いや~力負け。手も足も出ずというか、出そうとしていなかったように思えた前半が本当に悔やまれます。
J1昇格を目指す、とクラブ・チームとして目標を掲げているうえで、まざまざと「まだ早い」という現実をたたきつけられてしまったような試合でした。
この試合で名塚監督が選手に託せなかったもの、託したけども実行ができなかったものを考えてみたいと思います。
1)プレスが全くできませんでした。それは私の責任です。そこは練習します。
2)ビビらずにやってほしいところ。
山口 1-3 新潟
得点
山口 新潟
90分 梅木 45分 鈴木
50分 鈴木
73分 伊藤
1)
名塚監督が就任されてからあまり聞かなかったフレーズだなと感じたのがこの言葉。敗戦時は「もっとトレーニングをする」「まだ甘い」といった言葉が並んでいたと思いますが、第1声でこの「私の責任」という言葉が出たということは、かなり気にされていたのかなとまず邪推しました。最後にそこは練習します、といつものフレーズが付け加えられてますが、私の責任が先にきたの個人的に気になりました。
ただ、試合展開を考えればそれは納得だったと思います。ホントにプレスがかからなかった。
まず試合開始直後からレノファはボール非保持時いつもの4-4-2の陣形をとります。田中渉が1列前に上がり、佐藤謙と神垣でダブルボランチのような形。
対する新潟はCB2人に加えダブルボランチの一角の高が下がり気味のところに構え、GKの小島も積極的にビルドアップに加わってきます。ここに大槻、田中渉が新潟のボランチを消しながらプレスをかけようとしますが、GK小島に渡されたときに片方のCBと高は消せるがもう片方のCBが空く。ここから前に進まれる。「じゃあどうしようかな」という形で高を消しつつ両CBを見ていると小島から展開をされる。といった具合に前から行くのか、はたまたパスコースを制限して蹴らせるのか?という狙いが見えにくいまま、「どうしようか」が解決されないままやられたい放題に近い形になってしまっていました。
飲水タイム明けに高に対して佐藤謙がつくようになり、ようやく前の二人もCBを背中で消す形でGK小島までいけるようになりました。
ただこの修正を行っても、プレスの出力が上がらず新潟への解決策とはなり切りませんでした。
25:35のシーン。そこまで悪いとは思いませんでしたが、分かりやすい場面だったので取り上げてみます。
GK小島がボールを保持。田中は舞行龍につき、大槻は高に寄りながら早川へも行けるような体制に。画面には映ってませんでしたが、佐藤謙が上がったのを確認し19星は佐藤謙がいた場所をより空けるように、中側からハーフスペースあたりまで移動することで神垣を誘導したと思います。そして、ボールが早川へ渡り、そこから佐藤謙、神垣があけたところを9鈴木が落ちてきて早川からボールを引き出します。星はこの時渡部が吊られて空けたスペースへスプリントを開始しており、渡部はもうここでつぶすほかない状況になっていました。
この渡部が何とか止める、といった行動の前に大槻が早川へもう少し強めにプレスをかけることで余裕をもってパスを出させないことができれば、このシーン変わっていたかもしれないと感じました。
前半はとにかくボールホルダーへ行き切る、奪いに行くという姿勢がかなり消極的になっていたと思います。連戦の疲れなどもあったかと思いますが、付いていってはいるが特に制限ができているわけでもなく、その前の制限しきれなかったところのツケを後ろがファウルや関のスーパーセーブで払うような形になっていました。
これは前線の選手の責任ではないですが失点シーンはパスミスからのカウンターで常にボールホルダーへは寄せられず、相手の追い越す動きなどについていくことしかできずにゴールを奪われてしまったのは、新潟が前半ずっと行ってきたことが集約されていたゴールであったと思います。
後半よりボールに対して強くいく姿勢を出していくようになりましたが、後半開始から5分でセットプレーからの失点をしてしまい、ゲームがより難しい状況になってしまったのはただただもったいなかった展開でした。
選手がプレスを遂行しきれなかったという面はあったかもしれませんが、まず選手達に託したプレスの案について監督•コーチ陣もエラーを起こしてしまっていたと思います。
2)
試合開始直後からレノファはなかなか守備が嵌らずというか、定まらないままの状態で新潟にペースをつかまれてしまえば、おのずと攻撃もちぐはぐになってしまいます。
いくつかJリーグ公式サイトから選手談話を引用させていただきます
【公式】山口vs新潟の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2022年7月10日):Jリーグ.jp
よりプレッシャーに強く行かないといけないという気持ちで全員がやっていた。
新潟CH19星の言葉の通りレノファは新潟のプレスに飲まれてしまいました。新潟もレノファ同様に4-4-2の形でプレスに来ていました。特に形としてはCBに入った際に、もう片方のCBには入れさせないように横から中切りでプレスをかけに行きコースを限定させます。
このような形で最前線からしっかり新潟はボールの出所を制限することで、後ろのプレーヤーがレノファの選手を捕まえやすくなっており、ボールを奪う際は強度を持って対応してくるため、名塚監督のいう「びびってしまった」という状態になってしまいました。短くつないでもとりあえず逃げるパスになってしまい、次の選手も出すところがない。プレッシャーからパスミスをしてしまう。せっかくの自分たちのボールになったにもかかわらずあっけなく相手に奪還されるシーンも前半は目立ちました。
このトランジションの質については田中渉も言及していましたが、
チーム全員が奪ったあとの切り替えのポジショニングのところで、誰一人サボってはいけないと思う。
守⇒攻へ移る際に、常に相手が近くにいる場所でのやり取りになり、再度ボールを奪われるなど悪循環にもなってしまっていました。
こうなってしまうとロングボールに頼るシーンが増え、おさめどころは高木となり、この試合攻撃のパーセンテージは半分が右サイドという今期のレノファの試合としてはかなり珍しい数字が現れました。
名塚監督の「新潟はGKも含めてビルドアップしていたが、自分たちは嵌りにいってしまう」とGKまでもう一度戻してということを考えていたようです。30:30のところでヘナンが関に戻したところで「good」と聞こえます。
確かに佐藤謙を含めて相手CFのところで4対2を作り、ミドルサードまですぐに出ていける試合もありました。また、橋本が多少落ちて3バックのようにし、生駒がインサイドに位置どる試合もありましたので、このようなことをやってほしかったのかなと思います。
しかし、前半関が持った際にはあまりプレスに来ず、CBに行くまで新潟の鈴木・高木善は待っていたようにも見えましたので、どうなっていたかな、というのはあります。
35分あたりから神垣が右サイドへ落ちて、生駒を押し上げてビルドアップに加わるようになり、何度か前進をさせることができていたので、この試合で言えばもう少しIHやSBの位置をずらすなどし、相手の4-4-2の形を崩すことをしないと厳しかったのではないかと思います。この問題については今節に始まった話ではないですが。
個人的にもう一つ名塚監督が託したことで出来ていなかったのが、右サイドから左サイドへのサイドチェンジ。もう少し詳細に言うと、CB渡部やRSB生駒からLSB橋本やLWG沼田が高い位置で受け取るサイドチェンジ。
ストロングの左を生かすために、右サイドに相手を引き付けておいて、相手のセカンドラインを超えるようなボールでのサイドチェンジ。幅を使うことで相手に逆サイドへスライドをさせ中のマークをずらす。相手も人数を多く割けないので、沼田・橋本の関係や田中渉も加わり、左サイドを攻略することはこれまで何度もやってきていました。
ただ、この試合ではサイドチェンジで敵陣深くまで入り込めたのは61分の渡部⇒沼田が最初だったと思います。63分には今度は生駒からのサイドチェンジで佐藤謙が加わり、ラッキーな形でしたが、橋本のクロスバー直撃のシーンが生まれました。
流石に新潟も後半はリードしたことや気候・疲れの問題もあり、前からの制限が緩くなり佐藤謙へのマークがだいぶ甘くなってきていました。また、高木善がLSHに入ったためか、高木大へのパスコースが空いており、お兄ちゃんの裏で弟がボールを引き取れるようになりました。ここまで前進すると新潟が撤退をしてくれるので、生駒や渡部にも時間ができるようになりました。そして上記のシーンが何回か出るようになります。
アウェイ仙台などでもそうでしたが、嵌められてしまった時の2の手、3の手がない場合チームとして詰まる。これはシーズンを通しての課題となっており、この答えが出せないともれなくカウンターでの失点を食らうというのがお決まりになりつつあり、なんともプレーオフ圏との勝ち点差8よりも降格圏との勝ち点差8のほうがちらついてしまいそうで怖いです。
明らかに完敗の試合ではありましたが、こういう試合でも勝ち点1を拾うなどすることが、伸び盛りの若い選手には良い経験・自信になるかと思います。監督・コーチ陣にはうまく建て直し・上乗せを期待したいです。
さて、そんな状況でも次の試合は来ます。天皇杯は敗退してしまったので、相手も同じですが休養十分で熊本戦へ望めます。どうせフェイクニュースでしょ?!と思った高井の復帰。どこで使われますかね。左のウイングかな~。沼田流出が前提?など要らぬ心配などもしてしまいますが、レノファについて知ってるJ2で二けたゴールをしたことがあるFW。救世主として肩書は十分です。結果を残してもらいたいです。復帰直後の梅木のゴールもFWとしては乗ってくるよいきっかけにもなったでしょう。
田中渉が獅子奮迅のIHにも補強が欲しいところですが。吉岡IH使って!なんて声も散見されますね。レノファ一体(パクリです)でこの厳しい季節を乗り切って行ってもらいましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
(文中敬称略)