レノファを青黒の眼で東京から見るblog

レノファ山口を応援・分析します。

2023年レノファ山口を振り返る

『試行錯誤』『暗中模索』

2023年のレノファ山口を表す言葉としてこれらを挙げたいと思います。

シーズンオフの選手の言葉でも「悔しいシーズン」となったという言葉が並んでいました。J2昇格後は残留争いをすることが多いレノファでは、難しくなかったシーズンのほうが珍しいわけではありますが、ただ、それでも今期は上記の言葉が付いて回ったシーズンであったと思います。

監督交代があったことももちろんですが、レノファがピッチ内で見せるサッカーが基本同じようなことを目指してはいるのですが、その方法が定まらない。また、「え?こっちを続けたほうがよくない?」といったものが個人的にはあったように思いました。

 

そんなシーズンを振り返る間にちょっと時計の針を去年に戻したいと思います。

布石は昨シーズンの最終盤にあったように思います。

昨年のアウェイ栃木戦より3-4-2-1を採用し、何とか軌道修正を図り最後は勝ち点を久々に50まで残せました。ただ、41節アウェイ長崎戦より4-2-3-1へ変わり天敵に長崎に勝利するもジェフには逆転負けをしました。当時いた選手の特性を考えたものではあったと思いますが、長崎には勝ったものの、多少3-4-2-1をかえてまでやるのか?という疑問は個人的には感じました。

 

そして今年再度4-3-3への挑戦をしました。メンバーは昨季から勢いの良い若手(橋本、田中、沼田ら)、中心選手(高井)が移籍をしていき、Jリーグで実績のあるベテラン選手(皆川、矢島、沼田ら)を中心に新加入選手を迎えました。

昨シーズンの反省点として4-3-3を敷いたときにSBであったりWGにボールが入った時点で彼らが孤立しており、相手のプレスの嵌め位置になっていたことがこのフォーメーションがうまく行かなかった一つの要因としてあったように思います。

そこで3−4−2-1にしてある程度後ろからのビルドアップを大雑把に言えばDF3人とボランチ2人のように変えて、WBを高い位置に上げることで、サイド攻撃に厚みを出せなかったものの、攻守においてある程度の安定を産んだように思えました。

しかし、最終盤4-2-3-1に変え、今年の入りにまた4-3-3への挑戦を選びました。

では今年の4-3-3はどうだったか?昨年左サイドに沼田−田中−橋本が開幕当初から高連携をみせ、序盤はチームを牽引しましたが、今年のチームはどこにストロングポイントがあるのか?と問われると、シーズンが終わった今もどこであったか、、、と個人的には答えを出すのが難しいです。多少WGが昨年よりもインサイドで仕事が増えたことくらいで、マンパワーで解決する要素がより増えたようにも思えました。

ただ、序盤でみせた五十嵐太陽のターンであったり、矢島慎也の経験値からくるプレーなどここからどうなっていくのだろうと思えたのも事実ではありました。

 

開幕当初は勝ち点を稼げていましたが、けが人などもあり、先発メンバーがなかなか固定できない試合が続いていきます。3連敗であったり、0−6敗戦のような試練を与えられるような試合、そして勝てない試合が続いたことで名塚政権は群馬戦で終りを迎えました。

以前にも書きましたが、特に名塚さんのみを責める気はあまりなく、コーチングスタッフ全体やひいてはこのチームで今年「トップ6を目指す」とした強化部などクラブ全体の責任であると思います。山本さんと立石さんが他クラブへ移籍。そしてそこにあらたに関さん、安倍さんを迎えましたが、正直昨年に比べてなにかプラスアルファをチームで出せたかというと、上述したように特に何かが変わっているように思えなかった。そして成績もついてこなかった。失速・今季通じての低迷したことは結果論ではありますが自明であったのかもしれません。

 

 

そして、中山暫定政権を経て新たに迎えられたのがエスナイデル監督でした。

名塚さんと共に石原前GMが身を引かれたことで、強化部のみならずGMとして管轄していた場所が他にもあったでしょうから、クラブ内調整や新監督選定が大変だったことは中山暫定政権が長かったことが物語っていたと思います。

 

そのエスナイデル監督は当初は、『玄米』『狂気のハイライン・ハイプレス』と変な盛り上がりをレノファ界隈の外でも(主に千葉方面)ありましたが、蓋を開けてみればハイプレスをしたときにどこでボールを取るのか、という設定をしっかりやるという現実路線。

来日間もない甲府戦はおいておいて、いきなりホーム仙台戦で結果を出しました。ハイプレスをかけて、ヘナン・松本の対人に強いCBを並べてここで相手のロングボールを跳ね返す。最終ラインを高くすることでアンカーを務めた神垣ら中途の距離を縮め、ボールを回収していきます。

ヘナン・松本はショートパスで繋いだところにもファウル覚悟で潰しに行くといった姿勢も見せ、2-0の快勝。得点もボールを奪ったら逆サイドも空いているのを見ておきましょう、というエスナイデル監督の言葉通りの展開から吉岡→沼田→矢島とピッチを大きく使ったファインゴールもありました。

ここから波にのり3勝3分と勝ち点12を積み上げ、この間無失点というレノファらしくない数字を残しました。

 

いつかは止まるこの手の記録は秋田に破れ、千葉にも大敗し、松本が町田への移籍が決まりチームはまた変更を余儀なくされることになりました。

松本がいなくなったことや、新加入選手もあり並びを3−5−2へ変更。大分戦は早速新加入選手のキムボムヨン、ジュニーニョが出場し新たなエスナイデル政権の形になるかと思いましたが、攻撃を求めてツートップにすると結局後ろがうまくいかない、と「あちらを立てればこちらが立たず」といったジレンマ的な試合が続きます。

甲府戦に劇的勝利をしたかと思えば、負けは許されない徳島・水戸の試合を落としヴェルディには何もせてもらえず完敗し、いよいよ崖っぷちに立たされました。

 

そして近年レノファの伝家の宝刀「困ったときは3−4−2-1」が発動されます。

磐田戦でもう一度しっかりつなぐ相手に対して、プレスをかけて後ろで回収することを取り戻し、群馬戦もほぼ相手に何もさせず快勝。続く金沢戦も梅木の活躍もあり当面の残留争いの相手を突き放す勝ち点3をとることに成功しました。

この時点で大宮・金沢とは勝ち点9差。普通に考えればもうセーフティゾーンではありました。現に知り合いの他サポさんは「これでほぼJ2の降格はきまったかな」とも話されておりました。

ただ、ここで余計な演出をしてしまうのがレノファの悪いところ。大宮戦を落としもしかしたら、、、という状況を作ってしまいました。

大宮が上位陣との対戦を残しており、J2上位陣のみなさんも負けられない戦いが続いていたこともあり、大宮は勝ち点を伸ばせず、レノファはしぶとく岡山・仙台から勝ち点を取ったこともあり、残留が決まりました。

 

結果としては10勝14分18敗、勝ち点42 得点37 失点71 でシーズンを終えました。

監督交代はある程度功を奏した形ではありましたが、肝心のエスナイデル監督に期待をした複数得点というのはなかなか達成できず、ということで退任が決まりました。

『狂気のハイプレス』はありませんでしたし、彼の色が発揮されたのも数試合でどちらかというと、今までのレノファのサッカーに彼なりにすり合わせにいった、といったほうが合っていたように感じました。

ただ、外国籍の監督一人(&通訳さん)を連れてきて、半年で劇的に変わるかといえば、難しかったのかもしれません。それでも残留まで導いてくれ、またいつぞやからいつの間にか使い始めていた「ハードワーク」というフレーズなど確かに変わろうとしていた形跡がありました。

ホーム最終戦の町田戦の前半で見せてくれた試合内容は得点が生まれなかったのが残念ではありますが、エスナイデルレノファの完成形であったよう思えました。

どこかハイプレスやアグレッシブという言葉だけが並び徹底しきれていない以前の姿が、敗戦はしたものの、2018年へ立ち返るのではなく、現代のサッカーに近づいたように個人的には思えました。

 

そして、レノファはまた変わることを選択しました。志垣レノファ。

町田のレビューの最後に、レノファは監督を変えて変化を望みつつも、結局2018年に立ち戻ることを選び結局は変わっていない、といった旨を書かせていただきました。

また来年同じように振り返ったときに、2023年名塚-中山-エスナイデルの3者で繋いだ今シーズンが志垣レノファの礎になっていた、となるといいなと個人的に願っております。

 

20位でしたが、感情移入ができて楽しめた今シーズンのチームでした。まあ皆さんお察しの通り、70%くらいエスナイデルさんのおかげなんですが。笑

 

 

そして最後に個人的に大事と思っていることを。

手厳しいことを書かないと行けない順位ではありましたのでそんな旨を書いてきましたが、最後に今までものが台無しになることを書きます。

こんな順位、結果であっても、ちゃんとボーダーラインの勝ち点42まで持っていき、J2昇格後からまだJ3への降格をしていないのは評価ができると思います(コロナ恩赦などありましたが)。今回降格したのが金沢と2017年までJ1に所属していた大宮でした。

金沢はレノファよりもクラブ規模は大きくありませんが、レノファよりも1年先にJ2へ上がりそれまでずっとJ2で戦い続けていたクラブです。そして大宮はJ1にいたこともあり、近年トップチームの人件費自体は下がってきていますが、クラブの大きさやユースの強さ、施設レベルなどは素晴らしいクラブです。

この2チームが降格するようなのが今のJ2リーグなわけで、また2024年シーズンもJ2で戦うことができることは、最後まで戦ってくれた2023年シーズンの選手、クラブスタッフの皆さんに感謝するところであると考えています。ありがとうございました。

その上で考えないといけないのは、クラブ規模やトップ人件費などレノファよりも下のクラブが今年躍進していたこと。2024年シーズンはレノファは今年以上の成績を残していかないといけません。

今季のような場当たり的に感じてしまうような対応を繰り返せば、今度こそ降格をしてしまうでしょう。ただ、ここでは詳しくは触れませんが今のところ補強については、選手・コーチングスタッフ含めてなにか変えてくれそうな予感がしています。

志垣監督のもと、維新で躍動するレノファの選手たちを楽しみにし、新年を迎えようと思います。

参考資料:主に2−3から2−6の項目(P8-11)

https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/club-r3kaiji_2_20230526_final.pdf

 

 

今年1年ありがとうございました。

無事、全試合のレビュー、1試合のプレビューを出すなど個人としてはとてもやりきった1年でありました。

このブログを書き始めて3年が経ちました。

今年は特に自分のレノファの環境が変わった年でした。ブログを書いていたらクラブ公式イベントにでることができたり、東京PVでご一緒させていただいている方々とスタジアムで挨拶するようになったり、自分が見たことのない世界をみせてくれる方々にもお会いできるなど、このブログを書いていることで世界がいきなり広がりました。

来年以降どんな事が起こるかわかりませんし、ちょっと試合によってはお休みするかもしれませんが、また来年も書き続けていこうと思います。

その時はまたお付き合いいただければと思います。

 

いつも読んでいただき本当にありがとうございます。また来季もよろしくお願いいたします。

 

(※文中敬称略)