6試合連続でクリーンシートとうまく来ており、相性の良かった秋田とのホームでの試合。試合前の勝ち点差は1とクリーンシートいかないまでも勝利が欲しい試合でした。
結果としては1-2の敗戦。残留を争っているような順位のチームといえばそれまでではありますが、6試合中3勝3分けで来ているようなチームにはちょっと見えないような敗戦内容だったように思います。
このいわき・秋田と割とエスナイデルレノファが組みにくそうな相手に対して1分1敗。内容としてもポジティブな要素があまりないような試合であったと思います。
理由としてはボールを保持した時、もう少し言えばボールを持たされた時のアイデアもそうですが、この試合は特にプレーの選択のところで大きなエラーがあったように思えます。
ということで今回は下記について考えていきたいと思います。
1)ピッチ内外の意図のすれ違い
2)WGの質であったり、ゲームをコントロールするであったり。
【得点者】
山口 秋田
86分 池上 83分 才藤
90分 丹羽
1)ピッチ内外の意図のすれ違い
レノファが4-3-3、秋田は4-4-2といつもと変わらずの形で試合開始。
秋田はミドルゾーンちょっと高めで構えつつ、レノファのアンカー神垣をツートップの29齋藤・17梶谷が挟むように監視しつつCBへのプレスを狙います。その後ろについてはある程度ポジションが嵌る形になっていました。
前半は20分あたりまではファイナルサードに入るまでが大苦戦。レノファの前線の選手が秋田につかまっており、なかなか運べない状況が続きました。
この時間帯によく見られたのがエスナイデル監督の選手へのプレー注文をしたり、注文したプレーでない場合、不満を表す姿でした。
今節維新スタジアムのメインカメラがだいぶ引いてくれていたこともあり、ピッチ横のエスナイデル監督の姿もしっかり映っていました。
最初に僕が気づいたのが8:40のところ。神垣が最終ラインに落ちてボールを受けたところで、ショートパスを選択したところで、エスナイデル監督は左手で前線を指し、ロングボールを蹴ることを促すようなポーズ。その後両手を広げて不満を表していました。
その後ヘナンがつなぐところがなく、裏へ蹴っていましたが、もちろんレシーバーもおらずピッチ内は多少混乱気味。続く13:20にも同じく神垣のところで指示を送るもその指示はかなわず、かなりイライラした様子。
そして14:30には跳ね返されたボールを沼田がバックパスで寺門まで戻して、そのボールを前が受け取ります。
跳ね返されたボールということもあり、ある程度前線にレノファの選手がいたことや、秋田がおそらく最終ラインをあげていたこともあったのでしょう。前が矢島に遊びのパスを出したとことでやはり大きなジェスチャー。次のプレーで前はすかさず左サイド奥へボールを送るような姿がありました。このボールもやはりレノファの選手が競ることはなく、セカンドボールも沼田が納めることができず。小林が隣で怒っている姿も映っていました。
試合後の前のインタビュー。
相手のやってくることが分かっていた中で、自分たちがそれを打開する策、パターンがなかった。選手それぞれの役割がある中で、相手のイヤがることができなかった。それが攻撃が停滞してしまった理由かなと思います。
ボールを持たされている中で、立ち位置とかミスマッチというのをうまく作れなかったし、作ろうとするような動作もなかった。それは選手だけの判断ではなかなかできないし、監督の指示もある。その中でうまくどういうふうに打開していくかというところと、 そこに放り込むボールの質というところはやっぱり低かったと思うので、結果的には仕方がないかなと。自分たちが招いてしまった敗戦だとは思います。
(引用元:【公式】山口vs秋田の選手コメント(明治安田生命J2リーグ:2023年7月22日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp))
このコメントが端的にこの試合を表しているのかなと思います。
・ボールを持たされた時や嵌められた時にそこから抜け出す策を持てなかった。
・ただ、それを模索しようするにも監督の指示がある中で、やろうにもなかなか何を実行するかの判断ができなかった。
・監督指示の攻撃をやったがその精度を欠いていた。
上記の前半20分過ぎのところのエスナイデル監督の様子で色々と難しかったのかなという印象があります。たまたま今まで映っていないところが今回カメラで映っていたのかもしれませんが、実際にピッチ内では解決策が見えてこなかったのが現実でした。
ではなぜエスナイデル監督はロングボールを指示していたのか。
・単純に相手の裏のスペースにボールを送りこみ、ゴールに近いところで勝負をさせたい。
・高い位置で起点を作りたい。
・相手の最終ラインを押し下げたい。
などがあったと思います。
寺門もインタビュー内で
前半から低い位置でずっと自分たちがボールを持っていて、相手もそんなに来ていなかった。そういう中で裏のスペースが空いていたので、そこを狙っていこうという話がありました。(引用元:【公式】山口vs秋田の選手コメント(明治安田生命J2リーグ:2023年7月22日):Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp))
と述べているように、レノファの自陣のボール保持に対して、秋田はミドルゾーンで構えていましたが、最終ライン自体は割と高め。この秋田のコンパクトな守備に対して、レノファの前線や中盤は思うように相手を外す動きができていませんでした。(前選手の言葉の通りです)
そのため、秋田の最終ラインの裏をシンプルに突くことであったり、秋田の最終ラインを下げるため、裏へ抜けるアクションを小林や高橋らが起こすことが必要でした。
まず動きがあったのが飲水タイム後のレノファのふるまい。
エスナイデル監督が求めるようなロングボールが多少増えていきます。監督自身も不満を表すようなシーンも減っていました。
20分、22分と細かくつなぐシーンも見られており、28分には松本⇒沼田とつなぎ、蹴ると見せかけての矢島へつなぐシーンがあったかと思えば、その流れからのクリアボールをGK寺門が一気に高橋まで一本のバスで秋田の最終ライン裏を打開するシーンも出ました。
続く、30分にも矢島への裏へのボールに対してもサムアップを見せるなど、徐々に不満モードも解消。
WGやIHの選手が裏抜けをすることで秋田の最終ラインは下がることになります。そうすることで秋田の最終ラインと中盤の間にスペースを作り、そこでIHの矢島や吉岡が仕事をする、こういう展開が作りたかったのかなと個人的には感じていました。
その形が出たのが40分。後ろで回しているシーン。エスナイデル監督は不満げな様子ではありましたが、沼田から小林に出すと見せかけて、そこに食いついた秋田RSB22高田の裏を吉岡が突きます。そこから小林がインナーラップで追い越してニアゾーンへ侵入することができました。
また43分も矢島が右サイドの裏を狙うようなランニングを見せたところで、15前からCF皆川へスルーパス。秋田がちょっとずつスペースを空け始めていたところを突き始めていたように見えました。
裏抜けであったり、長いボールも混ぜつつ、穴が空けばショートパスなどでも打開するような形が出てきており、じれずにやり続ければ。。。という展開になっていきました。
ただ、どうもこの辺りの狙いは実際エスナイデル監督が狙っていなかったように思え、選手たちのアドリブのようなものだったのではないか。正直策が読めないなと思った後半へ。
2)WGの質であったり、ゲームをコントロールするであったり。
そして後半に入りさらにロングボールを多用する動きは加速。
キーになっていたのが神垣。対角に振るロングボールをズバズバ通していきます。
そしてちょっと驚きの交代が。チームの大黒柱の前が58分に交代になります。前半こそロングボールを蹴る機会もありましたが、後半は主に神垣がこの役割を担っていました。現に鋭いボールを蹴っておりエスナイデル監督も神垣やCBにこの役割を託したのかなと思います。
前を下げることで高橋を本職のRSBに戻し、野寄をRWGに置きます。前線も皆川ではなく梅木に交代。ロングボールを受ける人選を変える交代ではないかと。
しかし、正直この交代が多少悪手になったように個人的には思いました。
その理由として
・対角にボールを蹴るのではなく同サイドにロングボールを蹴ることが増えてしまった
・矢島・五十嵐がピッチ内にいたにも関わらず彼らの頭上をボールが飛ぶ展開がより増えていってしまった。
ことが挙げられます。
対角のロングボールを味方に届けるには距離もありますし、パスが成功する難易度は高くなります。しかし、通れば相手の陣形を横にも縦にもずらすことができます。同サイドのロングボールですともちろん通ればチャンスになるときはありますが、タテのみの移動なので相手も割と対処がしやすくなります。
もしかしたら、そのセカンドボールを狙って2次攻撃につなげることを考えたのかもしれませんが、あまりセカンドボールを拾えるような人の集め方をしていなかったので、これはなさそうでした。
RSBに入った高橋はどちらかというと同サイド志向が15前に比べて高いように思え、サイドを変えるような意識が多少チームとして薄れたように思えました。
そしてこれ以上に、なんでかな、と思ったのが、前半はロングボールの合間に挟んでいた短くつないていく形がほぼ出なくなりました。
これも前貴之がいなくなったこともあってか、このようなボールの出し手がいなくなり、なぜ五十嵐を入れたのか?矢島を残したのか?という展開に。アタッキングサードで質を持った選手をピッチに置いておきたかったのかもしれませんが、この試合はそもそもアタッキングサードに良い形でボールが運べていませんでした。
ロングボールを使うことでなんとなく相手陣へ行くことはできましたが、結局は相手のブロックの外での話。
中央であったりハーフスペースへの侵入はほぼなく、秋田へ脅威を与えることができていませんでした。
下記のエリア間バス図を見ていただいた通りですが、きれいにUの字になっており、相手のゴールまであったり、バイタルエリアなどにも侵入する機会が少なかったことが伺えます。これではシュートは打てません。
そしてこのWGにボールを届ける際にも多少ボールがずれており、満足にWGが良い形でドリブルを始められなかった。
また、WG自体がドリブルで崩すというよりも、外してクロスやシュートをあげるようなタイプということもあり、この形でもなかなか良い場面を作ることができずに、時計は進んでいき、CKから久しぶりの失点を喫してしまいました。
多少皮肉めいていたのが、池上のFKを取ったところは五十嵐がハーフウェイライン付近でボールを引き取り、ターンで秋田のプレスをいなしたところからでした。後半全く見えれなかった形でのボールのゲインからとったFKでありました。
この数試合息切れはあるものの、エスナイデル監督のとってきた策については概ね好意的に受け取っていましたが、この試合については正直この方法でよかったのか?という疑問符を持ちました。
この方法をやるなら、なんでも氏が挙げていましたが、バスケス・バイロンのように質的優位を出せるようなWGを配し、IHにはこれをサポートするような五十嵐をもっと運動量をあげたような選手でないとなかなか務まらないような方法だな、とちょっと心配なものであったように思えます。
相手陣へアタッキングサードに入ったときの選手間の距離も遠いため、ボールを失ってからの【攻⇒守へのトランジション】も遅く、即時奪還はできず。また、秋田の攻撃への制限もなかなかかけることができず、【守】の対応のところまで悪い流れになってしまったかなと思います。
そもそもここまでレノファが盛り返してきたエスナイデル監督の色もなかなか出せないような方法であり、時々出すにはいいがこれをスタンダードにするのは危ないかなと思います。
矢島自身も試合前インタビューで
-長崎戦の後半に比べるとボールを動かせるという感じはあったのではないか?
全然動かせると思っていました。ただ少し相手のペースにはまったという感じがありました。
-得点に結びつけるために、どういうことが必要だと考えているか?
ゴール付近までは行けているという感じはありますし、いわき戦も前半からチャンスは何回かありました。チャンスは相手にもありましたが、自分が出ていれば自分たちのチャンスは作れているという感じはあります。出ていれば何とかなるという感じはありますが、ただ(エスナイデル監督が就任して)サッカーが変わり、(脚を)攣ってしまうことがあります。
そこで交代してしまうのが自分としては悔しい。
(引用元:第27節 秋田 | レノファ山口FC)
と述べているように、今節のようなダイレクトに相手陣深くを狙う必要はないのかなと思います。ダイレクトにボールを送り込む分、スプリントも増えるでしょうしそれは矢島の出場時間にも影響します。
特殊な秋田に対する方法であった、と思いたいなと思います。
さて、連続無敗、無失点も6で止まりました。
2失点目は明らかに得点への意識になっており、
追いついた時点で失点しないように考え方は変えないといけないですし、あの時間帯での失点は本当にやってはいけないことですので、次の得点を狙うこともそうですが、失点しないことを先に考えないといけないと思います。(池上)
ディフェンスの時に今まで冒していなかったようなミスがあったと思います。チーム全体でのディフェンスですが、全員でしっかりと守ることはできませんでした。(エスナイデル監督)
とあるように、オフサイドっぽくはありましたが、どこかふわっとしていた感は否めません。
ただ1敗したということです。今日負けたからといって最悪のチームになったわけではありません。6戦のあと1敗しただけだという印象です。
このメンタリティでまだまだ後半戦しっかりと勝ち点を積み上げていってほしいなと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
(※文中敬称略)