レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

2022年レノファ山口について

入れ替え戦がおわり、J2リーグアウォーズも終わり、今年のJ2リーグも閉幕ですね。ワンチャンベストゴール賞に高井のゴールが入るかなと期待をしていたのですが、残念でしたね。いろんな方がおっしゃってましたが、「山口」「かずま」選手とのことで、惜しい!いやちょっと山口がちがう!などうまくオチが付いてしまったなと思っております。笑

 

さて、2022年のレノファの成績13勝11分18敗勝ち点50 51得点54失点 得失点差は-3の16位でした。今期のレノファについて振り返ってみたいと思います。

(主な引用元footballlabさん 22年と21年のレノファの比較ページです)

チーム比較 2022年のレノファ山口FC vs 2021年のレノファ山口FC | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB


2021年は10勝13分19敗勝ち点43 37得点51失点 得失点差は-14の15位。
昨期に比べ得点が10点以上伸び、失点があまり変わらなかったこともあり、得失点差は大きく改善。勝ち点も久しぶりの50点台に乗せることができました。
順位自体は17位と1つ後退。昨年立てられた「2年でJ1昇格」という目標には残念ながら及ばない結果でした。シーズン途中5戦勝ちなし、7戦勝ちなしの期間もあり、なかなか波に乗れない時期が長く、順位としては納得をせざるを得なかったと思います。
しかしながら、難しい時期を過ごしながらもズルズルと順位が下がっていかずに終盤戦巻き返すことができたことは、来期につながるのではないか思います。
では、今年どんなだったかなと、振り返っていきたいと思います。

 

1)4-3-3の導入

非常に選手は前からアグレッシブにプレッシャーを掛けて、ボールを奪いに行ってくれました。その点は少しは見せられたとは思います。(中略)攻撃的に、守備をしていてもボールに、人にアタックしようということは言いました。前向きにどんどん出ていくということを言いました”

 

こちら名塚監督の試合後インタビュー。2021年シーズン32節ホームヴェルディ戦、つまり名塚監督の初陣のものです。1年前も今と言うことほぼ変わってない!以上! と終わるのは簡単なのですが、ちょっと深堀りをしていきたいと思います。

名塚監督の狙い自体は基本去年も今年も変わらず。昨年も渡邉前監督を引き継ぐというよりかは、だいぶ霜田元監督のやり方に戻した印象が強いのは誰もが感じるところだったと思います。フロントもそれを依頼していたのではないかと思います。そのため、就任後はまず「もっと前から奪いに行く!」という修正をすることで、時間的にも精一杯だったかなと思います。

そして今期名塚監督が取り入れたフォーメーションは4-3-3。

両ウイングが高い位置でサイドに張り、IHがハーフスペースを使いつつ、SBも積極的に攻撃参加。最終ラインは2枚でアンカーとGKを交えてビルドアップ。奪われたら即時奪還。ディフェンスラインも前線との距離を空けないようにハイラインをキープ。マイボールになればまず高い位置にいるウイングを狙う。だめなら最後尾からやり直しというのが狙いだったかと思います。

 

まずシーズン序盤に目立ったのが、橋本ー田中ー沼田の左サイドのトリオでした。
昨期名塚監督就任後は渡部・楠本らのロングボールやサイドチェンジを使いながら、割とシンプルに縦へ早く、というような展開が多かったように思います。

そして就任後の得点の内訳をみると10得点中6点がセットプレー(そのうち直接FKが3本)。流れからの得点というよりはセットプレーでなんとかした、という見方もできたと思います。そのため、昨年の3-4-2-1ではなく4-3-3にすることで【流れからの得点を増やしたい】というのがあったのではないかと僕は考えました。

沼田が大外に張り、相手の裏を取るような動きを見せ奥行きも使いつつ、沼田の空けた場所に田中、橋本が侵入し左サイドを攻略していきました。名塚監督が今期意識的に行った点として、大外で幅をしっかりとり相手を広げさせて、ハーフスペースを使いながらのサイドの攻略をし、相手のニアゾーンをとることが挙げられると思います。引用元のfootballlabさんのホットゾーンの項で左サイドの大外の高い位置のゾーンでのプレー頻度が昨年より増えているのがわかると思います。またチームスタイルでも左サイド攻撃の指数が上がっています。

序盤戦は多くのチャンスを左サイドから作れており、相手の対策があまりされていなかった序盤戦は大きな得点源として彼ら3人が大きく寄与しており、その間のチームの成績もプレーオフ圏内ペースとまではいきませんが、10節を終えた時点で3勝5分2敗、勝ち点14と悪くない数字を残せていました。

この間目立った活躍をしていたのがLWG19沼田でした。第2節の秋田戦で初得点。続く3節新潟戦でもスピードを生かした縦の突破からアシストを記録するなどルーキーながら得点源として存在感を示していました。最終的に7得点、2449分の出場とルーキーとしてはまずまずの記録を残したと思います。ただ後述するフォーメーションの変更などでシーズン序盤に比べ、与えられた役割がなかなか沼田の特徴と合致せず、活躍が影を潜めてしまったことは来期以降の沼田の活かし方をどうするか、チームの課題であるかと思います。

 

話をチームに戻すと、多少好調には見えつつも失点シーンについては同じような形を繰り返してしまったことが続きました。まずは相手のカウンター。前から嵌められてのショートカウンターだけでなく、ロングカウンターで仕留められてしまう失点も序盤戦に区切っても少なくない数ありました。(A新潟、A水戸、H栃木、A金沢以下略)

また、武器であったLSB橋本の裏をつかれてしまうというシーンも散見されるようになりました。長崎戦での名塚監督の談話でも「あれだけ左サイドの選手が軽い対応をしてしまうと」という苦言が出る試合もあるなど、橋本が上がったあとはどのようにして守るのか?という問題が顕になっていきました。上がらなければ橋本の良さはでない、ただそこは相手も突いてくるという、ジレンマを抱えたまま試合が続いていました。

第15節のA金沢の終了間際のカウンター被弾で残念がらトップハーフから落ち、ボトムハーフへ。気づけば今期の最低順位18位へ。

ただ、こんな状況でもLCBヘナンが橋本の後ろをケアする、ビルドアップの起点にもなる活躍を見せれば、沼田と橋本はそれぞれ群馬戦・甲府戦で維新劇場弾を決めるなど、チームとしてなかなかうまく行かない状況もなんとか誤魔化しつつ進んでいきました。

しかしながら、H新潟、A熊本など前から嵌めに来るところに力負けをするなど、ビルドアップ時に嵌め込まれたときの解決策は以前見つからないまま夏場を迎えました。

 

2)1つの岐路A栃木戦

そして半分を折り返し一時期15位まで盛り返すも、また徐々に順位を下げて迎えた第27節アウェイ栃木戦。夏の移籍で再加入の高井を加えるもののチームの状態は上向かず。この試合で起こっていたのはやはり前からくる相手に対してビルドアップがうまく行かないこと。また、ミドルサードへ入ってもファイナルサードへ行く道筋を作ることができず、無駄にレノファの選手間が近くなり相手チームのマーカーも自ずとコンパクトになってしまい、行き詰まり感が如実に出てしまいます。そしてディフェンスも嵌らず早々に2失点を喫し迎えた後半。レノファが採用したのが去年も使っていた3-4-2-1。

まず相手にフォーメーションを合わせたことで、ボールの非保持時に前線から1対1で嵌めやすくなりました。「守」のところで改善ができたことで、守⇒攻に移る際にもボールをすぐ失ってしまうことが減り、マイボールをキープでき、桑原のインタビューでもあったように、攻撃時は並びを変えたことで人の距離感も改善しました。狙い自体は大外使って〜、というのは変わりませんでしたが、各選手の立ち位置が整理されたことで選手のポジションが被ってしまうなども減ってきたと思います。特にこの時期はけが人やコロナの関係で毎試合人が変わるといった形で連携面に難を抱えていたため、この変更は良かったのではないかと思います。

また、変更直後LWBは桑原でしたが、WBが上がったその裏を突かれても左右のCBが対応できるなど序盤戦の失点パターンも減っていきました。

 

この3-4-2-1へチームとしてアジャストするための時間が数節続きますが、今思えばこのあとの28節から34節はチームの成長を感じる事ができた楽しい時期だったかと思います。

まず新戦力の話として、高井同様に前が松本山雅から戻ってきてすぐにフィットし、33節A徳島戦より成岡が育成型期限付移籍で加入。既存戦力で高橋がRCBとして台頭。同じ右サイドでWBとして吉岡が定着。梅木がCFとしてスタメンに出続け陣容が固まっていきます。

そして個人的に最も大きかったと思うのがCBとして生駒が成長していったことがあったと思います。シーズン序盤はCBで出場したものの怪我のためかしばらく欠場。その後SBとして存在感を見せつつありましたが、フォーメーションを変更した数試合はベンチからの試合が続きましたが、35節H町田戦から欠場の渡部に変わりCBの真ん中へ。そこから持ち前の高さを活かし相手の攻撃を跳ね返し、ビルドアップでも前とともにレノファの最後尾を支えていきました。ラストピースは成岡という意見もあるかと思いますが、個人的には生駒が最後CBとして成長したことをラストピースと考えています。時系列は前後しますが、菊地・渡部の両ベテランが引退をしてしまい、補強はあると思いますが今いるメンバーで核となる選手が最後出てきたのは今年の収穫であったと思います。

この3-4−2−1に変更したことでビルドアップも安定したように思います。可変させて4-3-3のようにするときも多いですが、単純に後ろ3枚(+GK)、ボランチ2枚で回すことで相手に嵌め込まれることが以前より少なくなったと思います。また、ボールを回すことに苦労する場面でもとりあえず梅木にあてる、という逃げ道を作れたことも大きかったと感じます。もちろんダイレクトに梅木を使う手も見せ、相手への選択肢を増やすことができました。

そしてLWGに入った橋本がまた違った怖さを見せられるようになったと思います。4-3-3時のLSB橋本はまず組み立てに参加してそこから前線へ上がって、と一度橋本を経由してからといった形で多少相手に読まれ、そこで引っ掛けられてのショートカウンターなど、色々できる選手がゆえのリスクもありました。前述した上がったあとの自分の背後のケアなどもそうです。しかし、フォーメーション変更でこの組み立てのタスクから解放することで、橋本自体が相手SB裏へ抜け出るなど使われる側に回り、持ち前の攻撃センスを発揮できる高い位置での仕事をする機会が増えました。試合をこなすうちに使われる側だけでなく、時には以前のように組み立てに参加する、走り込む味方へボールを供給するなど、彼のもともと持っていた良さを出していきました。彼の怪我(?)での不在時の戦績1勝1分5敗。ちょうどその頃はチームが変わり始めている時期だったので、一概には言えませんがその存在の大きさを示す戦績であるかと思います。

 

最終盤になりますが、大の苦手の長崎に勝利。その時のフォーメーションが4-2-3-1。代表でも採用されているので、日本人に一番馴染みがある並びの1つかと思います。

このシステムもこの前の節の大宮戦の途中から取り入れたシステムですね。3バックのときでも可変で4バックのような形になることもあったので、可変させないでそのままにしてしまえばいいじゃない理論ですね。(渡邉前監督書籍参照)  

長崎戦では途中から3バックに切り替え逃げ切りを図るなど、シーズンの流れを汲んだ歴史的勝利だったと思います。ただ、千葉戦を見る限りまだこのシステムの成熟はまだまだだったかなと。来年はこの4-2-3-1を使っていくのか、3-4-2-1にするのかどんな判断がくだされるのでしょうか。個人的には3-4-2-1かなと思ってはいます。

 

で、なぜ16位だったのか。人件費考えればそれくらいということも感がれられますが、シーズン通して相手の変化・修正に対してなかなかレノファ側でその修正への対応ができないことが改善点として挙げられると思います。

特に終盤戦の盛岡戦や千葉戦でも顕著に出てしまいましたが、一旦後半に相手の流れになった際にそれをこちらの時間に戻せない。ベンチワークで流れを変えるなどなかなかできずに試合終了を迎えてしまう。チームとして2の手3の手を繰り出せないような展開が多かったと思います。

自分たちが4局面で後手を踏んだところでどこで相手を上回り流れを掴んでいくのか。長崎戦のようにフォーメーションを変えることで「守」を安定させるのか、はたまた「守」⇒「攻」の切り替えを早くし、相手をうわまわっていくのか、H横浜FC戦のようにボール保持で自分たちの時間を増やしていくのかなど、試合中に策の変更を打つなどチームとしてのレベルを上げていくことで、今期のもったいないと感じた試合が減らせるのではないかなと思います。

 

3)今期のMVP

そして、今期最も輝いた田中渉についてちょっとだけ触れたいと思います。今期は中盤の核として支えてくれていたと思います。時折見せていた守備の強度の弱さなども改善しつつ、持ち前のテクニックにより磨きをかけ、ビルドアップ時の出口になったり、多少厳しいマークを受けながらもターンで相手を外す。ニアゾーンへのランニングやフィニッシュワークとレノファサポを魅了してくれたと思います。本当に見てて楽しい選手でした。

ただ、彼はお借りしている選手なんですよね。お借りすることは悪くないです。そりゃ借りパクもしたいです。やはり順位は違えど同カテゴリー。新卒で獲得しレンタル先で逞しくなり戻ってくる若手を、外からとってくる選手を優先して、放出するというのはなかなか考えづらいなというのが率直な意見です。もちろん田中渉がレノファを選んでくれることも多少期待してます。ですが、それ以上に小池・小野瀬・オナイウのようにJ1など上の舞台で田中渉には活躍してほしいなと思います。上に挙げた先輩たちのように若いときにレノファに武者修行したら成長できる、という流れができればそれはレノファの財産になると思います。

高卒などの有望株のリクルート力としてはJ1のチームにはなかなか及びません。ただ、そんな有望株をお借りすることはレノファにもできます。オナイウ然り、小塚然り。彼らのような選手がレノファで活躍し成長していくことで、上に挙げた、沼田・生駒・橋本のような20代前半の選手も所属選手としてレノファを選んでくれる流れにより一層なると思います。

試合を経るたびに伸びていく若い選手達の躍動を支え、引っ張っっていくベテランや中堅の選手たち。レノファの選手層はなんかそういうバランスが良いと思うんですよね。だから見てる私達もそんな選手たちを暖かく感じるというか、家族のような親しみをもてるのではないかなと。今年はそれを例年より感じた年でした。

話はそれましたが、田中渉選手今年レノファを選んでくれてありがとうございました。来年はどんな形であうことになるかはわかりませんが、応援しております。

 

で、長くなりましたが最後!!

”お金が必要です!!!もっと色んな人を巻き込んでいかないと(意訳)”

これは水戸ホーリーホックさんのホーム最終戦で秋葉前監督がおっしゃっていた言葉です。小山社長がプレーオフに進出したチームの平均観客動員数に触れられたことがありましたが、スポンサーの方々もそうですし、私達ファン・サポーターがもっと関わっていかないと、お金はレノファにはおちません。ただ、それが実現した先がJ1なんだろうと思います。「東京在住のお前が言うな」「お前フロンターレ兼任だろ!」的な話ではあり、それについては否定できないのですが、微力ながらに僕もレノファに来年も関わっていこう、巻き込まれていこうと思います。おこがましい言い方ではありますが、こうやってレノファのブログを書くことで、レノファを知ってもらうきっかけを来期も発信していきたいなと思っております。

今シーズンは昨年以上にtwitterでのレスポンスをいただいて、自分の中のレノファの輪が広がったかなと思えた1年でした。文末ではございますが、読んでいただいた皆様に感謝申しあげます。

 

今年は週末に開かれるワールドカップでもうちょっとブログを書く予定です。お声がけいただき「ポーランドサウジアラビア」を書く予定にしております。もしかしたら他の試合についても思ったことを記すかもしれません。

ちょっと見てみようかなって思う方がいらっしゃいましたら、引き続きよろしくおねがいいたします。

では、ひとまずレノファ山口に関わる皆様2022年シーズンお疲れさまでした!

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(文中敬称略)