3試合ぶりの勝利です。4試合連続で無失点です。実際11人ではまだ無失点です。
なにかの夢でしょうか。
いえいえ。それは監督や選手たちへの冒涜の言葉ですね。見事でした。
エスナイデル監督はこういう形だよね。というところや、あ、ちょっと変えてきてるなと思う所などエスナイデルレノファがより一層出た試合だと思います。
ということで今回は下記について考えていきます。
1)24分の矢島と高橋の献身性
2)試合を楽しむスイッチ。
3)ちょっとずつ出ている細かい微調整
【得点者】
山口 山形
61分 沼田 なし
1)24分の矢島のプレスと高橋の献身性。
今節のレノファの並びは前節の形を引き継いで、LWGが小林→田中に。
何人かは怪我で離脱?という印象ですが、引き続きエスナイデルレノファの根幹を支えている選手たちは3連戦だろうとターンオーバーせず、この試合に臨みました。
まずは山形の並び。4-2-1-3(4-2-3-1)のフォーメーション。ボール保持時に前節まではRSB26川井歩とCBの2人を最終ラインに並べて3人でボールを回す方法を採用していましたが、渡邉監督が仰っていたのが『新しい試み』としてLSB41小野も上がらずに本来のポジションにいるような形、4枚で回してきました。
”いつもは可変して3バックにすることもありますが、4バックのままいきました。自分たちでうまくいかなかったらポジションを3に変えていこうというのはあったので、ゲームの中で変えたりしたシーンはありました”(引用元:2023明治安田生命J2リーグ第24節レノファ山口FCvs.モンテディオ山形 | モンテディオ山形 オフィシャルサイト)
と川井歩も言っている通り、狙いをもってやり方を変えていたようでした。
その狙いは読みにくかったのですが、ちょっと予想だけ書いておきます。
エスナイデルレノファのフォーメーションは4-3-3。3枚で回すとなると、おそらくレノファはCF河野、IH矢島、五十嵐でおそらく後ろの3枚に当ててきたと思います。仙台戦のような形ですね。仙台も片方のサイドバックを前に上げることでビルドアップしていました。で、見事にレノファがはめました
続く栃木や藤枝と3バックのチームが続いており、それぞれのやり方ではある程度後ろを3枚にする相手に対してレノファはうまく対応してきました。そこで多少奇襲のような形でこの4枚で回すことを選んだのかなと考えました。
その目論見については試合の序盤は機能させられてしまいました。
山形の4バックとダブルボランチに対してレノファは矢島を河野と同じくらいの位置へあげて4-4-2の形に。神垣も五十嵐同様に山形のダブルボランチの南と藤田を捕まえるためにいつもより高い位置まで出て行っていました。
そうすると空いてきてしまうのが、OH21田中渉の仕事をする場所。LWG25國分が本職ボランチということもあり、レノファのセカンドラインが上がった場所に対してボールを受けに降りてくることでボールの逃しどころとなっていました。
今までよりも神垣とCBの2人の間にスペースができてしまっているので、CBもなかなかここを捕まえることができず、序盤の難しい展開になってしまいました。
相手陣でボールを失ってからのカウンタープレスについても場所をどこまで空けて良いのかが選手たちがまだ探っているような状態で、前に行くところで出力をあげることができませんでした。
20分のところではやはり田中渉にボールが渡り、前がチェイスをしますがかわされてしまい、ボールを運ばれてしまいます。このシーンは寺門がペナルティエリアから外にでてボールを処理するなど、昔のエスナイデルさんのジェフのイメージのようなシーンもありました。
徐々に流れが変わってきたのは24:40のところ。山形にボールを奪われ、ボールが最終ラインまで下げられたところで矢島がプレス。
割りとそれまでは当たり前ではあるのですが、周りと連動するために周りを確認しつつプレスに幾分多少マーカーへの強度は上げられていませんでした。
ただ、この場面では相手陣深くだったこともあり、矢島が猛然とRCB3熊本へチェイス。これに周りが一斉に合わせます。周りを見てからというよりも自分のプレスに周りが合わせろ!といったチームにスイッチを入れるようなプレスであり、現に周りが連動し最後は神垣が相手を潰しました。
このプレスをきっかけとしてチームとしてプレスに行き切ること、全体的にレノファの前に行く矢印がそろい始めた形ように思えます。
そして、29分のところで発表されていた試合のスタッツは
山口 山形
48% 支配率 52%
2本 シュート 6本
157本 パス 219本
それが前半終了のところでは
山口 山形
52% 支配率 48%
6本 シュート 6本
300本 パス 299本
ここまで巻き返しました。さあ何があったか。
まずは毎試合挙げていますが、この試合でもMD、ヘナンの両CBが相手のパスのターゲットに対して強くあたることでボールを繋がさせませんでした。神垣もある程度山形の下がり目のボランチを捕まえるために上がりますが、中途半端に出ていくよりも行くなら行くで振り切ったほうが今のレノファはうまくいきます。
神垣が出ていったところを山形が使おうとするならば、最終ラインの4人はここまで付きます。ここで回収することがチームとしては必要なのでこの思い切りが功を奏したと思います。
しかし、ただ思い切ればいい話ではありません。その後ろでのカバーも必要になってきます。
そこで1つのキーになっているのが高橋だと思います。
この試合では山形のLSB41小野は普段はボール保持では多少上がり目に構えますが、この試合では下がり目の低い位置取りをしてきました。必然的にマーカーの高橋は高い位置を取らないといけません。彼が前に出なければここにボールを逃されてしまうので高橋も高い位置を取ります。
そして山形の最終ラインからボールが山形の前線に入った時に、上述した通りレノファの最終ラインの誰かはこの山形の選手を捕まえるために出ていきます。この時全てではありませんが高橋はウイングの選手ではありますが、最終ラインまでもどって、出ていった選手のスペースを埋める作業に加わります。
特に前選手が國分を捕まえるために上がった場合は必ずこの長い距離を戻って、前選手の場所を埋めます。このような周りのフォローがあるからこそ前に出ていく選手たちは後ろを任せてでていけるわけです。
もちろんミドルゾーンまで山形が進んだ場合は5バックを形成するように右サイドを高橋は担当します。吉岡でも同様の動きはできると思いますが、最終ラインの空いたスペースを埋めることやそこでの守備を行うことを考えると、高橋がこのポジションで使われていることに納得がいくかなと思います。
69分のところのようにまだ前線にボールがあってもこのあたりは自分で判断して早めに最終ラインに加わることを選んでいるのかなと思います。
29分以降は、30分には11藤本をMDが、34分にはイサカへのボールに対してヘナンが潰すなど、徐々にエスナイデルレノファの形が出てきました。
また35分にはRSB15前→矢島へ相手が前に出てきた時にはシンプルに裏を使うようなプレーも出て、レノファがこの4試合で行っていたプレーが揃い始めていきました。
30分までは確かになかなか自分たちの色は出せていなかったのは確かですが、最後の15分間、レノファが山形を圧倒したことで『特に前半は相手の圧にやられてしまった感がありました』と川井が言ったように、ちょっと難しいぞという印象を与えることに成功をしました。
終わりよければ、ではないですが最後の15分を圧倒したことで、山形に対して後半含めて心理的に上回れたのではないかなと思います。
今のレノファがうまくいっている現象として、『自分たちの時間を自分たちで持ってこれる』ことがあると思います。何回も引き合いに出してしまいますが、ホーム千葉戦の相手に修正されたところでの、ハーフタイムの監督・コーチ陣の緊急青空会議。それでもこの試合は答えが出せていない状況でした。
ただ、エスナイデルレノファはうまくいっていないところを前半のうちに自分たちで修正できます。自分たちの立ち戻る所というか、自分たちはこれをやるという帰属する場所(やり方)があることでこれを可能にしているのかなと思います。
2)試合を楽しむスイッチ。
そして、この立ち返る場所があるということは僕たちファン・サポーターがレノファを楽しむことができる一因になっていると思います。
わかりにくい言葉であったかもしれませんが、前回のブログで「試合に感情移入をできるようになってきた」という言葉を使いました。
サポーターもこのエスナイデルレノファはきっとこうする、この選手こんな感じじゃないかなと予想が立ちます。
・CBは相手の前線にボールが入ったら厳しくマークしボールを奪う
・ボールをつなぎ、受けた選手は逆サイドを見る
・奪われても即時奪還を狙う
・奪ったらゴールを目指す
これも前回のものをまんま持ってきただけですが、こういうのが予想としてあると思います。
ただ、そこはプロというかスポーツというもの、こっちの想像を超えた形でプレーをしてくれます。
54:20のところを挙げます。
まず一旦はミドルゾーンまでボールを運ばれてしまいますが、徐々に押し返していき、後半から入っていた大槻がLCB野田へチェイス。たまらず野田が田中渉へアバウトボールを蹴り、ここをヘナンがカット。シンプルに左サイドの田中へ。田中もあまり時間をかけすぎずにクロス。ただ、ここは山形がクリア。
なかなかハイプレスがかかる場所ではなくゲインを許してしまいます。
しかし、ここで五十嵐、高橋が右サイドで一斉に帰陣。山形CH藤田がボール処理を誤ったところで一気にボールを奪います。これを拾った神垣→矢島→逆サイドの田中へ。
田中は前回のプレーのようにクロスをあげるように切れ込みますが、これはフェイク。矢島に戻して、矢島はワンタッチで中へ。ここで待っていたのが先程ボールを奪った高橋でした。惜しくもシュートはポストを叩き、ファウルも取られてしまったようでしたが、上の4つを1分間のうちに繰り返すことでチャンスを作りました。
高橋のシュートは意外でしたが、ただこのようなプレーはエスナイデルさんになってから割りと見ますよね。「これこれ!」ってなりますし、新しいポジションの「ヒデがあのポジションで輝いてるよ!」とワクワクしますよね。
このそうそう、これこれ!といったように自分たちの武器ややり方をチームもサポーターも認識し始めている、手応えを感じ始めている。成功体験と言いましょうか、この循環が起こっているのかなと思います。
ゴールシーンのところも、まさにこれです。
矢島が山形陣の奥深いところまで侵入。クリアされるもヘナンがカット。すかさず矢島に付けて。素早く中の五十嵐。前がフォローして逆サイドで待つ高橋へボールを届けます。
十分に蹴るまでに時間をもらった高橋。ボールを逆サイドまで振られてしまった山形の守備陣は大外の沼田は見えておらずここで仕留めます。
相手陣でプレー、CBはターゲット離さない。ボール受け取った人は逆サイドを意識。
なんともまあこの1ヶ月によく聞いた言葉で仙台戦に続きゴールを陥れてくれました。
3)ちょっとずつ出ている細かい微調整
ただ、上述のものだけでJ2リーグで今後も進んでいけるわけではないので、いくつかこの試合での微調整してそうなところを挙げて終わろうと思います。
時系列をちょっと戻して前半に。
A)10分くらいでいつものはあまり下がらないようにしていると思っていた神垣と矢島。
神垣がCBの二人の間に入り、矢島がアンカー位置におちてボールを回す様子が。32分にもこの形で、五十嵐が山形のボランチの脇をとってボールを運ぼうとしていました。
B)後半頭からの大槻交代。
前半良い形で追われていて継続か。と思われていた中で大槻の後半頭から交代。
この狙いについては山形の後半からの変更を予知しながら出会ったかもしれません。
後半は山形に3枚と4枚での回しを併用していました。また田中渉のコメント通り、
”僕がセンターバックにつかまる時間が多かったので、もう少し下りて、つまらない位置まで行って組み立てに参加しました”
CB陣に捕まらないようなことを意識していました。
ここで河野から大槻に交代したことで受けられる恩恵としては守備のところ。大槻は相手CBに2枚に対しても1枚で行きコースを制限することもできるので、後半のレノファは4-1-4-1気味でプレーをしていました。
山形対策ではなく、むしろより前からしっかり嵌めていきたいという狙いであったかもしれませんが、上述した高橋のヘディングのシーンなどはこの積極的な交代策が当たった形でした。
と、山形戦の振り返りという要素はちょっと薄めでしたが、4試合連続クリーンシート。自分としては想像ができなかった結果が出ていますが、日に日に良くなっていくチームを見るのが楽しいです。
今後は難しい試合もきっと出てくるとは思いますが、乗り切った先にJ2残留と自分たちの目標とするものが見えてくると良いなと、多少欲張りを言いたくなるような気持ちでもあります。
さあ、もう今日の話ではありますが、苦手長崎。でも去年は勝ったし、今年も中山レノファでかなり追い詰めていました。やってくれるでしょう。
ここまで読んでいいただきありがとうございます。
※文中敬称略