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プレスがはまったら拍手しよう。 レノファ山口vsベガルタ仙台@維新 2023年6月20日

エスナイデル体制2戦目で勝利。開幕戦以来のホームでの勝ちと試合後の盛り上がりは我慢した20節分込められているように思えました。

「勝てればハードワークは報われる」

「今日、選手は走っていましたか? どう思いますか? (夏は)同じように暑いですよね。もしくは、もっと暑いですよね。そのためにリカバリーして、しっかり栄養を摂る。これが私の要求です。」(引用元:第21節 ベガルタ仙台 | レノファ山口FC

などなかなか外国人監督さんらしい言い回しも出てきており、後半戦が楽しみになってきました。

エスナイデルレノファの4局面など振り返りつつ今節について考えていきたいと思います。

1)見えてきたハイプレス・ハイライン。

2)監督が具体的にこうしてほしいと言ってくれるので。

 

得点者

山口         仙台

23分  矢島     なし

69分  野寄

 

まずは4局面について確認してみたいと思います。

 

攻撃
中央から繋ぐのではなくサイドへボールを動かしていく。手数を多くかけずに相手の最終ラインの裏を狙っていく。相手が出てくればひっくり返すようなロングボールも蹴っていく。

敵陣でのサイドチェンジも狙っていき、ハーフスペースを突いてのニアゾーンへの侵入も試みる。

 

ネガティブトランジション(攻→守)
ボールを失えば高い位置からプレスをかけて即時奪還を狙う。DFラインもそれに合わせてハイラインを保ち、相手のロングボールなどの迎撃・回収。外された場合はある程度カード覚悟で潰す。自陣でのロストがないように<攻>のような対策をしている。

 

守備
基本高い位置で守り切る、ボールを奪う。相手DFラインからのボールに対してもCBは積極的にボールへ競って行く。球際では体を強く張る。

自陣へ押し込まれた際はSHとSB2人以上でクロスをあげさせないように守る。ボランチもエリア内まで戻ることも多く。バイタルは多少空き気味。セットした状態でも人を捕まえる意識が割と強く、チャレンジ&カバーは今後の課題。

 

ポジティブトランジション(守→攻) 
ボールを奪えば前線だけでなくSB含めて走り出しカウンターを狙う。相手が崩れていれば敵陣、自陣でも積極的に狙う。サイドチェンジを交えつつも割とペナルティエリア幅で遂行し気味。

 

甲府戦含めて2試合を見たところこのような印象です。ちょっと前節と今節が違い過ぎてまとまりにかけるところはありますが、目安ではないですが参考程度に。

 

1)見えてきたハイプレス・ハイライン

レノファは4-2-3-1だった前節から4-1-2-3へ変更。主な変更点としては矢島の位置。神垣とダブルボランチを組んでいた前節とは異なり、IHとして1列前へ上がりました。

 

まずキックオフ時。ヘナンがセンターサークルの中にいるくらいハイプレスへの準備が前のめりなレノファ。キックオフからいったん下げて矢島が大きく右サイド深くに蹴りこみ、ハイプレスを開始し相手のミスを誘いマイボールにした形で試合が始まりました。

 

まずはボール非保持の場面の確認。

仙台はRSB22小出が1列上がり3-4-3の形に。この仙台の形に合わせて、内田・菅田・若狭の仙台の最終ラインに対して、IHの2人を加えた河野・大槻・矢島がそれぞれ付きます。

仙台が右肩上がりのような形を取っていることもあり、LWG田中は割と低い位置。逆サイドのRWG吉岡はポジション上、多少マーカーがいなくなり気味なので遊軍のような形でボランチの松下を見たり、そのほか浮いてしまう選手を見たりしていました。

そして後ろはそれぞれ郷家・中山・中島・氣田に沼田・ヘナン・松本・前がそれぞれハイラインを維持しつつマークに付きました。

 

甲府戦同様ファーストディフェンダーを大槻がすぐに務めることでプレスのスイッチを入れ、サイドへ追い込んでいきます。それに合わせて順に一部はスライドさせつつ上記のマーカーを主に選手それぞれが捕まえます。

 

形がわかりやすいのが4:30のところ。仙台がレノファの右サイドへボールを逃したところで河野が内田に付き、仙台のダブルボランチは神垣とスライドした矢島がそれぞれ松下とエヴェルトンに付きました。吉岡は若干浮きつつ7中島へのコースを切っていました。

 

もう一つが10:10のところ。仙台CH8松下がビルドアップへ加わるために落ちたところで、ここに矢島が付き、内田を河野が抑え、GK小幡とCB菅田に対して大槻が付きます。

ここで菅田を大槻がチェイスするところで、小幡へパスが出そうになったところで矢島が松下のマークを外して小幡へ行こうとします。しかし、ここは菅田がパスと見せかけたフェイント。

矢島のマークが外れている松下へ菅田がパスをしますが、後方から猛然と吉岡がここを潰します。たまらず松下は小幡へ下げますが、矢島がここにプレスをしミスキックを誘いました。

惜しくも神垣が収めきることはできませんでたが、相手陣内、エリア内だろうとハイプレス。相手が蹴ってくればディフェンスラインがこれを回収・もしくは迎撃。

特にCBの2人は中山・中島のJ2ではトップレベルの2人に対してかなりタイトについており、ボールが入ればボールに強く行き、神垣と連携しながら仙台にボールをおさめないようにしていました。

 

ここのCBの対応はかなり肝であったと思います。多少今季前半戦やり玉にあがってしまっていた松本にしても、前からのプレスでコースが限定されているうえ、相手も裏抜けがすくなく捕まえやすい状況であれば力を発揮。ヘナンともども空中戦、地上戦ともにファウル覚悟のように強くいき、時にはファウルをもらうような出足の良さを見せ、ここで優位性を勝ち取っていきました。

 

仙台の伊藤監督の談話で 

『(山口が前からプレッシャーをかけてきて、なかなか前進する回数が少なかったのは、相手のプレッシャーが想像以上に強かったのでしょうか。)

 いえ、我々のミスです。ライン間で何回もボールを受けているので、そこでのミスが多い。ここは前半にそれで流れを変えてしまったことが、ひとつありました。

と述べており、続いて、

『(ライン間で受けた後にミスが出た要因はどこにあると思いますか。)

相手の強度もたぶんあると思います。センターバックがライン間に来ていて、その裏のスペースを我々がまずそこを狙うことによって相手にプレッシャーをかけられる。もう少しファーストハーフからもっと大きく出ていれば。』引用元:2023明治安田生命J2 第21節 レノファ山口FC | ベガルタ仙台オフィシャルサイト

 

と、ここのデュエルでの自分たちのミスとはおっしゃっていましたが、レノファディフェンス陣がここで上回ったことで、試合を優位に進められました。

プレスについても相手に十分な時間を与えておらず、ディフェンスラインがそのクリアボールを回収する場面が目立ち、前半途中でのスタッツでボールの保持率が65%と目に見えてうまくいっている数字が出ておりました。

 

問題点・今後の不安点としては、後半に徐々に出てきましたが、このCFとCBのところでホ・ヨンジュンに納められてしまった後の展開。ここで質的優位が取れないとハイラインは瓦解します。

また、プレスが抜けられたところでファウルをしてでも止めるというシーンが今後も出てきます。(今節で言えば神垣)

前節もこれに近い形で高橋が退場をしていますし、ある程度仕方のない出費(イエローカード)ではありますが、浪費(レッドカード、累積警告)になってしまう場合もある程度想定をしないといけないかなと感じました。

 

また、今節は伊藤監督が指摘している『裏抜け』があまり多くなかったことはラッキーでした。レノファがハイラインを敷いている以上、背後には大きなスペースができてしまっていますし、仙台は後半フリックを絡めつつ狙ってくるようになっていました。

自陣の深い位置でボールを取り返してもハイプレスの局面へもっていくまでにもうひと労力が必要になります。今節は2-0でリードしていたので終盤仙台が持つ時間が増えていましたが、今後はイーブンな状態でもどのようにふるまえるか、は注目したいところになると思います。

 

2)監督が具体的にこうしてほしいと言ってくれるので

ボール保持では4局面のところで書きましたが、あまり手数をかけずにビルドアップをするのが目立ちました。

レノファの今期の失点シーンでクロスからの失点がありますが、その前段階でビルドアップを相手に引っかけられてボールを失うことが多くありました。

今アンカー位置に神垣を置きますが、基本はここを経由させてないように見えました。

 

左サイドの沼田へボールが行けばまず彼が見ていたのはRWG田中よりも先のスペース。そこへロングボールを蹴る場面が散見されました。前半のように仙台がプレスに来なければセンターバックへ戻しますが、来た場合も無理して中を使うよりかはシンプルに田中を使ったり、走らせるようなボールを送っていました。

反対の右サイドは、前に預けて持ち運んでもらう。または前がインサイドに入れば松本から吉岡のラインを使う。またはその奥へ河野を走らせる。

大槻は河野がCFを務めていた時のように降りてボールをうけることもありますが、その時には矢島と河野はその裏を抜ける準備をしていました。

これを行うことで大槻に仙台のCFがついてきにくくなりますし、ロングボールを受けて高い位置で起点も作れました。

 

また、ミドルゾーンまで進めたところでも、2列目の仙台のダブルボランチに対して、フォーメーション上レノファはアンカー神垣とIH河野と矢島で一人浮きやすくなります。仙台が人数を増やして数をあわせようとしても前がインサイド(たぶんチーム戦術ではなく個人戦術)に入ることで数的優位を作ることもしていました。

 

惜しかったシーンでは37分。松本から吉岡へ。吉岡の脇で前がボールを引き取ったところで、矢島と河野が裏へ動きだします。ここで前が出せず矢島は「出せよ」とアピールをしますが、前は開いた吉岡へ展開し、吉岡がクロス。中は田中含めて4枚がエリアに入っていました。

ただ、動きなおしが甘かった矢島・大槻・河野がポジション被りしており、もったいなかったのはご愛敬でしょうか。

 

 

と言ったように、リスクはあまりかけず。ボールを失ったとしても敵陣で。そうすればそこからまたハイプレスの準備ができます。

下記同じく勝利をした水戸戦と今節を比べるといかにボールを失った位置が敵陣であったかがわかると思います。

前半の30分以降では相手が前に出てきたところを待ってロングボールを送り込むシーンなどもあり、狡猾に相手の出方を利用することもできていました。(35分、38分、39分、40分) 42分にはあまりに裏を通されるので、仙台RSB小出が下がっていたので、田中がドフリー。解説の中島さんが言うように、沼田もその先を見ていましたが、手前に切り替えられたらなおよかったという場面でした。

 

 

しかし、失う位置が後ろなだけでは勝てません。得点を決めることが大切です。アウェイ山形戦やアウェイ群馬戦など内容はよく見えるけど、、、という試合もこのようなボールロスト位置ではありました。

では何が変わったかというとトランジションの局面での強度が挙げられると思います。ネガティブトランジションでは即時奪回を試みてしっかりボールホルダーへプレスをします。

ファーストディフェンダーを早めに設定し、周りがそれに合わせて恐れずに続いていきます。

 

またポジティブトランジションではカウンターへ行くシーンが増えたと思います。前節も敵陣で奪ったところでは7秒くらいで行く場面もありましたが、どちらかといえば散発な印象でした。

ただ、今節の1点目も疑似カウンターのような形でゴールを陥れたことやハイプレスで奪ったボールを一気に相手ゴール前までもっていくシーンがいくつか見られました。(8分、31分、44分など)

攻守ともに『アグレッシブ』と言えるような内容で、フロントがエスナイデル監督を招聘したのがわかるようなシーンが多くありました。

 

また、実況の八谷さんがおっしゃっていましたが、エスナイデル監督から「ボールを受けたらまず逆サイドを意識しなさい」というところ。1点目や2点目もボールをしっかり落ち着かせたところで逆サイドへの展開がありました。

1点目は吉岡が反対サイドを向いたところでスイッチオン。田中、沼田は左サイドを駆け上がり、矢島は相手の背後をうかがいしました。

同じように、2点目は河野が逆サイドの野寄に出したところで、前が野寄を追い越し、池上がハーフスペースへ侵入し、それを見た野寄が前へパスを出した後、ワンテンポタイミングをずらし、ハーフスペースへ侵入していきました。

監督自陣の談話でも

もちろんボールを奪ったら背後を狙うとか、ボールを奪ったら反対が空くとか、明確なことはあります。ので、それを選手が遂行しました。ボールを奪ったあとのパスの質とか、決めることとか、そういうところは選手に懸かってくるところです。

と述べています。

 

矢島も

”監督が具体的にこうしてほしいと言ってくれるので、その通りにやった感じです。監督もまずはやってみてほしいと言ってくれて、自分たちが試合で全力を出せるように送り出してくれています。僕たちもやるしかないというそういう感じです。”

と試合後インタビューで言っていました。

 

良くない勘ぐりのようなものになりますが、ある程度名塚さんは選手への自由度を高くしていた印象があります。ただ、ここにエスナイデル監督は「やるのは選手」とおっしゃってますが、ある程度決め事は増やしているのではないかと思います。

 

矢島自身も

ボランチの位置で一定のリズムで左右に動くことが多かったですが、今日は前にスプリントで出てプレスを掛けることが求められていました”

と述べているように、チームのやり方も大きく変わりそれに選手たちがアジャストできるように今取り組んでいるようです。

今のサッカーを矢島自身がどう感じているか、なかなか表情が読みにくい選手ではありますが。少なくともヒーローインタビューのところで

新しい監督も熱量をもって指導してくれている中で(中略)監督に初めての勝利を自分たちがあげたかった”と言っていたように、少なからず現状については前向きにとらえているのかなと思います。

今節個人的に最も印象的な働きをしていた松本にしてもJリーグ公式のほうに載っているインタビューで手ごたえを口にしていました。

ちょっとずつやり方がエスナイデルナイズされ、松本もやり方が整理されていることで自分の長所を出し安くなっているようで、この監督交代が好転することを願うばかりです。

 

今節は

・ハイライン・ハイプレスが前節よりも精度があがり、CBで質的優位を保てた。

・カウンター局面でチームとしてスイッチを共有できており、素早く相手ゴールを陥れることができた。

このような成功体験を得たことはとても大きかったと思います。まだやり方が浸透していないから。。。で5節くらい経ってしまえばホントにこれでよいのだろうか?など疑問は出てくるでしょうし、夏場になればもっと体力的に厳しくなります。特に7月末まで割と順位が近いチームとの対戦も続きますし、早い段階で結果がまずでてよかったと思います。

 

複数得点で無失点での勝利は去年の2節秋田戦以来でした。先制点をとり、相手の流れになっても踏ん張り、追加点を奪って最後は守りを固めての勝利。

今年の千葉戦のように1点を守れなかったという試合はいくつもありました。昨年も『維新劇場』という言葉でぼかされてましたが、終盤追いつかれる、終盤まで勝ち越せない試合が続いていたのは確かです。まだ降格圏がちらつく順位でありますので、予断を許さない状況は続きます。

前や矢島が言う通りこのやり方を研究してくるチームが今後は出てきますので、その中でどこまで勝ち点が積めるのかは気になるところです。

ですが、今節見せてくれた姿を信じて今後も勝ち点3をとってくれることを期待したいと思います。

 

 

 

最後に余談ではありますが、僕がもう一つ応援しているフロンターレも2017年からプレスに対して等々力競技場でうまくいった際に拍手が起こり始めていました。

レノファサポもスタジアムだろうが、スポーツバーだろうが、家だろうがもっとみんなで拍手してみてはいかがでしょう。結構選手にこの拍手が届くようでインタビューなどで好評です。2018年ですがこんな記事も。

前回のブログでも書きましたが、盛り上がる下地はできてます。選手だけでなく、サポも全体で盛り上がるとより良い<レノファ山口>ができていくのではないかと思います。(ホームにはあまり行けず、アウェイも多くいっているわけではない僕がいうのもあれですが・・・)

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(文中敬称略)