前節ようやく2か月ぶりの勝利をあげ、今節も試合開始直後からその勢いをもって試合に入れていたように思えます。
末永の先制点の後も緩めることなく、相手陣内で時計を進めることができていましたが、追加点を奪えず後半に一瞬の隙から失点し、試合も勝ち点1で終了となってしまいました。
選手は良く戦ってくれたと思います。ただ、決して褒め言葉ではなく、良くやったのに勝点1しか取れなかった。相手の倍以上のシュートを打ったにも関わらず1点しか取りきれなかったという試合でした。(引用元:レノファ公式)
志垣監督もこのような談話を残すなど、個人的にも今年一番歯がゆい試合になりました。では、そんな試合を振り返っていきたいと思います。
1)似た者同士もアプローチの違い
2)ニアゾーンを取ること。PAのスペースの問題。

【得点者】
愛媛 山口
53分 小川 11分 末永
1)似た者同士もアプローチの違い
シーズン終盤失速してしまった両チーム。前節勝利をあげたこともあってか、序盤からレノファが押し込むような展開でした。
試合展開としては双方が相手の並びを見つつ、CBの選手から前線へロングボールを蹴り、そのセカンドボールを狙うことが続いていました。
愛媛の石丸監督が
なかなかセカンドボールの拾い合いやヘディングの競り合いに勝てず、苦しい展開になってしまったという印象です。(引用元:Jリーグ公式)
と述べられていたように、これらでレノファは愛媛を上回っていたと思います。まずそこには愛媛とレノファのロングボールとセカンドボールへのアプローチの違いがあったと思います。
まず愛媛のCFのベン・ダンカンの存在。クラシカルなCFのような体躯をしており、まず愛媛のロングボールは彼がターゲットになります。相方の石浦はトップ下のような形でベン・ダンカンよりも低い位置などを取っていました。
一方レノファのツートップの若月と末永は二人とも小柄で競り合いで勝つよりも、裏への抜け方であったり、縦関係になってフリックしたりとある程度体を張ることよりも、タイミングや機動力を生かす特性。これについては熊本戦あたりから目立っていたと思います。
そしてこの試合このCFの使い方やそのフォローの形で質などで上回れていたかなと思います。
愛媛の場合で言えばベン・ダンカンに収まると全体的に押し上げることができ、そこからベン・ダンカンがシュートまでいくシーンであったり、彼がひきつけたところをサイドへ展開する形がありました。ただ、まずベン・ダンカンが収めることが第1関門になっており、ここで収められなくてもセカンドボールを拾えれば、というのがあったのかもしれませんが、ここはレノファがやらせない。ボランチの佐藤、相田であったりSBの前・新保らもこぼれ球を拾いそこでやらせませんでした。
反対にレノファのほうはまず裏を突くことで愛媛の最終ラインを押し下げ、2列目との間にスペースをつくりここに相田であったりSHの野寄や吉岡がインサイドの絞ることでこのスペースで優位性を取ります。
極端な言い方ですが、ベン・ダンカンがまず収めるなど個の質が求められるような形であった愛媛に対して、グループでまずセカンドボールを抑えるところを設計し、そこから若月や末永の特徴のスピードを生かしたようなプレーも出せていたこともあり、相手陣での時間が長くなったように思えます。
今節のレノファは相手陣深くでのハイプレスが効いたというよりも、愛媛のボールロスト位置が特徴的になっていますが、ハーフウェイラインからペナルティエリアまでのところでボールを奪えていました。
それは上述した通り、相手の2列目と最終ラインに人を送り込んでいるからこそ、愛媛にボールを収められても、そこからの1本目、2本目のパスに対してレノファは人をかけてボールを奪うことができていました。カウンタープレスで愛媛の前進を阻み、且つ手数をかけずにゴールをへ迫っていきました。
また、相手陣に押し込んだ状態であったりミドルサードで佐藤の振る舞いも効いていた時間帯があったともいます。30分あたりで押し込んだところで、ミドルサードで佐藤が最終ラインに落ちることで後ろを3人の形にしたところで、愛媛はSHが一列上がり3人で外誘導を促そうとじりじりと追い込むような形にしてきました。
ただ、ここで愛媛が明けたスペースをレノファ全体で見逃さず。佐藤や前など相手の動きをいち早く察すことができる選手らが周りを動かして、愛媛のあけたスペースを突いていき、ファイナルサードへ進むことができていきました。
2)ニアゾーンを取ること。PAのスペースの問題。

FOOTBALLLABさんのこの試合のリザルトからの引用ですが、この試合のレノファは30mライン進入、ペナルティエリア進入の数字が通常の試合よりもかなり多かったです。ゴール期待値も2点とやはりこの試合勝たなければなりませんでしたし、それにそぐう試合内容でもあったと思います。それが冒頭の志垣監督の言葉でもあったと思います。
この試合ペナルティエリアへの進入がかなりできていた中で、目立ったプレイがニアゾーンを取ることであったと思います。
まずなぜニアゾーンを突くのか?

こちらもFOOTBALLLABさんのコラム「クロスの傾向変化とトラッキングデータ活用」からの引用です。当然ではありますが、PA外の前方向(+方向)へのクロス数が試合内では多いです。ただ、得点率となるとやはりPA内に侵入したところからのクロス。前方向の他にも後方へのクロス(-方向)ともに同じような得点率が担っていました。約2倍といったところでしょうか。
ゴールへの確立が高いところにボールを送り込む意味はここにありそうです。また
(エリア以内でのクロスは)受け手と出し手が近い位置を保てることに加え、グラウンダーでのクロスを足でシュートする形も含まれているので、成功率が跳ね上がっている。(中略)
マンチェスター・シティのラヒーム・スターリングとレロイ・サネの両翼は、ゾーン4へと積極的に侵入することによってグラウンダーのクロスを送りやすい状況を作り出すことで、比較的身長の低い中央の選手を助けている。当然、ゾーン4に入り込める選手にはシュートという選択肢も生まれてくるので、リバプールのモハメド・サラーのように直接ゴールを決めてしまうこともできる。
また、ゾーン4に切り込んだ場合「ゴール側であればファーサイド、自陣側であればニアサイド」を狙う方がゴールの確率が高まるとされている。ゴール側ではGKに当たる可能性があるので、ファーサイドに速いボールを送り込むフットサルの「ファー詰め」に近い形が効率的となり、自陣側への「マイナス方向の折り返し」の場合は距離が近いニアサイドを狙う方が成功率は高まる。(引用元:Footballista)
引用元は2018年の記事であるので多少前のものではありますが、
・身長の低い選手を助けている
・グラウンダーのクロスを足でシュートすることで成功率をあげる
このあたりをレノファでも狙っているのかなと感じます。まあ、この試合若月のグラウンダーのクロスをシュートしたのは背の高い下堂ではありましたが。笑
ただ、やはり背の低い選手が今のレノファの前線には少ないためエリア外からのクロスよりもエリア内に行けるのであれば、エリア内への進入を試みたのだと思います。それが上のPA進入数にあらわれていると思います。
試合の内容に戻すと、後半愛媛はある程度プレスの強度などを上げたように思えます。ある程度緩く出てきてくれればあけたスペースを突くことが前半できていましたが、そこをもう少し締めたように思います。
ただ、それでもプレスに来るのではあれば、またボールを持ってから次のプレーまでの時間は少なくなりますが、空くスペースは大きくなります。
前半に比べレノファはより縦へのスピードをあげるような形で相手をいなしたり、相手の最終ラインへ新保を上げることなどで人をかけてカウンターであったり、縦への早い攻撃で打開をしていくことができました。
そしてFOOTBALLLABさんのクロスのコラムにあったものの二つの指標を考えたいと思います。


1つ目がクロスを上げた際のエリア内のクロスに関わった選手の数です。
上の表はエリア内の攻撃側と守備側の人数別のデータ。下の表は攻撃側の人数だけにフォーカスしたデータとのことです。
主に下の表の話ですが、得点率で最も高いのが3人のパターン。やはり1人だとシュートまでいくのが厳しいためシュート率は低いです。ただ、1人でもクロスで上げるということは相手の守備人員も少ないときが多いと思います。例えば後半の末永から吉岡のクロスであわやのシーンがありましたが、こういうシーンが考えられると思います。確かにゴール期待値も高いプレーであったと思います。
そして見ておきたいのが下の表の4人以上がエリア内でかかわった数字。FOOTBALLLABのライターさんが書かれていますが、
守備側の人数を加味せず攻撃側の人数だけでデータを見ると攻撃の人数が多いほどシュート率が上がっているが、このシュート率はクロスから3プレー以内にシュートに至ったケースのため、人数が多い方がこぼれ球を拾ってシュートを放てる分、シュート率が上がるのは当然の結果といえる。シュート時のゴール期待値は人数が増えるほど落ちており、難しい状況でのシュートになっている。これは攻撃側の人数が多ければ守備側の人数も多くなるため、スペースがなくなる影響だろう。そのため、得点率に関してはシュート率ほど人数に応じて上昇していない。
なるほど。確かにエリアに密集してしまっているとスペースはないことでブロックだったり、避けようと無理くりシュートをしてゴールをはずれてしまうことはある。期待値も低くなっている。
いくつか考え方がある。確率がそんなに高くなくても、シュート数を増やす。そのような機会を増やさなければ得点であったり、思いがけないようなプレゼントゴールもでてこない。
もう一つの考え方として、シュートは打てている。ただ、ゴールが決まらない。であれば、より確率の高いシュートを打っていきましょう。
正解はないし、どちらかを否定するつもりもないですが、少なくとも今節のレノファは後者を試みており、それに果敢にチャレンジした。
フィニッシャーだけの問題ではなく、ラストパスの精度、ラストパスに行く前のパスの精度、そこが一つ一つ上がってくれば、もっとゴールに結びつけられるシーンは増えると思います。
志垣監督のこの言葉は、よりゴールの確立を高めるように質を求めていくということかなと個人的に解釈した試合となりました。
一概に「クロス」でも種類はありますし、ニアゾーンを取るにしても中の状況などでそこで選ぶプレーも変わる。今週これらの記事を読んで、なんとなく見てたが多少認識が抜け落ちていたなと思い、あまり試合には触れませんでしたが、書かせていただきました。
さてさて、早いもので残り1試合ですか。
私はとりあえず予定通り今年3回目ですが維新スタジアムに行く予定にしております。最終戦勝ったことがないなど変なジンクスがあるようですが、払しょくしてもらいたいですね。
最後は笑って終えましょう!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
(※文中敬称略)
さて、あとがきFOOTBALLLABさんの記事の最後のところで、クロスを上げるときにこの数年でファーサイドに人を置く比率が10%上がっているとのことで、そんなに上がったのか、と感じました。
確かにファーサイドで仕留める以外にもそこに選手がいるだけで、DFは気にしますし、気にすることで味方のDFから距離を取ってマークする必要があるので、ニアやセンターのスペースは空くことでしょう。
なんとなくではなく、もう少し意識的にファーサイドに人がいるか、そしてそこに対して相手DFはどんなアプローチをしているのか。そしてニア、センターはどうなっているのか。こんなところがしっかり見れていたらより試合が楽しめそうだな~と、まだできていない観戦方法に気づいた、というお話でした。
では、また。