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やり方変わっても根幹は変わらず。 V・ファーレン長崎vsレノファ山口@トランスコスモスS 2023年7月9日

5試合連続無失点。エスナイデルさん就任後の成績は6戦して3勝1敗2分。積み上げた勝ち点は11。順位も16位まで上がりました。得失点は0ではありますが、試合内容としても改善されており、ポジティブに色々見て行けそうです。

今節は上位の長崎。しかもアウェイでの勝利。内容も前後半で全く違う試合になりましたが、粘って勝ち得た勝ち点3。山形戦に続く連勝。繰り返しになりますが、前に進んでいる印象のある試合となりました。

では、今節は下記について考えていきたいと思います。

1)今までと違った方法での支配率の高さ。

2)連戦疲れと割り切り。

得点者
長崎        山口

なし        15分 河野

 

1)今までと違った方法での支配率の高さ。

まず今節のトピックスとしてはヘナンの欠場があったと思います。松本と並んでエスナイデル体制を支えてきた選手であったので、ここを埋めるとなると、、、

そこで起用されたのが前貴之。チーム事情で今季もCBを務めていましたが、出場する試合では高さであったり体格面で競り負けてしまう場面などもありました。ちょうど勝ちのない時期にCBを務めていたこともあり、高さとか大丈夫か、という懸念点は少ないながらにあったかと思います。

そのためトップスコアラーのファンマが出場停止であったのはラッキーではありました。都倉・ジョップと高身長の選手はいたもののやはり怖さという点では別物であったと思います。

 

結果を見れば起用は大当たり。ポストプレーで抑え込まれてしまう、多少あわや被弾のようなヘディングもありましたが、体を最後まで貼ったり、周りの選手との連携で0点に抑えることに成功しました。

そして前が起用されるということは彼の特徴でもある後ろからのビルドアップについて変わることも予想されました。

自分たちのビルドアップを安定させるというところで、自分がCBに入ったときの役割はそこだと思っていました。その中で自分たちの時間を多く作れたと思いますし、ラインブレイクしてゴールに迫るという点ではかなり良い感覚もありました

(引用元:第25節 V・ファーレン長崎 | レノファ山口FC

と前自身も話すようにビルドアップの起点となっていました。で、どんな感じであったかというと、

前節のブログのチャプター3のAで書いた神垣がCBの2人の間に降りて、矢島が神垣が務めていたアンカーの位置に入って、ビルドアップするときがあったことに言及しました。

この日のレノファは前がCBに入ったことで後ろからの配球が巧みであったことや、この神垣や矢島のポジションチェンジが前半長崎を圧倒した要因の一つでした。

 

これまでエスナイデル政権下、仙台戦を始めレノファの目立ったシーンとして挙げられるものの1つに、ハイプレスを仕掛けてボールを奪回する。またはそれを回避するために相手がロングボールを蹴った場合、ヘナンや松本がこれを回収することで、もう一度自分たちの攻撃につなげるプレーがありました。そうすることで自分たちの攻撃をする時間を増やして、ボール支配率を高めました。

 

しかし、この試合でいうとそのような機会はだいぶ少なかったと思います。なぜなら、ボールを動かすことで相手へボールを渡すことなく、試合を支配し、ボールの支配率を高めていたためです。

乱暴な言い方をすれば、

これまでの数試合は守備の強度をあげてボールを奪うことでボール支配率を高めていました。

今節は巧みにボールを動かし、選手の立ち位置で相手にボールを渡すことなく、ボール支配率を高めていきました。

 

並びの確認。長崎はOH13加藤を一列前に上げて4-4-2の形。アンカーの神垣を消しながら、、、というオーソドックスな形。それに対してレノファは神垣がアンカー位置でこの2枚を引き付けているときもあれば、神垣がCBの間に落ちて後ろを3枚にし、アンカー位置に矢島が降りて長崎の前線2人に対して4人で回すような場面も。



正直この動きについては特段趣向を凝らしたというわけではなく、単に長崎が準備していなかったような節があります。

この数節レノファはあまりビルドアップにこだわるというよりも、ハイプレスなど敵陣でのプレーをすることに重きをおいていたと思います。そのため、自陣からは割りとSB経由であまりリスクを犯さずボールを運んでいました。

ヘナンから沼田、MDから前、もしくはWG高橋といったパスが多かったと思います。そのため、長崎はアンカーの神垣を都倉と加藤の2人につかせることで消して、SHの澤田や増山のところでボールを奪ことを考えていたと思いますが、レノファが選んだのはそのルートではなく、アンカーの選手を動かして真ん中からのビルドアップも行うことでした。

 

山形戦でもこの形は使っていましたので、長崎が全く警戒をしていないということはありえないと思いますが、どの形になってもアンカー位置に対するケアが割とゆるい傾向にありました。

そのためファーストサードのところでは何回か相手を飛ばそうとしたパスで引っかかりシュートまで持ち込まれってしまった場面はあるものの、ミドルサードまでボールを運ぶことは比較的簡単に行えていたと思います。

その証拠に41分のところでも相変わらず、神垣がCBのところへおちてアンカー位置にはいった矢島に対してはほぼノープレッシャー。長崎はここに誰かをつけることは諦めて、先制されていたこともあってか、まず自陣に戻ることを選んでいたように思えます。

立ち位置のところで、相手がプレッシャーを掛けられないような立ち位置は取れていたと思います。相手がどこでディフェンスのスイッチを入れてくるかですが、サイドハーフが入れようとするところでの回避の仕方が良かったと思います。相手も嵌めどころがなく、バラバラになっていた感じがありました。

前貴之のインタビューですが、この言葉通り長崎に絞らすことなく試合を進めることができました。

 

そして、前半キーになったのが矢島と思います。アンカーの位置におちてくることもあれば、ミドルサードのところでもフリーマンのようにボールを引き出すポジションを取ります。今節は僕の感覚ですが、矢島の動きに合わせて前線の選手たちがポジションをとりなおすことが以前の試合よりも多かったように思えます。

その動きの1つがWGの吉岡や田中に代わりサイドに張ること。

IHの矢島がサイドに張り、WGの2人はインサイドに入ります。これに合わせてSBの沼田や高橋もインサイドの位置に入るのか、後方で構えるのか、追い越していくのか、など味方の立ち位置を見ながらポジション取りをしていきます。

僕自身がやることはそんなに変わらないですが、相手にとってどこが嫌かを見ながらボールを受ける。自分のところで前向きに入ると一気に攻撃のスピードを上げられるということは意識していました。

(引用元:第25節 V・ファーレン長崎 | レノファ山口FC

矢島の試合後インタビューにもある通り、彼にボールがわたることでチームとして攻撃のスイッチになり、それに合わせて連動していきました。

こうなってくると矢島を囮にするような形も出てきます。

例えば23:15あたり。

LCB15前がボールをドリブルで持ち運んだところから。たまたまサイドが変わっていた長崎の澤田が前のドリブルに対してコースを切るように追っていきます。

前方のタッチライン沿いには田中ではなく矢島。田中は矢島のポジション。沼田は矢島の位置や前がサイドに流れるような形でドリブルをしているので、インサイドへ。

澤田は矢島へのコースを切るために速度を上げますが、前が選んだパスコースは中にいる沼田。レノファのポジションチェンジに長崎はついていけず、沼田はゆうゆうと『ボールを受けたら反対サイドを意識』と吉岡へのサイドチェンジを成功させました。

そのほかにも40分過ぎには裏へのランニングを行ったり、ゴール前で吉岡へパスを出すと見せかけてシュートを放ったりと、攻撃の核としてチームを動かしていました。

 

吉岡にも言及。

後半早々に交代となってしまいましたが、矢島同様にサイドに張ってボールを引き出す、サイドチェンジのボールを受けるなどまず右サイドのボールの納めどころとなっていました。

吉岡がボールを失わずにここでキープをすることで全体が上がっていく時間を作れます。またボールスキルが高いほか、ハードワークもいとわないため、ボールロストが起こったとしても、すぐに切り替えてプレスに行くことができることもあり、彼が出る試合はこの試合同様にDAZNの攻撃の指数は右サイドが高い数字になるのはこのためです。

また、左サイドの田中に比べると右サイドの吉岡は何回かIHでの出場をしていることもあり、矢島や五十嵐、高橋とのポジションチェンジをすることで(ローリング)、中でのプレーもできるので、中間ポジションを取りボールを引き出すなど前半は機能していました。

 

そんなある程度好調であった前半でも押さえておきたいのが、

・ベースの部分はエスナイデルナイズされていた

・押し込んでも点が取れないのは前政権と同じ

 

まず「エスナイデルナイズされていた。」ですが、吉岡のところでも多少触れましたが「敵陣でのボール奪回」「逆サイドを見る」などエスナイデル監督が就任してから出ているキーワードのプレーは随所に出ていました。

同サイドでのプレーばかりをすれば長崎もプレスをかけやすくなりますが、特に前半は相手にファーストディフェンダーを決めさせないくらい、サイドチェンジを織り交ぜつつボールを動かせていました。もちろん、ボールをとられてしまえば「高いところでボールを奪い」にいき2次攻撃、3次攻撃につなげていきました。

 

ただ、矢島も前も言及していましたが、前半のうちに2点目をとることができなかったのは今後の宿題かなと思います。惜しいところまで行きながらも得点が取れないのは前政権での反省点の1つと思います。長崎が中を固めていたのもありましたが、ここを最後まで攻略しきることができました。

もちろん1点は取れていたので、望みすぎは良くないですが、上位に進出するためにはこういう前半で2点目をとる試合というのはいずれ必要となってくるかと思います。

 

まあ、若干のエクスキューズはあります。河野の負傷。負傷後もヘディングでゴールを狙うシーンはありましたが、相手を背負うプレーがほぼできず足に踏ん張りがきいていませんでした。河野のところにボールをほぼ入れることができなかったため、割と外回りの攻撃が増えていたように思えます。

案の定「右足関節前距腓靱帯損傷」で約4週間の離脱ということでしっかり治して帰ってきてほしいものです。

 

2)連戦疲れと割り切り。

で、後半です。

後半になってもう少し前からプレスでハメるという意気込みで入ったんですが、そのプレスでうまくハメることができなかったなという印象です

(引用元:【公式】長崎vs山口の選手コメント(明治安田生命J2リーグ:2023年7月9日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp) )

とカリーレ監督がおっしゃっているように、長崎はもう一度プレスを整備するものの、あまりレノファは前半ほど付き合わず。おそらく長崎のボランチの位置が高くなっていたことも見ていたのか、前半のアンカーのところを使うのではなく、サイドへ変更することであまり危ういビルドアップはしないようにしていきました。

 

ちょっとてこずってしまったのが、長崎の交代選手があったと思います。後半頭から入ってきたクリスティアーノ、名倉の攻撃に特徴のある両選手。後半開始のプレーから強度高くレノファゴールに迫ってきました。

まずは名倉。特にレノファのアンカー神垣の脇の部分、左のハーフスペースを主戦場とし、中間ポジションを取りボールを引き出す、エリア内へ侵入をするというプレーを繰り出してきます。

クリスティアーノについてもこの日は多少足にボールがついていないようなキックもありましたが、ボールを納めてからの迫力はまだまだ健在。一つの納めどころとして長崎に押し込まれる要因になりました。

 

そして、レノファも別の問題が出てきます。

エスナイデル監督が求める強度には慣れてきたか?

最初に比べれば慣れてきましたが、90分を通してやるのはかなりきついところがありますので、それをこれからの試合でも90分、全員がやれるような体は作っていかないといけないと思います。(引用元:第25節 V長崎 | レノファ山口FC

と吉岡が試合前インタビューで話していた通り、3連戦の最終戦ということもあり徐々にガス欠に。問題点として出てきたのが、後半からCF都倉が神垣、前、松本につかまらないような場所でボールを受ける機会が出てきました。

52分のようにGK波多野から早いボールのバスがレノファのCBの間に動いた都倉へ通りここから長崎が全体的に上がっていくようなプレーが増えていきました。

60分には名倉、62分には鍬先とCFに替わりボールを引き出すようなプレーが出てきてしまっており、レノファのMF陣もDF陣もこの位置をケアすることができず、ちょっとずつ長崎のペースになっていきました。そして都倉に替わり、ジョップがCFに入りこの流れが加速していきました。

 

そんな中、節目であったのが70分の田中の被ファウルでの治療時間だったかなと思います。

矢島がインタビューで

90分続けて前から行きたいという理想はあると思いますが、自分たちの最終ラインの中盤のスペースを上手く相手が使い始めるようになって、間がコンパクトではない状況になりました。
監督からはそこを絞めて、センターバックはとりあえず持たせて良いという指示もありましたので、うまく割り切れました。

と明かしたように、おそらくこの時間を利用してベンチとピッチ内で情報の共有が行われたのではないかと思います。

ハイプレスはいったんやめてまず引くこと。交代で入っていたRWG野寄も高橋や吉岡同様に5バックの一番右に落ち、5-4-1の形にし、神垣の隣に矢島や山瀬がいることで、長崎に使われてしまっていた場所を消します。

体力的な問題もあったので割り切って引く。ただ交代枠は2枚まだ残しておく。

90分以降に長崎のゴール期待値が増えていますが、これは戻りながらのヘディングだったり、枠に飛んでいないヘディングだったりと数字ほどは寺門が脅かされるシーンはありませんでした。

むしろ交代枠を2枚のこしていたことで、最終盤に小林と上本をそれぞれボール奪った後のゲインする選手、高さ対策の選手としてそれぞれ投入。皆川と上本で単純に高さではなく小林を使って、高さで跳ね返した後のことまで考えていたと思います。

「栃木戦も相手が蹴ってきそうならば、逆に相手につながせようという思いもありました。」

五十嵐も上記のことを言っていたように、相手がどう出てくるかはしっかりと分析し、手を残していたエスナイデル監督が今回はカリーレ監督を上回ってくれたかなと思います。

80分くらいのベンチで作戦ボードをいじるエスナイデル監督、テクニカルエリアで難しいかをするカリーレ監督。実況も形容していましたが、まだ2枚カードを切れるリードしている監督とすべて手は打って戦況を見つめる追いかける側の監督という良い対比になっていました。

 

このままレノファは無事に勝利。今季初の連勝。5試合連続のクリーンシートとなりました。

まだまだ降格圏は勝ち点6で安全圏とは言えませんが、8位群馬とも勝ち点6差と団子状態なのでいくらでもまだ順位は上げられる状況にあります。

天皇杯は敗退してしまったこともあり、今後はおそらく3連戦はなかったかと思います。いつもエスナイデル監督が言っているようにしっかりリカバリーをする。ことができるかと思います。

90分しっかり今のレノファの形を表現するには相応の体力が必要なのは見ているこちら側にもひしひしと伝わってきます。

ただ、これを抜けた先に何かまた一皮むけたエスナイデル・レノファ(フアンレノファ?)が待っているのだと思います。

 

今節は「ビルドアップ・立ち位置で相手を動かしてボールを握る!」「割り切って体張って守る!」といったようなどこかで聞いたようなフレーズでの勝ち方でしたが、これは引き出しの多さであったり、積み重ねということもできるかと思います。

次節はいわき戦。勢いある相手にどのように戦ってくれるのか楽しみにしたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(※文中敬称略)