが足を踏まれてしあったのか、倒れてしまったことで、PKを与えたシーンは2対3の数的不利となっており、ヘナンは難しい対応を迫られてしまいました。

正直この失点が痛かったと考えており、2つ目に繋がります。

2つ目は町田のもう一つの修正点です。レノファのWBにボールが入ったときに、前半であればハーフスペースを使いつついなすことができていましたが、1点をリードしたところで、町田はミドルゾーンあたりから5-4-1のような形を取り、特に7荒木、10高橋がこのハーフスペースをを埋めてきました。

57分がわかりやすいですが、吉岡にパスが入ったときに、LWB太田が吉岡に付いたところで荒木がすでにハーフスペースを埋めていました。前半ここからコンビネーションを出していきましたが、ここを埋められてしまうと吉岡は孤立するような状態になってしまい、戻すかサイドを変える他ありません。

 

多少時間を戻して、皆川を入れてのツートップについて。

先制をされてしまった。町田がレノファが使いたい場所を埋めてきたため、ある程度次の手として長いボールで打開したい、という意図があったと思います。上述した57分はちょうどピッチ内で変化が起きている時間帯でした。

相手の変化を見てエスナイデル監督が動いたのか、またはもともとのプランで後半から変えていくというのがあったのかは定かではありませんが、個人的には後者と思って論を進めます。

そしてそのようにボールを動かすのは良いものの、ロングボールを狙おうとしているのもあり、選手間が大きく空いていしまい、池上や五十嵐の頭上をボールが横切ったと思えば、彼らにボールが入ってもコースがあまりなく、戻すシーン・ボールを奪われるシーンが出てきてしまいました。そしてレノファが主導権を握れなくなってくると、徐々に攻守に町田の18下田北斗に存在感を出されていき、ペースが町田へいってしまいました。

 

そういうこともあってか、終盤は五十嵐に変えてジュニーニョを投入。身長の高い3人ではありますが、梅木とジュニーニョは走れることもあって、もう一度3-4-2-1へ形を戻して、ゴールを狙っていきました。

大きい選手が中に入ることでWBが浮き気味になり、ここから松橋・高橋がクロスやシュートを狙っていきましたが、残念ながらネットを揺らすことはできずタイムアップとなってしまいました。

前半良い姿を見せたものの、後半早々に効率よく得点を奪われてしまい、0-2の零封負け。スコアを見れば『町田』がいつものように『町田』をした試合となりました。

ただ、ここから今節のレノファの選手起用について考えたいと思います。

 

来期を見据えて?

で、まずはこの梅木のコメント

ボールを支配したいというところで今週ずっと準備してきていましたので、それはうまくはまったと思います。相手が球際に強く来るということは分かっていましたが、前を向く準備をし、良い状態で受ける準備をしていた(引用元:レノファ公式

書いてきました通り、まずこの準備してきたものをレノファはしっかり出せたと思います。

試合前日の時点で山口さんの残留が決まったことによって、われわれが事前に準備していた状況設定にはなりませんでした。山口さんの先発メンバーはかなり若い選手も起用し、来季を見据えているかのような人選に見えました。その中でアグレッシブなサッカーをしてきたという印象を受けています。

そしてこの黒田監督のコメントを都合の良い解釈をすると

・レノファの残留が決まったこともあり、繋いでくるある程度リスクを取ったサッカーをしてきて、町田が準備してきたものと違った状況であった。若い選手たちも起用しており、アグレッシブに仕掛けてきた。

 

梅木のコメントを読む限り、残留ができていたか否かはおそらく関係なくつなぐことを選んだので、準備の段階で町田を出し抜くことはできていたのだと思います。町田さんがこのような考えになったのは、おそらく仙台戦や岡山戦を見た中での判断であったと思います。

ただ、特に岡山戦がそうでしたが、<本来はしたかったが、実際できなかった>というのがレノファの本音ではありました。そのため、この1週間しっかりと準備をした。しっかり変わることを選ぶことができたのだと思います。

また、この試合5人のレンタルで獲得した選手が出ました。寺門、平瀬、成岡、五十嵐、松橋。

寺門・松橋は途中出場ではありましたが、成岡→水口、五十嵐→田邉と来季に加入をする選手で埋めることも考えた上での人選であったのかもしれません。(平瀬のところは生駒頑張れ)

来季につながるのではないか、と思ったのはこういうところで、残留などは関係無しでとりあえずシーズン最後こういうサッカーをやろう、という腹つもりはあったのではないかと思います。もちろん、何人かなぜベンチ入りもしないの?という選手はいましたが、そのまま契約が切れるとは思いませんが、何人かはやはりクラブとしての構想外ということも考えられるかもしれないと思いました。そういう時期ですので。

シーズン途中でGMが退任したということは選手の評価をする人、来季を見据える人がかわったということです。そのなかで今節の特に前半見せたレノファのプレーはリスクはあるものの、各選手がポジションを取り直しパスコースを作り、人をかけて押し込むことなど割と走ること、ハードワークを求めていたように思います。

また、後半リードされてから出てきたジュニーニョに対してエスナイデルさんは、試合前コメントで

今まで試合に出られていなかったのは私の選手選考もありますし、彼のフィジカルコンディションもありました。私が要求するものをやるには時間が必要でした。

と評しており、時々エスナイデルさんが口にしている「ハードワーク」が叶わなかったのかなと思います。

J2なので走行距離やスプリントは公式のデータとして上がってきませんが、どうもこの試合を見返すとこのあたりが「あれいつもと違うよね?」「40節くらい前からやってほしかったね」という感想につながるのかなと思いました。

 

最終節の熊本戦。もしかしたら、同じメンバーがそのまま熊本に行っているかもしれませんが、同じようなサッカーをもしレノファが見せたときは、このような考えを持っているのではないかと、個人的には邪推をしてしまうのかなと思います。

 

サッカーの中で「変わる」というと特に下位チームでは【方針が定まらず迷走した】というような解釈になりがちです。レノファもこの数シーズンで割と監督が変わっています。ただ、レノファは変わったというよりも、霜田さんの時の理想に立ち戻った、というように一見変わっているように見えて、変わっていないことを選んでいたように思います。

レノファ自身が目指す理念というものはもちろんあると思いますが、サッカー自体が変わり続けている中、その流れにレノファも併せていく必要があります。

大枠は変わっていない、という感じではありますが、それでも微調整を続けて、今節は各ゾーンで丁寧に相手を見る、動かして攻略をしておりましたし、守備の綻びはあったにせよ、メリハリのあるプレス・リトリートができていたのではないかと思いました。

そういうこともあり、来季を見据えつつ少しずつ進んでいるのではないかと思った試合でありました。

 

だいぶ、最後が長かった割に尻切れトンボになってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございます。

最終節、佐藤謙介の言葉を信じて選手・スタッフの後押しをしましょう。僕も現地で今年の最後を見守りたいと思います。

(※文中敬称略)