今季初アウェイ。花粉強襲?のいわきへ乗り込みました。
昨季J3チャンピオンのいわき。言わずと知れたフィジカルに特徴のあるチーム。前へのプレスに迫力があり、特に前半は自分たちのミスも絡み危ない場面が続く試合でありましたが後半に挽回。しかしながらゴール期待値はいわき1.51に対してレノファは0.81と劣勢だったことは否めず、相手の決定力の低さにも助けられたと思います。しかし、レノファは勝ち点3を勝ち取ることができました。
今節は下記について考えたいと思います。
得点
いわき レノファ
なし 65分 皆川
1)うまくいかなかった前半
レノファの今季の基本フォーメーションである4-3-3に対して、いわきは4-4-2を敷いてきました。
レノファのボール保持局面。序盤はいつもの左を中心に。2分30秒のところの関→生駒→沼田→矢島→小林→皆川→小林が裏抜け、というパターンを見せ相手陣へ攻め入ります。
この試合で前節に比べて目立ったのは佐藤謙介が最終ラインに落ちる機会が多かったことが挙げられると思います。佐藤がおちるので、矢島がアンカー位置に入り、GK-3-1のような枚数でいわきのプレスの回避を狙いました。ここでレノファの狙いとしてはいわきの第1節の対戦相手の藤枝があったのかもしれません。
藤枝は3バックを敷いており、後ろ3枚でいわきの4-4-2の「2」の脇から3人のCBのサイドの2人が持ち上がるなどしていわきのズレを狙っていました。また時にはRCB小笠原が前線にあがり後ろが2枚になってもGK上田がCBとともにビルドアップに加わりあ、上田からも精度高いロングフィードで前からくるいわきのプレスを無効化していました。
レノファもある程度このやり方を参考にし佐藤謙介が最終ラインにおちる動きを考えたのではないかと思います。序盤にわかりやすい場面がありました。
4:30 まずは佐藤謙介がおちて3バックのような形。この場面ではアンカー位置に落ちたのは五十嵐。生駒に預けて関まで戻す。この時佐藤謙介はまたアンカーの位置に戻り、4:42に生駒が松本にもっとサイドに開くように指示。関・生駒・松本の3人で相手のCF2人に対して佐藤謙介を消すのかCBに対してどう対処するのかなどを突きつけ、最終的には多少食いついたいわきのCF脇から松本が持ち上がっていきました。
ただ、いくつか誤算やミスが前半のようないわきペースで試合が進んでしまったと思います。
1つは芝の問題。高木大輔が試合後インタビューで言っていた芝の問題。現地にいた僕はきれいな芝だな〜とのんきなことを思っていましたが、実際の選手たちとしては「ボールに芝が噛んだ印象」とボール自体が走っておらずパススピードが上がりにくく、パスを通せないことをあげていました。(引用元:【公式】いわきvs山口の選手コメント(明治安田生命J2リーグ:2023年3月5日):Jリーグ.jp)
もう1つは単純にレノファの力不足。まず前半割とミスが目立ってしまったのが目についたのが左サイド。生駒自身も反省の弁を述べていましたが、
前半はピッチの部分もありましたが、僕のところでボールを受ける前に、もっと相手の状況と味方の状況を確認してポジションを取っていれば、もっとスムーズに前に進めたと思っています。相手のプレッシャーを強く感じたというわけではないですが、出しづらさというのはありました。 引用元:第3節 いわきFC | レノファ山口FC
と芝の問題にも言及しつつも、立ち位置が掴めていないところがあった模様。目立ったところとして沼田のパスミスがあったかと思いますが、これはすでに生駒から沼田に渡ったところですでに沼田には相手が付ききっていたので、パスコースがなくすでに詰まっていました。チームとして生駒のところに入ったときにパスコースを作れておらず沼田を選択。しかしこれはいわきの思うつぼでした。生駒が深い位置で開いてボールを受ければ相手が圧縮してくるので、ここでは相手のプレスラインの裏や脇に小林や五十嵐あたりが顔を出すような動きが求められたのではないかと思います。
また、右サイドでは同サイド(同レーン)に3人を並ベることは狙いなのかもしれないと考えていますが、全員が同じレーンにいることでパスに角度がつけられずにここでノッキングしてしまっていました。もちろん14分の生駒から松本にサイドチェンジいわきLSH14山口が中途半端に出てきたことで、松本→高橋→田中とつなぐことはできていました(熊本の「1レーン3人」というやつですね。有料記事ですが見れる方はこちらです。 https://www.footballista.jp/feature/143335)
といった感じで上手くいかず、皆川めがけてロングボールを蹴ってもいわきの競り合いに強いCBになかなか競り勝てず、打開する糸口が見いだせないような前半となってしまいました。
2)いわきの矢印を向けせるな
そこで名塚監督がシステムなどをいじった。と仰っていましたが、明確に4-2-3-1にしました。前半の終盤から多少もう矢島が佐藤謙介の位置まで落ちていましたので、4-2-3-1気味だったと思います。ただ、変わっていた1つとして皆川がわかりやすく右サイドを意識していました。中央のいわきのCBの2人のところではなく、LSB35江川のところでも起点を作るようなプレーが増えました。これはキックオフから意識されていました。この2節はレノファボールのキックオフでは、センターサクルに矢島、もしくは佐藤が立ち、生駒へ戻してロングキック。競るのは大外の吉岡でした。中央から佐藤、五十嵐、皆川、吉岡の順で内から外へ並んでいましたが、今節は佐藤、五十嵐、田中、皆川と皆川が大外待ち、生駒は滞空時間の長いボールを蹴っていきました。キックオフは比較的そのチームの色が出ますし、この時点からある程度大外皆川が設定されていたことがわかります。
そして皆川を寄せることで、いわきをレノファの右サイドに寄せておいての手薄な左サイドの攻略ができるようになっていきます。
いわきは大宮のように同サイドのスペースを埋め、レノファのプレースペースを消しに来ます。これに捕まったのが前半でした。そのため、レノファは後半まずいと思えばすぐに前線へ蹴っていましたし、途中後退で入ったRSB高木のスローイン一つにしても、大きく前線へ投げて皆川にあてることしかほぼやっていなかったと思います。いわきがせーのでプレスを連動させる前に、その矢印を向かせる前にセカンドラインを超えさせてしまう。そうすることでいわきの武器の1つを出させないようにしました。
話を戻して皆川が右サイドで収めたボールを佐藤謙介が左に展開。小林のドリブルはなかなか効果的形は作れませんでしたが、ここを起点にしていわきを押し下げることができればレノファとしては1つミッションは達成。前半からもでしたがアタッキングサードにボールを運べれば、高さや運動量のようないわきの特徴はあるものの、前半31分のように五十嵐の中間ポジションを取る動きについてマークが曖昧だったこと。また、河野が3度左サイドのニアゾーンを取られたことを見ると、いわきのセットディフェンスについては強度が落ちる傾向にあったと思います。ここまで進めることができれば、というところで右サイドでしたがファウルをとり、セットプレーから得点を呼んだとも考えられると思います。
3)河野・松本にみるベンチメンバーに求められているもの
まず、生駒の談話から
相手のサイドバックが前に食いついてくるというのがありましたので、足元だけになりすぎに、その背後も狙っていこうということは話しました。
このように前半のうちにいわきのサイドバックが食いついてくるので裏が抜けられるという手応えや見込みは立っていたようです。現地で見ていると、今節RWGに入った田中はテレビで見れないところで裏抜けの準備を何度もしていました。
また、これも今節の名塚監督の試合後インタビューで
中盤もプレスバックでしっかりとプレッシャーを掛け、前線の選手たちもやってくれました。
と仰っていたように、ここの強度も昨年よりも選手たちがしっかりと行っているように思います。考えてみれば昨年水戸から帰ってきた高井も「強度や切り替えのところが水戸より甘い」といった感じのことを言っていました。名塚体制3年目ということもあり、外から取ってくる選手、残った選手ともに最低限このラインはできないと試合には出れないよ、といったものがありそうです。
また、昨年は交代で勢いがつけられなかった、という展開が散見されましたが、今季はこの面でも名塚監督が動くのが早いイメージなのと、何より交代して入ってきた選手のギラツキが違う。そういう意味で前節からの高木・松橋や今節の河野のようなチームに勢いをもたらすプレーを見せつけないと、試合に出られないという考えもできそうです。
そういう意味でこの84分に見せたこの河野のプレーは監督にもファン・サポーターにもアピール抜群であったと思います。
84分佐藤がパスカットからすかさずトップ下の位置に入った河野へ。五十嵐のように相手ボランチ周りの相手のプレッシャーが薄いところでボールを受け、小林へ展開。小林が持ち上がり、沼田が追い抜くことで7杉山を引き出し、小林からフリーの佐藤へ。焦って出てきたRCB4家泉の動きに合わせて河野がその裏を突き、クロスバー直撃のシュート。
五十嵐とはまた違った形、裏へのランなどでトップ下をアピールした河野。今後もジョーカー的な存在になりそうな予感もありますし、そもそもスタメンで頑張ってもらわないと困る選手ですので、いっそうの奮起を期待したいです。もしかしたらCFで河野、IHやトップ下で五十嵐といった形ももしかしたら出てくるかもしれません。
また、ベンチメンバーではなかったですが松本にも言及をしたいと思います。前回のブログでCBのビルドアップ時に難があるということを言いましたがこれについては、わかったとは思いますがほぼほぼ松本への言及でありました。
今節は試合前のアップから松本を見ていましたが、丁寧にRSBやRWGへのパスを練習をしており、ルーティンワークのアップではあると思いますが、黙々と取り組んでいました。試合が始まれば8分にはすぐに高橋に出すのではなく、中の矢島を経由させるパスや、上述したいわきの「2」の位置を意識したような持ち上がりをときおり見せるなど、持ち前の対人の強さ以外にも前節からの課題に早速向き合っているように思えました。試合終盤流石にオープンになってきた中でも、高木がRSBとして位置を修正したということもあり、効果的に右サイドを使うこともできたことにMD選手の守備以外の密かな貢献がありました。常に切磋琢磨して成長。3節にして既にチーム内の競争がしっかりあるのではないかと思えた河野と松本の姿でした。
さあ、苦しみながらも手に入れた勝ち点3。選手の大量引き抜きがありましたが、チームの大崩はしていないようなので、油断はなりません。ただ、いわきに負けてこの1戦に臨むのと勝って臨むのでは気分は全然違います。
高橋くんの脳震盪もおきてしまい、けが人もいるとあってなかなか大変な時期ではありますが、維新は勝つ場所(n回目)。勝利を期待しましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
文中敬称略。